第13話 秘められた力
「ぐはぁ…はぁはぁ…流石に…効いたぜ…」
バーガーは口から垂れた血を拭き取り、ふらふらと立ち上がった。
「お前らの気持ちは一生分からねぇな…分かる気もねぇがよ!さぁ、お返しだ!ポイズンスラッシュ!!」
バーガーはその場で思い切りナイフを振る。
すると、ナイフから毒を纏った斬撃が放たれ、勢いよくアランの方へ向かって行く。
「しぶといやつだな…」
アランは横に転がり斬撃をひらりとかわす。
目標を失い後ろの壁に当たった斬撃は毒を撒き散らし、あたりの建物の壁を溶かし始めた。
「この毒はさっきまでの生ぬるいのとは違ってな…。触れたものを即座に溶かし、最高の苦痛を与えるのさ!ガハハハハ!!」
(建物の壁が溶ける毒…流石にあれくらったら即死するかもしれねぇな…ただ、前と同じ、この紋章が光り続けてる限りは避けられる…。光が消える前に奴を倒す!!)
アランはバーガーの方へ勢いよく走り出す。
バーガーは攻撃の姿勢を取り、アランを迎え撃った。
「おらぁ!!」
アランはバーガーに向け何度も剣を振る。
それをバーガーは全てナイフで弾いていった。
「ガハハハハ!こんなに熱くなったのは久しぶりだぜ!…こんなに殺したいと思った奴もな!!」
「俺もだよ…こんなに許せないと思った奴は久しぶりだ!!」
ガキン!!と大きな音を立て、アランの剣とバーガーのナイフがぶつかり合う。
そのまま二人は数秒見つめ合い、同時に後ろに下がった。
「このままじゃ拉致があかねぇな…そろそろ本気で殺しに行くとするか…ガハハハハ!!」
そう言うと、バーガーは地面にナイフを突き刺した。
(なんだ…?)
アランは警戒しながらバーガーの行動を見つめる。
「さぁ、最高の毒を味わいな…毒柱!!」
バーガーの足元に白い紋章が現れる。
そこから、紫色のどろどろとした毒の柱が飛び出してきた。
毒の柱は勢いよくアランの方へ向かって行く。
アランは何とか避けて行くが、何度も襲いかかる毒の柱に、たちまちリズムを崩されていった。
「さぁ、終わりだ!!」
アランの方へ毒柱が向かって行く。
(まずい…!避け切れない!!)
毒の柱がアランの体を包み込む。
「グバァ…」
アランは毒の液に浸り、まるで溺れているかのように毒の液の中でもがき続ける。
ある程度経ち、毒の柱はバーガーの足元の紋章に戻って行った。
「ぐぁぁぁあ!!!体が…あつい…!!!」
毒に覆われたアランはその場に倒れ込み、悶絶しながらのたうち回る。
「ガハハ!当たっちまったな!!流石のお前でもこの毒は耐えられねぇはずだ!!さぁ、苦しみながら死んでゆけ!!」
「うぁぁ…!!ぐぅぅ…」
アランはゴロゴロと転がり、何とか苦痛に耐えようとしていたが、あまりの苦痛にゼェゼェと息が荒くなっていた。
(くそ、くそ!!体が熱すぎる…!!全身を火炎放射で燃やされてるみてぇだ…。だめだ…俺は…ここで…死ぬのか…?こんな奴らに…負けるのか!?)
「ガハハ、苦しいだろ?俺の毒が効いてるところを見るのは最高だぜ!これだから喧嘩はやめられねぇよなぁ…」
バーガーは倒れ込むアランをまるで見せ物を見ているかのように笑いながら見つめている。
「俺たち暗黒騎士団に逆らうとこうなるんだぜ?今度からは気をつけろよ…。ま、お前にはもう今度はこねぇだろうがなぁ!!ガハハハハ!!」
(くそ…嫌だ…こんな所で死ぬなんて…嫌だ、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だっ!!嫌だぁ!!!)
アランが心の中でそう叫んだ時だった。
アランの全身が黄色い光に包まれる。
「何だこれ…ぐっ…グァァァァア!!!」
眩い光と共に、アランはムクっと立ち上がる。
「な、何!?俺の毒をくらってまだ立ち上がると言うのか!?」
「グルルル…グルァ!!」
光に包まれたアランの顔。それは今までの無垢な少年の顔ではなく、獲物を前にした獣のような恐ろしく鋭い物に変わっていた。
「まさか…こいつ…!!」
バーガーがそう言った次の瞬間、アランの拳がバーガーの腹部を思い切り殴りつけた。
「ぐはぁぁ!?」
さらに、アランの拳が再びバーガーの顔面に直撃する。
バーガーは歯が数本折れ、白目を剥いたまま吹き飛ばされた。
(なんて…恐ろしいガキだ…。まさかこいつが…あの伝説の…)
ーーーーーーーー
「さぁ、またまたルーレット…始めるわよ!!キャハハ!!」
リシアがリサに触れようとした瞬間だった。
ゴチン!!
大きな音が響き渡る。
「何…!?」
リサは突然の事にふと顔をあげる。
すると、アランにより殴り飛ばされたバーガーが、リシアの後頭部に直撃していたのだった。
「はぁ!?バーガー!?」
「くはぁ…」
後頭部に頭突きをくらったリシアはその場に倒れ込み、泡を吹いて気絶してしまった。そしてバーガーはそのままの勢いで壁に衝突し、地面に落下した。
「た、助かった…でもなんでバーガーが…っ!!」
リサは咄嗟にアランの方へ向く。
すると、そこにはまるで獣のように変わり果てたアランの姿があった。
「アラン!?」
その声を聞き、エルザも窪みから飛び出してきた。
「どうしたの?リサ…っ!?」
エルザも変わり果てたアランの姿を見て驚きの表情を浮かべる。
「アラン…どうしちゃったの?」
「わからない…気づいたらあんな姿に…」
「グルァァァァ!!グルァ!!グルァ!!」
アランは大声を上げ地面に頭をぶつけ始める。
すると、アランの周りの光が消え、アランはパタリとその場に倒れ込んだ。
「アラン!!」
リサとエルザはアランの方へ近づいて行く。
「これは…毒!?ほぼ致死量じゃないの…!!早く治療しないと一刻を争うわ!!」
そう言うと、リサはポケットから小さな注射機を取り出しアランの腕に刺した。
「リサ、それは?」
「ただの鎮痛剤…。気持ち程度ね。早く医者に連れて行かないと!!さ、手伝って、エルザ!!」
「あ、うん!あ、バーガー達は!?」
「アランが倒してくれたわ!さ、行くわよ!!」
「う、うん!!」
エルザはアランはを背負うと、勢いよく走り出した。
「はぁはぁ、私も…肋何本か…折れてるわね」
リサもフラフラとしながらエルザの後を追った。
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「さぁ、患者さんをこちらへ!」
リサとエルザはクロッカスにある診療所へやってきていた。
戦っているうちに夜はふけ、明け方になっていた。
急患ということで、特別に診療所を開けてもらうことができた。
「先生…アランは!?」
「今かなり危機的状況です…。印術を使いましょう。印術であればおそらく間に合うでしょうから。さ、癒の印の準備!!」
そう老人の医者が言うと、数人の男女の医者がベッドの上のアランを取り囲むように立ち、アランに手をかざす。
「行くぞ…癒の印!!」
老人の医者がそう言うと、手をかざす医者の体から光が溢れ、アランの体を包み込んでいく。
「くっ…なかなかエネルギーを使いますね…」
「そりゃそうよ、彼、本当に生死の際を彷徨ってたんだから…」
「さぁ、ラストスパートだ!みんな気合い入れて行くぞ!!」
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それから5分ほど経ち、アランの体から光が消えて行く。
よく見ると、先ほどまで酷かった顔色も普段の色に戻っていた。
「ふぅー、何とか間に合ったみたいだね…」
「はぁ、よかったぁ…」
エルザとリサは大きくため息を吐きその場に座り込む。
「そうだ…私たちも怪我してるんだった…」
「そうだったね…さ、私たちも診てもらおう」
「うん、そうね」
「ねぇ、一ついい?」
「何?」
「アランって、本当にすごい奴だね!!」
そう言うと、エルザは嬉しそうに診療所の廊下を歩いて行った。
「…当たり前よ。だって私の自慢の幼馴染だもん」
そう呟き、リサもエルザの後を追って行った。
続く。
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