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超短編

世界から愛が消えた

作者: あしだ

僕の世界から愛が消えた。


彼女とは高校2年の時に付き合い始めた。燃え上がるようなものではなく、会話がなくても互いに好きなことを気兼ねなくしていられる関係だった。木のぬくもりのような温かさを共有していた。でも、寝る前には必ず”好きだよ おやすみ”と送り合っていた。


付き合って3年目となり、彼女とは別々の進路を選んだ。東北と関西、遠距離になってしまった。


最初の頃は毎日通話をしていた。けれど、一緒にいなければ、共有できる話題も減っていってしまう。それと共に少しづつ時間や回数が少なくなった。お互い気のない返事などが増え、喧嘩っぽくなることも増えた。電話をしなくなった。


ただ、寝る前に、”好きだよ おやすみ”と送るのは互いに続けていた。


”す”と入れると、予測変換の一番最初に”好きだよ”と出る、それをタップするとそのまま予測変換の一番最初に”おやすみ”と出る。


最初の頃は色んなことを話していたからか、一番最初ではなかった。


”好きだよ”という予測変換が、彼女へ愛を伝えた証なのか、愛がない証なのか。分からなくなってきた。


それと同時に自分は彼女が好きなのかが分からなくなってきた。


予測変換で伝える愛は、愛なのか。事務的に行ってはいまいか。


愛とはなにか、そんな思考の海に揺蕩(たゆた)っているうちに、僕は愛が分からなくなった。


僕から愛が消えた。


メッセージアプリケーションでひとこと。”別れよう”。僕は送った。


”わかった”。君からの返事だった。


愛など、存在するのだろうか。僕は誰かから愛されているのだろうか、愛せるのだろうか。


親は子供を愛すのだろうか。義務感ではないのか。


愛とは、子孫繁栄のためのシステムではないのか。


目の前を歩く恋人たちは、顔の良い恋人がいるとこがステータスなのではないのか。記念日にお金を使わせるためではないのか。その人を愛しているのではなく、恋人が欲しいだけではないのか。性的な目的ではないのか。


愛とは、欲望を誤魔化す言葉ではないのか。

.............................................

彼女の住む街へ来た。僕は彼女を愛していたのだろうか。


彼女の家はアパートの階段を登った奥の部屋だ。


彼女が丁度帰ってきた。彼女と男が帰ってきていた。


鍵を開けて、ドアを開けた瞬間に二人は唇を重ね、中へもつれ込んでいった。


心臓が痛い。胃が煮えくり返る。


これは、愛だったものだろうか。いいや、ただ自分のものだった彼女が取られたことが悔しかっただけだ。ただの独占欲だ。


きっと、そうだ。

読んでいただきありがとうございます。


読者様の時間を無駄にしていなければ幸いです。

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