表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

少年と雪兎

作者: 樋宮 純


あるところに、春・夏・秋・冬、それぞれの季節を司る女王様がおりました。

女王様たちは決められた期間、交替で塔に住むことになっています。

そうすることで、その国にその女王様の季節が訪れるのです。

ところがある時、いつまで経っても冬が終わらなくなりました。

冬の女王様が塔に入ったままなのです。

辺り一面雪に覆われ、このままではいずれ食べる物も尽きてしまいます。

困った王様はお触れを出しました。

冬の女王を春の女王と交替させた者には好きな褒美を取らせよう。 ただし、冬の女王が次に廻って来られなくなる方法は認めない。 季節を廻らせることを妨げてはならない。


何故冬の女王様は塔を離れないのでしょうか。

何故春の女王様は塔に訪れないのでしょうか。


それは...



冬の女王はまだまだ幼い少女でした。幼い彼女は毎年、冬が近づくのを恐れていました。

なぜって?

想像してごらんなさい

まだ小さな少女が一人ぼっちで塔で冬を越すのです。心細いことでしょう。寂しいことでしょう。

ギリギリまで塔に入らず、早めに春の女王と交代する彼女。この国の冬は毎年短かったのです。


では何故、今年の冬はこんなにも長く続くのでしょう。


時は、まだ紅葉色づく秋のある日に遡ります。


ーーーーーーーーー


やだなぁ。


少しずつ紅が散っていく木を見つめ、少女はこぼしました。


やだやだ。冬なんか嫌い!


寒くて暗くて寂しい冬。彼女は冬が嫌い。


ずっと終わって欲しくない秋も、明日の季節代わりで終わってしまいます。


やだなぁ。


どうにもならないと分かっていても呟く声は抑えられません。


窓の外に広がる街では人々が楽しげに冬の訪れを待っています。


子供たちはわあわあきゃいきゃいはしゃいで楽しげです。


なんでそんな楽しそうなの

冬は寒くて暗くて...さびしい



冬の女王は冬嫌い。

春も夏も秋も明るく元気な彼女は冬になると彼女らしさがないみたい。


やだなぁ。


・・・・・・・・・


冬の女王が塔に入って4ヶ月。

いつもならとっくに出てきているはずの今、冬の女王はまだ塔に篭ったまま。


不思議ですね。

困った王様の元に1人の少年がやってきました。


どうしたんだい、小さな坊や。


優しく問いかけた王様に少年は...


ごめんなさい!!


みんな不思議な顔。

小さな少年は泣きだしてしまいました。


泣かないで、坊や。

どうして泣いているんだい?


よしよし。よしよし。

優しい王様にあやされ泣き止んだ少年は話だしました。

長い冬の原因を。


・・・・・・


少年は冬の女王の友達でした。

明るい彼女が大好きで、彼女が落ち込む原因をどうにかしてあげたいと思いました。


でも、冬の女王が塔に入らないといけないのは変えられません。


どうしよう、どうしようと考えた少年は、はっと思いつきました。


誰も入れない塔でも冬の女王が寂しくない方法。


前の年、母から教わった雪兎。

冬の間、冬の女王と一緒に雪兎がいれば彼女はきっと寂しくありません。


少年の優しさから生まれた雪兎を心から喜んだ冬の女王は寒い冬の間、雪兎を眺めて過ごしました。


そうして春との季節代わりが近づくまで少年の優しさ、暖かさに包まれた冬の女王。


春が来たら雪は溶けねばなりません。


うさぎさんと離れたくない

春になったらうさぎさんはいなくなってしまうわ


雪兎が溶けるのを嫌がった冬の女王。

塔にこもった原因はそれだったのです。


ごめんなさい、ごめんなさい


話し終えてまた泣き出す少年。

優しい王様は大丈夫だよ、と慰めます。


優しい坊や

冬の女王を思ってやってくれたんだね

ありがとう

春になる方法を一緒に考えようか


王様と少年は一生懸命考えます。


・・・・・・


去年より1ヶ月と半月遅れてこの国にも春がやってきました。

植物も芽を出して、動物も眠りから目覚めて。

さぁ、新しい1年の始まりです。


もう、冬はさびしくなんてないね

うさぎさん、ちゃんお家に帰れたかな


次の冬も会えるかな


にこにこ笑顔の冬の女王が言いました。


もちろん!

次の冬はもっと大きくなってるよ


にこにこ笑顔の少年が答えます。


その冬から毎年、冬の塔には雪兎が冬の女王に会いにやってくるそうです。


長い長い冬を終わらせたのは優しい少年の優しい心でしたとさ。


おしまい。

ありがとうございました。


あえて、少年と王様がどのようにして冬を終わらせたのかは明言しておりません。

皆様オリジナルの解決策を考えて頂けると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ