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ボブの為のストーリー2

作者: 北の大地

今日のボブがいっぱいコレクションは、アメリカテキサス州あるボブズラボック臨時基地から始まる。ボブ達の物語は、いつだってここから始まるのだ――



「おい、ここで何をやってる!」


「開発室」のプレートが掛かった部屋の前で、一人のボブが声を荒げて別のボブを怒鳴っている。ボブの怒声を受けて縮こまっているのはつい最近ボブズに入ったばかりの新人で、怒鳴っている方はボブズ開発部のメンバーだ。彼が所属する開発部はボブズの秘密兵器と呼ばれるものをいくつも作り上げており、組織の中でも存在自体がトップシークレット扱いとされている。ちなみに先日のモンスター化して増えるベンチを作り上げたのも彼らの仕事だ。首謀者とされている司令官はあくまで職権を振りかざしてそれを悪用したに過ぎない。


ともかくそんな重大な機密を抱えた部屋の前を新人がうろついていたのだ。開発部のリーダーたるボブが思わず怒声を上げてしまうのも仕方があるまい。とはいえ彼も怒鳴ってから目の前の青年が新人であることに気づいたのだろう。仕方なしに彼は青年にこの場所が立ち入り禁止であることを教えてやった。


「いいか坊主、ここの第七区画は関係者以外入れないことになってる。そもそもここに来る途中、警備センサーに引っかからなかったのか?」


「さっきまでは僕、司令官と一緒だったんです。だからこの区画にも普通に入ることができて……あの、おじさんは司令官を見かけませんでしたか?僕、実はまだ何の用で連れてこられたのかも知らなくて」


男は青年の返答に嫌な予感を覚えた。そして少しだけ考える素振りを見せると、自分の背後にある開発室の扉を勢いよく開け放つ。


「やあボブ、やっと戻ってきたか」


そこにはボブの予想通り、部屋の一角を占拠した司令官が日本産のグリーンティーを飲みながら寛いでいる姿があった。


「……何やってるんすか司令官」


流石のボブも司令官相手に怒鳴り声を上げることはできなかった。


「このリョクチャというやつは中々癖になる味をしているな。どうだね君も一杯……おっと、そこにいるのは新人のボブ君じゃないか。もう仲良くなったのかい?気の早いことだ」


ハハハ……と笑う司令官の声にボブがギョッとして振り向くと、そこには先程のボブ青年がひょっこりと室内に顔を覗かせていた。


「おいお前なに勝手に部屋ん中覗いてやがる!」


「ボブいいんだ、彼も今日から開発部のメンバーだからね」


「何ですって!?」


のほほんとしながらも重大な事実を発表する司令官の言葉に、ボブは一瞬頭がパニックになった。こんなガキが開発部のメンバーだって?ボブはまだ幼さが残る青年の顔立ちをまじまじと凝視する。とてもじゃないがこんなのがボブズの、よりにもよって開発部でうまくやっていけるとは思えない。司令官の頭のネジが緩んでいるとは常々思っていたが、とうとう緩みきってすっ飛んでしまったのかとボブは本気で心配になってしまった。


「司令官、なんだってこんなちっこい坊主を開発部で預からにゃならんのですか」


「大きいかどうかは関係ないさ。それに、彼は見かけによらず素晴らしい頭脳の持ち主だ。きっと開発部の助けになる」


「とてもじゃねぇが俺は信じられません」


まあまあそう言わずに――と司令官は最後までノホホンとしたまま青年を置いて開発室を出て行ってしまった。後に残されたのは困り顔の青年とボブ。開発室にいた他のメンバーは気まずそうに目をそらしている。ボブはまた怒鳴った。


「おい誰だ司令官開発室に入れた奴は!案の定また面倒事持ち込んできやがったじゃねぇか!」


途端に開発部のメンバーは忙しそうに、先ほどまで手を止めていた各々の作業を再開した。それはもう物凄いスピードで。残されたボブと新人のボブは、一人は顔に怒りを湛えながら、もう一人は困惑を浮かべながら、そんな開発室の様子を眺めるしかなかった。


「あの、先輩……でいいんですよね?先輩は司令官のことをよく思ってないんですか?」


長い沈黙の後、新人の方のボブがとうとう口を開いた。ボブはキッとそちらを睨みつけると、相変わらず怒りの収まらない顔で返事をする。


「俺のことは室長と呼べ、小僧。それとあの人……司令官にはなるべく近づくな、話しかけるな、余計な詮索はするな。この三つを遵守しろ。いいな?」


「えっ?あ、はい……。それで、僕はこれから何をすればいいんでしょうか?」


室長は何も答えずに、ただ空いているデスクの上の書類を無言でピッと指差した。すると新人のボブはそれで何かを察したのか、デスクに近寄るとボブの指差した書類を手にとって目を通す。


「こいつはすごい……!」


ボブ青年は書類の中身を確認して感嘆の声をあげた。


「そいつは新兵器の設計図だ。小僧、お前の仕事はそれが間違ってないかチェックすること。重要な任務だ。決して手を抜くなよ」


「これ、新型のPSk-3uロケットミサイルの設計図ですよね?一体どこで実用が決まったんです?


「そりゃあお前、ボブズの兵器なんだから、活用先は一つだろ」


ボブ室長は質問してくるボブ青年にそう答えてやると、自分のデスクに腰掛けてカタカタとパソコンのキーボードを打ち鳴らし始めた。その様子を見て、青年の方も渡された資料の入念なチェックに移ってゆく。



数時間後、ボブズ臨時基地開発室では複数の歓声があがっていた。


「できたぞー!」


「我々の努力の結晶だ!」


「これで報われる……やっと……」


「完成だー!」


そう、そこでは小型ロケットミサイルの完成が祝われていたのであった。その過程に尽力した新人のボブも、当然、開発部の皆に労われることとなった。


「よくやったなぁ、新入り」


「ああ、お前もやはり立派なボブだ。ああいや、俺達全員がボブであることに変わりはないのだが」


「偉いぞ、ボブ。なあお前もこれ一杯どうだ」


そういって先輩ボブが差し出してきたボブズ印のコーラを飲みながら、彼は皆と勝利の余韻に酔っていた。その時であった。


「緊急事態発生!緊急事態発生!」


けたたましい警報音と共に、基地中にアナウンスが響き渡った。


「第三搬入口より侵入者あり。各戦闘員は至急現場に向かうよう。繰り返す。第三……」


「どうやら緊急事態のようだな」


室長がぼそりと呟いた。皆の顔が一斉に彼の方を向く。室長は、その顔をほんのり熱気に紅潮させていた。一人のボブが恐る恐るといった体で彼に訊ねる


「室長、それでは……?」


「ああ、皆、行くぞ。出動だ!」


室長の号令に従って、彼等は新型兵器を手に意気揚々と開発室を出発する。今こそ、開発部の力をボブズ全体に知らしめる時と意気込んで。


新人のボブはその熱気に一瞬戸惑った。だが、かくも自信に満ち溢れた開発部の面々の様子を見て、自らもまた、開発部の一員であるという自信を身に付ける。


そうして彼等はその精神の高揚のまま、目的の場所へと辿り着く。そこには「司令室」のプレートが掲げられていた。


「今こそ、この機に便乗して司令官を討つべき時!」


「必ず、かの邪智暴虐の司令官を葬り去っらねばならぬ!」


そう各々が奮って司令室に飛び込めば、そこには慌てた顔の司令官が――なんてそんなことはなく、人っ子ひとりいなかった。

「誰もいない!?」


「図られたかっ?」


「罠か……」


すると勝手に司令室の扉が閉まり、彼等は閉じ込められた。再び、基地内にアナウンスが響き渡る。


「あ、あー、この機に乗じて私を攻撃しようとした不届き者達に告ぐ。えー、今すぐ投降しなさい。君達は完全に方位されているー」


「あのクソ司令官めっ!俺達を嵌めやがった!」


一人のボブが醜い悪態をついた。


「えー、聞こえているか、君達。今すぐ投降して――」


相変わらず司令官の勝ち誇ったような放送が流れる中、室長は冷静にコメントした。

「上だな」


最初に反応したのは新人のボブであった。彼は口の中で小さく「了解」と呟くと、手に持っていた小型ミサイルを迷わず頭上に向けた。


「発射!」


そうして放たれたミサイルは、見事真上の放送室にいた司令官に直撃した。


「ほわあああああああああああ!」


それから立て続けに下から送られた攻撃によって、また司令官は爆発四散を繰り返す。彼が蘇えるその時まで、ボブズには束の間の平和が訪れた。


「貴様がボブズの司令官……何!?」


ついでに、開発部の面々は見事戦闘員を突破してきた侵入者にも、同じ攻撃をお見舞いしてやった。侵入者は司令官抹殺という目的に関しては彼等の同志であり、共犯者であったが、ボブでないというその一点が、侵入者と彼等の間を大きく隔てていた。

そうして、高尚なる上司の皮を被った邪悪なる彼等の敵は討ち果たされた。更にボブズには栄光ある開発部の名と共に、束の間の平和が約束された……。


ボブ達のいるこの都市には、今日も平和な時間が流れている。


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