6 魔道士たちの歌物語
やたら長くなりましたが、前の二話が短かったのでちょうど良いと思います。
「これから、第○○回、クリュレス魔道学校の入学式を始める! 気をつけ、礼!」
「うわあ……」
ついにその日が来て、ジェーダは入学式を迎えた。が。
「……ぼく、場違いかも」
なんというか、雰囲気が。これまでの生活にはなくて、とにかく新鮮だった。
あの日から、ずっと思ってた今日という日。今なら、デュポワに感謝したい。
「ぼくは、魔道士に……なるんだ……」
改めて実感した。
「校歌、斉唱!」
声に、心を現実に戻す。どんな歌だろう? なにもかもが新鮮で、とても楽しみに思えた。
歌が、始まる。
七色の風が吹き渡る 七色の光が地に届く
それらが語るは世の歴史 七の魔道士の物語
三百年の昔から このエニシアの地にありし
ああ、クリュレス魔道学校よ 魔道士たちの学び舎よ
明るい未来が来ることを 疑いもせぬ、魔道士ヴェーダ
そは偽りの平和なり そは偽りの平和なり
それから幾年過ぎたのち やってきたのはディレイアド
多くの人生狂わせた 凶星の申し子
ヴェーダとて 例外はなく、その手に悲しみ握りしめ
修羅の道を歩むさだめに 凶星の申し子滅ぼすために
身を引き裂かれる思いを胸に 復讐を誓った
七色の虹が天に架かる 七色の海、日にきらめく
それらが語るは世の歴史 虹の魔道士の物語
三百年の昔から この国ティサルアーフにありし
ああ、クリュレス魔道学校よ 魔道士たちの学び舎よ
それから幾年 とある森にて
同じ運命を身に負いし 七の魔道士集まれり
彼等が語るは皆が皆 悪しき魔道士 凶星の君
同じ者に その運命 狂わされたと語りき
かくて七聖 その地にて 結集したり
それから幾年 七聖は
ついぞディレイアドを見つけたり
その目に復讐の火を宿し 果敢に攻めけるも
稲妻のやうな反撃に ヴェーダより他 生きる者なし
闇色の風が心包む 闇色の光、地に広がる
それらが語るは世の歴史 凶星の申し子の物語
三百年の昔から 人々の心に潜み棲む
ああ、闇色の運命よ 魔道士たちのなれの果て
大きなる戦い 一人 制し、生き残りし魔道士ヴェーダ
悲しみのあまりその地を去る 喜び悲しみ、全て抱えて
それから幾年 魔道士ヴェーダ
エニシアの地に 学び舎を作る
戦いの歴史 残すため おのれの足跡残すため
そが名は、クリュレス魔道学校
七色の風が吹き渡る 七色の光が地に届く
それらが語るは世の歴史 七の魔道士の物語
三百年の昔から このエニシアの地にありし
ああ、クリュレス魔道学校よ 魔道士たちの学び舎よ!
それは、歌に託された、魔道士たちの物語だった。長くはあるが、とても美しかった。そして、悲しみも含んでいた。
「……これにて、校歌斉唱を終わる!」
声に、我にかえる。入学式は始まったばかりだ。
部屋は、静まりかえっていた。
まだ続きます。