5 待ちに待った……
ジェーダはその日から、師匠に頼み込んで、彼の家に泊めてもらうことになった。そうでもしなければきっと、憧れの魔道学校には入れない。新たな道が見えた今、それを諦めたくはなかったから。
そして、時は過ぎる。やかましい父さんも、いなくなったジェーダの捜索を諦めかけた頃に。
オルヴィオが訪ねてきた。ジェーダの家ではない。しっかりと、師匠の家に。
「……久しいな、ドライアスメルト」
その声も瞳も相変わらずで。嬉しかった。
「そして、あなたは……話に聞いていた、ディレイン師?」
「いかにも。今日は、何の用事で?」
「入学式についてだ。一週間後、クリュレス魔道学校にて開かれる。出席の是非を問いたい」
それは 心待ちにしていた言葉。
「ただし、学校は全寮制だ。しばらく家族と会えなくなるぞ」
ジェーダは、少し寂しげに師匠を見た。父さんと対立ばかりするジェーダにとって、家族とは師匠のことだ。
けれども師匠は。相変わらずの優しい顔で、微笑んでいた。
「わたしに構う必要なんてない。君の行きたい道を行きなさい」
いつだって、そう言ってくれるから。ジェーダは前に進める。
ジェーダは強く頷いた。
「ぼく、行きます。その先に、目指すものがあるんだ。だから、行きます!」
「……承知した。では、その旨伝えておく。これは資料だ。目を通しておけ」
それでは、と、藍のローブを翻し。オルヴィオは部屋を出て行った。
これから、待ちに待った入学式が、魔道士としての日々が始まる。
ジェーダはまだ知らなかった。この時点で、既に大きな運命に巻き込まれていることを。
まだ続きます。