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七聖の魔道士(しちせいのまどうし)  作者: 角 風蓮
第一章 魔道学校の新入生
5/13

3 魔道士になるために

 このエニシアの町の奥には、クリュレス魔道学校という、大きな学校がある。

 その日、ジェーダは。そこに赴いていた。

 自分に、魔道士の才能があるのか確かめるために。

 それが、自分が騎士にならなくてすむ、数少ない道の一つだったから。

「いきなり押しかけてすみません、どうしても確かめたいことがあるのです」

 校門の前で、そう呼びかけたら。一人の生徒が出てきた。

 切れ長の青い瞳、深い闇のような漆黒の髪。溢れる魔力はジェーダにもわかるくらい濃密で。

「……何の用だ。校長は今はいらっしゃらないが」

 氷の刃のような、冷たく低い声。それにもめげず、ジェーダは言った。

「ぼくには魔法の才能がありますか? 確かめてほしいのです」

「……騎士にしか見えない外見だが。それのどこが魔道士だ?」

「……こんなことがあったんですよ」

 ジェーダは、あの日のできごとを説明することにした。


「……ほう、危機に陥ったら、魔力が発現したと? 多くの魔道士によくあるパターンだな。……いいだろう。オレはオルヴィオ。この魔道学校の生徒だ。秘められた魔力ぐらいは、探知できるぞ。気になるなら、調べてやってもいいが?」

 話のあと、彼は。そう言ってくれた。だからジェーダは、頼んだ。

「お願いします!」

 ちょっと待て、と、オルヴィオが近づいていく。そっとジェーダの額に触れ、目を閉じる。

 しばらくして。

「……あんた、騎士より魔道士に向いているぞ。転職しろ」

 言われた言葉は、期待してはいたが、叶うまいと思っていた言葉。

「……へ?」

「今まで現れる機会がなかっただけだな。あんたは優れた魔道士になるだろう。わざわざ好きでもない騎士になんて、なる必要はない。魔道士の方が、似合っている」

 その言葉は、あまりにもうれしくて。

「……ぼくが、魔道士、に?」

「騎士やってちゃ、気付くわけもない才能だ。ちなみに、もうすぐクリュレス魔道学校の入学式が始まる。あんたほどの腕なら、ウチに入れてやろうと校長に掛け合ってもいい。よかったら、来い」

「……ありがとうございます」

「さて、ジェーダとやら。そろそろ帰らねば、心配されるのではないか? オレも、いつまでも暇というわけではないのでね」

「あ、ハイ、すみません、そうします。ありがとうございました」

 そしてジェーダは、家路へと急いだ。希望と期待を胸に抱いて。


 その夜。ジェーダは師匠に語った。

 オルヴィオとの出会いを。自分に、魔法の才能があるということを。

 師匠は、口を挟まずに聞いてくれた。

 そして。

「よかったじゃないか」

 その顔は、本当に嬉しげで。

「君の行く先が決まったんだ。君の父君に、色々と掛け合ってみよう。君は騎士になるべき人ではなかったんだね。これからは、魔道士として、生きるのか。……不思議な感じだね」

「それでも……剣は護身に便利だから、持って行きます。折角、師匠がくださったものですし」

 そうするといいよ、と、変わらぬ穏やかな笑みで。師匠は微笑んだのだった。


――道は、できた。

 あとは、頭の固い父さんを、説得するだけだ。

まだ続きます。

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