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七聖の魔道士(しちせいのまどうし)  作者: 角 風蓮
第一章 魔道学校の新入生
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2 思いの向かう先

 目が覚めたら。見慣れたベッドに横たわっていた。

(昨日のことは、夢だったのかな?)

 そう思って身を起こしたら。

「……っ」

 肩に鋭い痛みが走る。見ると、そこには。新しい包帯が巻かれていた。

「目を覚ましたか」

 と、声とともに、誰かが部屋に入ってくる。師匠だ。

「具合はどうだ? 動けるか?」

 その顔は、心配げだった。

「……心配かけて、すみません」

「なにもお前が謝ることじゃあない。何かあったのだろう? よかったら、聞かせてくれないか」

「……ことは、ぼくが逃げ出したことからです……」

 こうしてジェーダは。事の次第を語ったのだった。


「なるほど。お前を狙う輩がいたとはな」

 話を聞いて、納得したように師匠は頷いた。

「これからは、抜け出すときも、剣を持っていけ」

「……師匠は ぼくを怒らないんですか?」

「どうして怒る必要があるね。生きて帰れたんだ、喜ぶべきだろう」

「……でも、ぼくは勝手に抜け出しました。怒られないと、拍子抜けします」

 師匠は、優しい瞳でジェーダを見た。

「わたしは、嫌がることを強要はしない。その気になれば、いつでも君を引きずり出せたよ。でもね……わたしは、君の意見を優先させたかったんだ」

 優しい言葉をかけられたら。不覚にも涙が溢れてくる。

「……悪い子で……ごめんなさいっ……!」

「よしよし、もう、泣くんじゃないよ」

「師匠は……こんなにもぼくのこと……考えてくれてるのにっ……。勝手に逃げて……心配かけて……ごめんなさいっ!」

 うれしかったんだ。変わり者のぼくにも、気にかけてくれる人がいること。家系じゃなくて、れっきとした「個人」を見てくれること。

 うれしかったんだ。


 その夜。ジェーダは一人、考えていた。

 あの時。自分の命を救った、「力」のことを。

 デュポワは、あれは魔法だと言った。ジェーダを見て、驚いていた。

――ぼくは、魔法が使えるの?

 これまで、無縁だと思っていた世界。そこに、光が差す。

 エニシアの騎士見習いが、騎士をやめられる条件。その一つとして、他の職業に適性が見られること、がある。

――もしもぼくが、魔道士に向いていたら。騎士見習いを、やめられる?

 いくら剣が使えても。戦うことは、嫌だから。

 魔法なら、まだ、人々の役に立てる。

 ジェーダは、ある決意を固めた。

まだ続きます。

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