表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
七聖の魔道士(しちせいのまどうし)  作者: 角 風蓮
第一章 魔道学校の新入生
3/13

1 戦い嫌いの少年

 思ったより長くなりました。大幅に、ノートに書いてあるのと変えました。ノートって、案外分量あるものですね!

 昔っから、戦いが好きではなかった。人が、人を傷つけるだなんて、考えたくもなかった。とことん平和主義だった。

 なのに彼は騎士見習い。どんなに嫌でも、剣を取るさだめ。それでも、どうしても嫌だったから。いつも逃げてはしかられる日々。騎士に生まれたくはなかった。

 そんな彼でも、剣を持たせれば右に出る者はいない。それは、なんの呪いか。

 とにかくその日も。いつも通り、剣の師匠と仲間から逃げていた。

 なんだ、けど。

「……ここ、どこ」

 十三にもなったくせに、まだ道に迷うとは!

「……どうしようか? 道を尋ねるのが無難かなあ」

 よし、そうしようと歩き出した矢先、突如、殺気を感じた。

「!」

 嫌いな技術が命を救った。咄嗟に左によけた彼は、すぐ隣に投げナイフが刺さっているのを見た。

「……誰だ!」

「あ~あ、外しちゃったかあ。残念だねえ」

 声とともに、木陰から一人の少年が現れた。不敵な笑みを浮かべた、ブロンドの髪の少年だ。

「ぼくに、何の用だ!」

 すると、彼はあっさり答えた。

「何の用って、殺しに来たに決まってんじゃん」

「な……!」

「ボクは殺し屋。あんたの才能を恨んだ誰かさんに、あんたを消せって頼まれてね。報酬ははずむらしいし、引き受けたんだよ」

「……剣の才能なんて、要らなかったよ。そいつにあげたいくらいだよ。ぼくは戦いが好きじゃない」

 そのせいで命を狙われるだなんて……まっぴらだ。

 すると、暗殺者は笑った。

「それはそれは。不幸なことだねえ。……ところでキミ、さあ。――剣を持っていないよね?」

「!」

 至近距離で、突如繰り出される怒濤の連撃。剣のない彼は、よけるのに精一杯だ。死ぬ死ぬこのままじゃ確実に死ぬ!

「ぐあっ!」

 稲妻のごとき連撃を、いつまでもよけきれるわけもなく。振り下ろされた刃が、彼の肩を大きく切り裂いた。

「はあっ、はあっ、はあっ……」

「なに、もうおしまい? 手応えないなあ。もっと耐えて、ボクを楽しませてよ」

 暗殺者の少年が、近づいてくる。その命を絶つために。

「く、くるな!」

 声がかすれる。少年は聞こえなかったふりをした。

「冥途の置き土産に、ボクのハンドルネームを教えてあげる、戦い嫌いのジェーダ君。ボクは……デュポワだよ。暗殺者のデュポワ。覚えたかい?」

「……っ!」

「じゃあ、もう、お休み」

 逃げられないほど近づいてきた彼の、銀のナイフがきらめく――!

 そのとき。走馬灯のように短い人生が回りはじめた頭の中で。とても強い思いが、湧きあがってきた。

 その思いは。

「――死んで、たまるかあぁぁっっっ!!!」

 内から湧きあがってきた思いが、波動となって。『デュポワ』に押し寄せる。

「! これは……魔法!? 馬鹿な……!」

 押し寄せてきた波動にのまれ、大きく吹っ飛んだデュポワは。一つの巨木にしたたかに身をぶつけ、思わず息を詰まらせた。

「聞いてない……キミは……魔法使いだった……のか……?」

 力を放ったジェーダ自身も、呆然としていた。

「……わからない」

 チッ、と、体勢を立て直したデュポワは舌打ちした。

「魔道士が相手なら、ボクも作戦を変えなきゃ……。今日はもう戻る。よかったね、命拾いして」

 謎の暗殺者は、風のように去った。まるで、最初からいなかったように。

 肩に傷を負った彼だけが、残された。


 しばらくして。

「さっき、ヘンな音が聞こえたが……。……って、ジェーダ!? どうした? 何があった!」

 よく知った声に、ジェーダは思わず体の力を抜いた。

「ジェーダ! しっかりしろ! わたしがわかるか?」

「……叫ばなくても聞こえてますよ、師匠……」

 師匠が来た。もう、安心だ。

「疲れたから……。話はあとでお願いします……」

 さっきの魔法で、体力ごっそりもってかれた気がする。

「ぼく……本当に……疲れた……」

 絶対安全と分かっている師匠の腕の中で。ジェーダは目を閉じる。静かな安堵とたまった疲れが、体の中を駆け巡る。

「おやすみ……」

 そして意識は。穏やかなる闇に、包まれていった……。

まだ続きます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ