2 属性の意味
「お前は完全なる光だ。まったく穢れのない、無垢なる光だな」
オルヴィオの言葉がよみがえる。
今、ジェーダは。光魔法の授業を受けているところだった。
あのオリエンテーションのあと、彼はオルヴィオに再会し、属性を教えてもらったのだが……。あの時の会話が心に残っていた。
「教えてもらいたいのです。ぼくの属性は何ですか?」
オルヴィオに訊いたら。彼は少し、眩しそうな顔をした。それはどこか、悲しげで……。
「眩しいな」
彼は言った。
「お前は完全なる光だ。まったく穢れのない、無垢なる光だな」
そう言って。黙り込んだ。ジェーダは、興味本位で訊いてみた。
「オルヴィオさん、あなたの属性は何ですか? ただの興味本位ですが」
そしてジェーダは知ったのだ。彼の持つ闇の一欠片を。
「……オレは、闇だ」
その海の双眸が、昏く光った。
「ただの闇じゃない、深い深い、常闇さ。だからオレは、あんたをひどく眩しく感じる。……属性は人それぞれ違うが、あんたほどの光は珍しい」
漆黒の闇魔道士。蒼い双眸に昏きものを宿す。
「……まあ、そんなものだな。属性が判ったのならば、さっさと行け。オレとて暇ではない」
「あ、ハイ! 失礼しました!」
その日はそのまま帰ったけれど。心には疑問が残った。
オルヴィオさんは光とか闇とか言っていたけれど。
そもそも光とか闇とか、何なんだ?
あのあとアスティルに訊いてみたけど、難しいことはわかんねーとか、聞いてくれなかった。
リークは、まだマシな答えをくれた。
「光や闇は、人それぞれの価値基準でいかようにも異なるものだ。ただし、属性は……生まれつきのもので、人の性格も、属性によって形作られるという。あんたがそんなに明るいのも、生まれ持ったのが光だったからだろう。あの様子なら、アスティルは炎かな」
「リークは属性、判ったの?」
問えば。その顔を少し暗くして。
「……たぶん、氷なんじゃないか」
その先に続いた小さな一言は、ジェーダの耳には届かなかった。否、届く必要もない言葉だったのだろう。
「……アナン族であるオレが、魔力を持つこと自体、そもそもおかしいのだがな……」