1 オリエンテーション
初めての授業は、デモンストレーションだった。何人かの先生が大広間に集まり、生徒達を読んだ。
「まず、魔法というものをお見せしよう! この魔法の王国ティサルアーフならば誰でも見られるであろうが、ここ、クリュレス魔道学校は、ティサルアーフの魔法の原点! 並みの魔道士の魔法とは違うのだ!」
口上を述べた先生が杖を振れば。溢れる水が、天蓋を覆った。
って、これ、みんなの上に落ちるんじゃないか?
「……後のこと考えてくれないか、トレアー」
黒づくめの先生が、黒檀の杖を振った。すると水は、途中で凍り、美しい氷の彫刻をなした。
「ルディエム先生、悪い悪い。デモンストレーションのつもりだったのだがなあ……」
「やり方が悪すぎる。後先のこと、考えろ」
ルディエム先生と呼ばれた先生は、咳払いを一つした。
「わたしの名は、ウィネラント・ルディエム。クリュレス魔道学校闇魔法担当だ。君たちも、機会があればわたしの授業を受けることになるだろう」
説明はグライエイト先生(注 トレアーのこと)に頼んではいない、と続け、一人の生徒を呼んだ。
「出番だ、オルヴィオ!」
その名に、ジェーダはドキリとした。オルヴィオ? あの日、ぼくに魔道士になるきっかけをくれた人だ! 一週間前にも会った!
大広間の陰から、青い魔道士が現れる。あの日のままに。変わらぬ強い瞳で。
「……一悶着あったが、これから、説明を始める」
そして彼は、説明を始めた。
説明の内容は、こうだった。
まず、教科は主要七属性(炎、水、地、雷、風、光、闇)に、魔法史、魔法科学(魔科学)、生物学、やや専門的な、精霊術、守護魔法、などのものがあるらしい。魔法は人それぞれに属性や得手不得手があるから、このなかから、五つを選ぶ。ただし、魔法史と魔科学は必修科目で、それだけはとらなくてはいけない、と。
「しかし、入っていきなり属性を選べと言っても、分からない者もいるだろう。今回は特別に、我等が特定することにする。その上で、科目を選べ」
この一週間は、お試し期間だ、と、彼は言う。
「先生や上級生をつかまえて、色々と尋ねるといい。……で、ルディエム先生、説明はこんな感じでよろしかったでしょうか?」
上出来だ、と、ルディエム先生は頷いた。
「それでは、解散。まだまだ時はある。この一週間は、授業らしい授業はない。しばらく好きに学ぶといい」
そんな次第で、一週間が、始まった。
まだ続きます。