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聖の休日

一週間も経たずに話がつくられているだと……。

というか作った後に一週間もたっていないことに気付いた。


空は青空だが、魔法の森は薄暗い。

黒いカーテンに包まれる部屋の様に、木の葉に包まれたこの森は光を通さないのである。

そんな森に家を構える上白沢聖は、ほぼ毎日である執事の仕事の中稀にある休暇を満喫している――とは言えなかった。

彼は焦燥感が大きく、修行の中でも休みを取らなければオーバーワークであることもわかりきっていたとしても、何かをせずにはいられなかった。

休むべきだと思考がいっても、どうしようもなく修行せねばと思考が焦っていく。


「ふぅ――」


部屋の中にいても逆に体に悪いだろう、ならば、と外に出て薄暗い森を散歩することにしたのだが。

視線を感じる、三人、いや人であるとは限らないが、人の形はしているだろう。

そしてその何者かは俺をこの森を迷わせている、面倒なことだ。


「さて」


聖はそろそろ行動するか、と力を入れた。






そんな彼をみる三人の影、透明な羽を生えている少女たち。

いたずらっ子な笑みを浮かべて、ため息をつく彼を見ると、三人は互いを見る。


「困ってる困ってる」


金髪で赤いリボンでツーサイドアップの髪型の妖精、サニーミルク。

光を屈折させる程度の能力を持ち、自身の姿を消したり、虚像を見せたりすることができる。


「うまくいったわね」


黒髪パッツンの青いリボンの妖精、スターサファイア。

動く物の気配を探る程度の能力を持ち、生物の場所を把握することができ、部屋の中に人がいるかどうかも探ることができる。

尚、この妖精たちはかくれんぼをよくやるが鬼をやらせてもらえない。


「あ、あれ?」


少し黄みを帯びた茶色い金髪ロールを持ち、黒いリボンと白い帽子をかぶった妖精、ルナチャイルド。

周りの音を消す程度の能力を持つ。

そんな彼女は二人が笑っているのをよそに、再度悪戯の対象の姿を確認して驚いた。

悪戯で迷わせていた少年の姿がないのだ。


「どうかしたの?」


疑問符を浮かべてサニーミルクとスターサファイアが声をかけてくる。

ルナチャイルドはいたはずの場所を指したので二人は同時に視て驚き左右を見る。


「どこにいったのかしら……」


「もう、早くおいかけるわよ!」


そうサニーミルクが言って立ち上がった時だった。

三人の背後の頭上からゆっくりと聖が降り立つ。


「その必要はないぞ?」


「「「うわぁ!?」」」


「君たちか?さっきまで迷わせていたのは――というか、たちの悪い妖精ってのはもしかして君らか?」


「え、えぇっと……通りすがりです」


「(サニーさすがにそれは……)」


「(苦しすぎるわ……)」


さすがに驚きすぎて頭が回ってないのか、苦しすぎるサニーミルクの言葉に二人が心の中でツッコミをいれていると、聖からの言葉は意外なものだった。


「そうか、わかった」


「「「え?」」」


「知り合いだったらいってくれ、次迷わせたら慈悲の一ミリも出さずにぶち込んでボコボコにするって言ってたって」


そういって聖は魔法陣を発動させると、巨大な炎の龍を具現化させる。


「……ア、ハイソウデスネーガッツリイワセテイタダキマス……」


「もうしないっていうんなら、これでもあげてくれ」


ロボットのようにコクコクと頷くサニーミルクへと聖は軽い笑みを浮かべてポンを一つ、包まれた菓子を手渡す。

散歩でいい場所があったらそこで食べようか、などと思って持ってきたものだ。

意外に美味くできたと思う。


「あ、ありがとうございます……」


ポンッと頭に手が乗せられ、撫でられる。

温かく、なんだか心地よいものだった。

三人は聖に頭をなでられた後、彼が去っていくのを見届けた。

見届けた後に視線をもらったお菓子へと写し、包みを開けるとクッキーを三人で取り出して食べる。

サクサクとした生地を噛んでいくと口の中でじんわりとほろ甘さが広がる。


「おいしい」


三人は黙々と食べ終えて、包み紙を服の中へと仕舞うと、飛んで行く。

聖はまぁある程度は抑えてくれるだろう、などと思っていたが、それは間違いだ。


「さーて!次はどいつにしようかしら!」


「近くに人の気配がするわ」


「じゃあ次のターゲットはそいつかしら?」


妖精は、懲りない。

というよりはこの三人が懲りることを知らない。






クッキー以外にもりんごパイといったものもある。

良い場所がないだろうかと歩いていると、いつのまにやら霧の湖へと出てしまった。

しかし景色のよい場所というなら、この湖もベストマッチした場所である。


「あ、聖!」


「どうかしたんですか?」


「あぁ、チルノちゃんに大妖精ちゃんか、景色のいい場所を探してるんだけど」


「景色のいい場所?いいところがあるけど……あたいについてきなさい!」


「あ、あそこだね?じゃあついてきてください」


「あぁありがとう」


そういって二人の背を追いかけていく、霧がかった湖の上空を抜けていく。

紅魔館を横目に、進んでいくと、湖の向こうに大きな丘が見えてくる。

その丘へと降り立つと、ザァザァと風が吹き、土の香りが鼻をくすぐり、草草が心地の良い音を響かせている。

振り向くと、湖が一望でき、小さいが紅魔館も見える。


「それで、ここにきてなにするのよ?」


「あぁ、食うかい?」


「お菓子?食べる!」


「ありがとうございます!」


そういって切ったパイを二人に渡し、草原へと座り、湖を眺めながら一口。

サクリとした生地に甘いシロップが乗っかり、生地内部のりんごの自然な甘みが広がる。


「これ、聖が作ったの?」


「あぁ、美味くできた」


「へぇ……料理上手なんですね」


「まぁ咲夜さんに習っている途中だけどね」


くるりとまわり、妖怪の山を見る。

そういえば行ったことがない場所だ、まぁ妖怪なんて名前がついているのだし、危険な場所だ、自分の力に自信が付いたときにでも行こうか。

そう思いながらまた一口。


「ねぇ、聖はなんで紅魔館で働いてるの?」


「ち、チルノちゃん」


「いや、うーん色々とあるけど言えないような経緯があるわけじゃないよ、大妖精ちゃん?まぁ理由はね、色々と経緯はあるけど一番てっぺんにあるのは強くなるためなんだよ、強くなって誰かを傷つけないこと、強くなって誰かを護れること、チルノちゃんは最強だっていってるけど――なんで最強になりたいの?」


「何でさいきょーになりたい……か?」


「うん、俺はまぁ護ることだけど、チルノちゃんはどうして?」


「うーん……」


そう問いかけると、チルノちゃんは頭を抱えてしまった。

子供によくある強くなるといったヒーロー思考なのかどうなのかはよくわからない、ただ漠然と強くなりたいじゃ強くなることはできない、どこかで無理だと思ってしまう。


「大妖精ちゃんを護りたい?」


「うーん、うん、護りたい……」


「チルノちゃん……」


「じゃあそれでいいんじゃない?」


「……ええ!そうね!アタイは大ちゃんを護るために強くなるわ!」


そうチルノは宣言をする、そんな彼女を聖は優しい笑みを浮かべて見届ける。


「よーし、強くなるぞ!弾幕勝負だ!この聖と邪を背負いし者である我に力を見せてみよ!」


「大ちゃん!いくよ!」


「ふふふ、うん!いこうチルノちゃん!」


「いくぞ!魔符!『サラマンダーウォール』!」


「『パーフェクトフリーズ』!」


そういって彼らは夕日に照らされて楽しそうに弾幕ごっこをする。

チルノのアイシクルフォールは進化していたという――。




弾幕ごっこを終えて、疲れ切り眠りこけている様子の二人を背中に乗せて、聖は空を飛ぶ。

空を飛んでハタと気づいた。


「家どこだ?」


っていうか妖精に家はあるのだろうか。

そう思ってぐるりと見回す。

――ど、どうすればいいんだ、そう考えて考えて――紅魔館へと飛んでいくことにした。

紅魔館へと近づき、門が見えてくると、美鈴師匠がこちらへと手を振ってくる。

その横には呆れた様子のレミリア様と咲夜さんがいた。

降り立つと、美鈴師匠が近づいてきて、二人を抱きかかえてくれる。


「……休暇っていったのに昼から夕方まで弾幕ごっこねぇ」


「オンオフの切り替えをしないと辛くなりますよ?」


「あはは……すいません」


軽い散歩のつもりが、ここまで大きなものになるとは自分も予測はしていなかった。


「ですが――」


聖は笑みを浮かべる、邪気のない満面の笑みだった。


「最高の休日でした」


「……そう」


「よかったです」


そういった聖へと呆れたような、だけど少し嬉しそうに二人は笑みを返してくれた。


「さて、ディナーといきましょうか、聖も入りなさい」


「え?」


「咲夜が聖もいれた量で作っちゃったのよ?」


「えっそんなこと――あ」


「瀟洒とは程遠いわね、あぁそれとも聖がくるのを予知したのかしら?」


「よ、用意をしてまいります、せ、聖、日傘お願い」


「あ、はい」


日傘を受け取った瞬間、世界が停止する。


「ありがとうございます、咲夜さん」


「え?」


「なんていうか、家族っぽいですよね」


「ぽいじゃなくて家族じゃないかしら?」


「……はい」


咲夜さんを見送った後に、少し経ってから世界が動き出す。


「さて、行くわよ」


レミリア様の声に呼応して歩き出す。

今日は満足できる日だったなぁ、と聖は思った。

とにかく聖は将来マッチョにする。

いうなればアーチャーみたいになる。

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