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異変終了

うん、なんだろうな、さっさと終わりすぎたかな。

博麗の巫女と妖怪の賢者。

そして共に動く複数の影。

有象無象の妖怪など、その前には塵に等しい。

その周りを黒い翼をもち、半袖のワイシャツとフリルのついた黒いスカートを履いた烏天狗がカメラを片手に飛び回っている。


「……働けよ」


「まぁいいじゃありません?……一人いようがいまいが、この異変の勝敗に変化はありませんもの」


博麗の巫女がつぶやくと、その言葉に八雲紫は笑みを浮かべる。

それほどまでにこの戦いは一方的なものだった。


「さて、そろそろでてくるか?」


「そうでしょうね、ここまでコケにされて黙っているわけもありませんもの」


「……出てこなければ臆病者、でてくれば愚か者、か」


「最初からやらなければよかったと後悔はさせませんわ、させる時間すら与えませんもの」




紅魔館内部は大慌てだ、勝てる戦だと思っていたものがこうも簡単に蹴散らされてしまっている。

レミリア・スカーレットは何も表情を浮かべずに暗闇の中、立っていた。

視線は自らの父へと降り注ぐ。

父は苛立ちを隠すことはなく、貧乏ゆすりにより靴が床にぶつかる音が長く続いている。


「……レミリア、いくぞ、誇り高い吸血鬼の力を示してやろう」


「わかりましたわ、お父様」


我慢できないと言わんばかりに立ち上がり、娘であるレミリアを呼ぶ。

レミリアは呼ばれると淑女のように恭しく礼をし、その背中へとついていく。

そして窓から空へと飛ぶ。

彼らへと攻撃を仕掛けようとする八雲紫側の妖怪たちは、吸血鬼たちの主たる男の力はさすがというべきか、魔力で作り出した武器の一振りで吹き飛ばされていった。

そしてついに彼らは八雲紫の前へと降り立った。


「はっ、貴様が八雲紫か、一妖怪風情が、我ら吸血鬼に刃向うなど大それたことを、愚かなことだな」


「その言葉は自らに向けるべき言葉でしょう?」


「抜かせ、貴様は今ゴミクズのように死ぬだけだ」


「さて、ゴミクズのように死ぬのは――数分後の貴方でしょうね」


その瞬間だった、遥か後方にそびえる紅魔館で、轟音が鳴り響いたのは。

驚き振り向く男に、八雲紫は口元で扇子を広げ、笑みを隠す。


「貴様ら、何をやっ――『境界を操る程度の能力』か!」


「あらゴミクズになる男も今はまだ人並みの脳をもっているようですわね」


紅魔館内部を突っ切る姿――八雲藍は銀髪の少女、十六夜咲夜を抱いている。

先ほどの轟音の主は彼女だ、彼女は八雲紫の能力で咲夜の監禁されている場所へと降り立ち、力を全力で解放、少女を奪取した。

そして轟音が鳴り響いた瞬間に屋敷内部にいる二人が突如として気と魔力を解放する。

紅美鈴は空気が震えるほどの気を解放し、屋敷を震わせる。

パチュリー・ノーレッジは数十もの魔法を構成する。

侵入者を撃退するかと思われたその二人は――その瞬間、吸血鬼陣営を攻撃した。

紅美鈴に最も近くにいた吸血鬼は、気が付けば上半身が吹き飛んだ。

パチュリー・ノーレッジのいる室内に居たものは既に絶命している。


吸血鬼たちは恐怖に恐れおののいた。

紅美鈴がゆっくりと近づいてくる、攻撃をしようと力をためた瞬間に、紅美鈴の姿はブレ、肩をポンッと何者かが叩いた。

何者かなど、わかりきっていた。


「い」


ぐちゃり、それは真っ赤なトマトのように。

嫌だという言葉すら出せずに、吸血鬼は潰れた。

肉塊となった吸血鬼を冷たいまなざしで紅美鈴は見下していた。





焦るのはこの異変の首謀者である。

館内部の仲間が次々と死んでいるのだ、確実に一人ではない。


「レミリア、貴様何をした!」


「理解できないといった具合ね、お父様」


いつの間にかレミリアは少し後方に位置している、何故そこにいるんだと言おうとした瞬間に男の瞳に彼女がもつ槍が見えた。

紅い紅い槍、一目で恐ろしいほどの魔力が込められていることがわかる。


「きさ、貴様ァ!親を殺すつもりか!」


「えぇ殺すわ、私の大切なものを奪う輩は親だろうと皆殺しにするわ」


冷酷さと暖かさを兼ね備えた言葉を言い放ち、レミリア・スカーレットは、真実に誇り高い吸血鬼はその槍を父へと放った。


「貴様ァァァ!あの人間の絆されたか!」


「……やっぱり、その程度しか私たちを理解してなかったのね、咲夜だけじゃないわ、この館に住み、関わるすべてが私にとって大切な家族よ、貴方のように下賤で愚かな野望のために娘を使うような屑は家族とは思わないわ」


拮抗は一瞬しかなかった。

それほどまでにレミリアの一撃はとてつもない威力をもっていた。

そして、これにて吸血鬼異変は終わりを告げる―――







――しかし、事件はまだ続く。

少し離れた地、人里にて。


「なんだ……!?いや、この気配は……!」


この場にいるものは、やはり実力者と言うべきか、彼らは人里付近に現れた異常な気配に驚き、人里の方位へと視線を向ける。

それが誰なのか気づいたのは、このような気配を作り出せることができるであろうものを知るもののみだった。













時は少し遡る。

人里は妖怪との争いのためか、道に活気はない。

しかし斑ながらも人影はあった、そこに二人の親子連れがいた。

魔理沙とその母親である。

晩飯の材料が無くなり、無くなりかけていたために、かけ足で購入している。


「さ、危ないからすぐに帰りましょう」


「うん!」


そう二人が笑顔で足早に帰り道を向かっている。

そんな平和な人里に、一人の妖怪が現れた。

吸血鬼陣営の妖怪であり、命令により動いている。

その吸血鬼陣営がどうなっているのかはわかってはいない。


『殺ス、殺ス殺ス――!』


その気配は友好的と言う言葉をどこかにおいてき忘れてしまったかのように殺気立っている。

そして――次の瞬間、妖怪は破壊活動を開始した。

爆発音、それにともない悲鳴が上がる。

道端においてあるもの、瓦、木の破片が縦横無尽に飛び回った。


「きゃあっ!」


「お母さん!」


運が悪かったというべきか、飛んできたものが魔理沙の母親へとあたり悲鳴を上げる。

軽症だ、走れないほどではない、しかし悲鳴は妖怪の耳へと届き。

彼女たちへと視線を向ける。


『ヒャハッハア!ウマソウダ……!』


魔理沙はその存在に思い出し恐怖する。

思い出してしまったのだ、妖怪と出会った時のことを。

その恐怖を。

しかし――今の彼女は違った。

霊夢や、聖といっしょにいたいからこそ、彼女は少しながらも強くなった。

魔法を、構成する。

未熟で、威力もそれほどない。


――それでも、今このとき、誰かを助けられるなら。


星々が現れ、妖怪を攻撃する。

直撃、爆発。

やった、という気持ちが魔理沙の中で現れ、その気持ちは次の瞬間霧散した。


『人間風情ガ……何ヲシテルのかナァ?』


楽しそうに、おもしろそうに。

目の前の玩具をどう壊そうか、そう考えている笑み。

巨大な腕、巨大な爪。

それはゆっくりと振り上げられ、魔理沙へと放たれる。


「魔理沙!」


しかし、それにより吹き飛ばされたのは魔理沙ではない。

彼女の母だった。


「お母さん!」


声をかける、反応が無い。

死んでしまったのだろうかそんな言葉が脳裏によぎる、……嫌だ。

嘘だ、お母さん。

助けてよ――


「魔理沙ァ!!」


『ガァッ!?』


妖怪へと思い切り突撃し吹き飛ばす。

見知った姿が彼女の視界に入る。

浅黒い腕に黒っぽい和服をきて、彼は建っていた。


『人間ガァ!』


「人間は人間でもただの人間じゃないんでね!」


魔法を構築し、辺り一帯に火炎が舞う。

直撃し、炎は大地を抉る。

しかし妖怪は炎の中健在だった。


「……」


結構本気だった、といえども彼はひくわけにはいかない。

この妖怪に勝てるのだろうか、そう考えてみて、勝たねばならないと意識を切り替える。

強さはあちらのほうが上だろう。


「魔理沙、安全な場所に言って手当してもらえ」


「う、うん」


背後は振り向かずに、妖怪に聞こえない程度で会話する。


『人間ガオレニカナウと思ッテルノカ?』


「人間人間って、お前は種族コンプレックスか何かなのか?」


『コンプレックス?』


「あぁ、人間よりはオツムが劣ってるんだな、アンタは!」


『貴様ァァ!』


挑発したところで全力逃走を開始する。

当然、人里の外へだ。

しかし妖怪のほうがやはり速い、追いつかれてしまったが、人里の隅にくることができた。気で肉体を強化する、魔法を構成する、霊力を身に纏う。

誰か来てくれればいいんだけどな、そう思いながらも全力を振り絞り相対する。


突撃する、その瞬間、妖怪もこちらへと突撃する。

馬鹿正直だ、この妖怪は。

故に――攻撃は真っ直ぐだ。

横薙ぎの一撃は予想通り、避ける。

その瞬間停滞していた魔法を解放する。

一瞬だ、意識が魔法が放たれた方向に向いた。

気を魔力と霊力を爆発させて、もうなんでもいいから捨て身タックルを食らわせる――!

全力の突撃、妖怪の肉体からベキベキとかボキッとか嫌な音がする。

しかし、やり遂げた!

あの物凄い音だ、動けなくなっているであろう、そう思い――油断したのがまずかった。

妖怪に拘束される。

理解した時にはすでに遅い。

妖怪の口元から、巨大なエネルギーを感じられる。

そして――その攻撃は聖と共に人里へと飛んでいき、爆発した。


――痛い


痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い

全身が火あぶりに合ったかのような痛み。

肉が焼けるような匂い、生臭い血の香り。


「ア゛ァア゛」


痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛――


『人間ゴトキガ……』


妖怪が、目の前にいる。

あぁ、死ぬのか。

死ぬんだ、俺は。

何度も何度も俺は努力が水の泡になる。

何も達成できない。

夢を掴むことすら叶わない。

そう、死ぬ――死ぬ――。







嫌だ







嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ

また何も達成できないのか、何度も何度も何度も何度も何度も何度も。

嫌だ、嫌ダ、嫌だ、嫌ダ、イやダ、いヤダ――





あぁ、そうか。












――妖怪は驚愕する。

目の前の人間が、人間ではなくなっている。

天使の翼のような、純白な翼が映えたかと思えば、悪魔のような翼。

浅黒い肌は真っ黒に変貌し、顔は既に人とは思えない。

真っ黒な肌に、真っ赤な大きな大きな瞳が二つ。

龍の鱗だろうか、肌にびっしりと生えた鱗。

爪は長くなり、体は子供の体から大人の体よりもさらに大きく。


『ア゛アァァ』









殺せばいいんだ








異形から黒い塊が生まれる。

その一撃は色々な力が結集された、一撃。

その一撃が放たれたとき、妖怪は確かにそれに対抗するために攻撃を放った。

筈だ、拮抗すらしなかった。

虫けらみたいに蹴散らされ、妖怪はその真っ黒な塊に飲み込まれた。

塊はそれでも止まらない。

唯一幸いにして、聖が人里の隅に向かったために、人里の外へと放たれた一撃がそこまでの被害が起きなかった。

ただ――


『オ゛オ゛ア゛アァア!』


それが、これからも続くとは限らないのだ。

黒い塊は遠く外れたところに着弾し、その一撃は大きなクレーターを作り出す。

その一撃は土ぼこりを舞うという現象すら起きなかった。

爆発と言う攻撃ではない、異常な威力をもった一撃が、丸く拡大しただけなのだ。

何度もその塊は拡大縮小を繰り返し、消滅する。

そこに現れる銀髪の女性――藤原妹紅。


「……聖、なのよね」


『ギガガア゛イ゛イィゴロ゛ズ』


黒い塊を撃ち放つ、その一撃を何とか回避する。

後方で山が吹っ飛んだが、気にせずに――異形、聖をみる。


「……違うだろ……」


聖が言っていた言葉、守りたいという言葉。

暴走して、全てを殺してしまっては意味がないだろう。


「……貴方は、こんなことをするために、がんばってきたんじゃないでしょう!」


叫ぶようにそう言い放つ、しかし聖の理性が戻る気配はない。


”妹紅姉ちゃんも絶対に護るよ?”


「……聖……!」


炎を纏う、さながら不死鳥のように、妹紅は攻撃を開始する。

絶対に、絶対に戻して見せると誓い。

炎を操作して聖の周りへと展開する。

そして次の瞬間、聖を中心の炎の柱が天高く建った。

しかし無傷だった。


「うおおおおおおおッ!」


炎を操り、巨大な炎の塊を作り出す――が黒い塊によって消滅した。

今度は複数作り出す。

何百もの塊を作り出し、聖へと攻撃する。

しかし、それすらも消滅させる。

思い出す、聖との思い出を。

無邪気な笑顔を、歴史書ばっかりよんで怒られて涙目な少年の姿を。

成長する姿を。

気が付けば筋肉のついた体になっていて成長と言うものはすごいものだと驚いたことを。


「畜生ッ……畜生ォォ!」


「……無暗に撃って当たる相手でもないでしょう?」


「!?」


驚き振り向く、突如として現れた空間の裂け目から手が生えて、妹紅の腕をつかんでいる。

そして裂け目が大きくなり、そこから突如として金髪の美女――八雲紫が現れる。


「貴方は――手を貸してくれるの?」


「えぇ、そうね」


そういって手をかざす、能力を使うようだが。

聖の動きが鈍る程度で、そこまでの影響はない。


「……影響はでるけど、そこまでじゃないみたいね、でもある程度弱らせれば、恐らくは」


「……それで、十分よ」


聖の能力により、大きく影響は与えられないようだ。

しかし弱らせれば何となる可能性がある――それで十分だ。

二人は聖へと突撃する。







――八雲紫は笑みを浮かべる。

予想通り、ではない。少なくとも人里に妖怪が攻め入ることは予想していたが、上白沢聖の暴走は予想することはできなかった。

そして目の前の存在、恐らく戦えばこちらも唯では済まない。

それを理解しながら、彼女は笑みを浮かべる。

自らが求めた存在が、理解の範疇を越える力を持っていたというだけだ。

それが完成する過程に、少し強固な壁が建っていたとしても、それはハイリターンがあることのほかならない。

人であり人でない、そして人でありつづけるもの、八雲紫はそういった存在が必要だったのだから。

それだけではない、彼には沢山の利用する余地がある。

この程度で終わらせるわけにはいかないのだから。


「……さて、いきましょうか」





……終わらせるわけには、いかない。


やたらめったらにポーンをとりまくる。

やべぇと思ったキングとクイーンがでてくる。

八雲紫が藍を相手陣営に召喚、混乱と共にナイト・ビショップを裏切らせる。

キング混乱時、クイーンが裏切りキングドーン!

という相手にとって無理ゲー。

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