罪と葛藤
妹紅は女性らしい喋り方が基本。
しかし男言葉を使うこともある。
とりあえず親しい人の時は男言葉っていう設定にしよう(提案
森近霖之助、修行中の名前などはわからない。
よし、めんどくさいからそのまんま使っていいよね。
主人公の将来に親友になるオリキャラを出したい、出せない。
上白沢家一室、聖に与えられた部屋の真ん中で、本と大量の紙束を抱えて聖は死んだ魚のような目をしていた。
本に書かれている言語はアッカド語、魔法の勉強のために与えられた一冊である。
魔法とは現在の科学と呼ばれているものと密接に関係する。
今でこそ反対の代物となってはいるが、昔は似て非なるものだった。
「聖ーいるの……うおっ!?」
妹紅がそんな聖をみて思わずのけぞり驚いた。
灯篭の灯りの中、死んだ目をした子供が、本を読んでいる光景だ、どこかのホラー映画にでてきそうな光景だ。
「もこ……ねえさん、ふふ、すごいよ、言葉が追いかけてくるんだ」
「聖ィィ、それ幻覚だ!文字は動かない!」
「嘘だぁ、サンスクリット語が笑ってるよ?」
「け、けけけ慧音ェェ!」
「大丈夫だ、聖、私は古代語はある程度理解している」
「うおっいつのまに!?」
たまらず妹紅は慧音の名前を呼ぶ――瞬間に妹紅の背後から聖へと向かう慧音がでてくる。どれだけ取り乱せばいいのだ。
「慧音母さん……」
「大丈夫だ、聖……」
「なんだろう、ものすごいシュールだ」
泣きながら抱き合う二人に、妹紅はため息をついた。
ふぁ~あ、と欠伸をして目を擦る、眠そうに授業を受けると、昼食時に母さんが『つまらなかったのか?いいんだぞいっても……べ、別に、別に言ってもいいんだぞ』と泣きそうな顔で聞いてくるので、さっさと眠気を取ってしまわなければ、と伸びをする。
「眠そうだね?」
視界の隅からひょっこりと、いつのまにか横に来ていた魔理沙が声をかけてくる。
「あー、ちょっとあってね」
「修行が夜遅くまであったの?気をつけてね」
「あぁうん、ありがとう」
詳しくは言わずに心配してくれた礼を返す。
大体古代語のレクチャーは晩飯時あたりでいったん終了となったのだが、パチュリー師匠から与えられた本の一冊に歴史書があったことが運のつきだ、気が付けば朝が来ていた、今日が休みでよかったとホッとするが頭がもやがかかったように正常に働かない。
軽く体を動かそう、そう思い魔理沙へと提案する。
「なぁ今日遊ばないか?」
「うんっ、いつも用事があるから久々だね」
最近は魔力と気、そして週一ではあるが霊力もやっているためにかなり多忙だ。
週二回はあった休みが一回へと減ってしまい、友達と遊ぶこともままならない。
「よし、今日はどう遊ぶ?」
「じゃあこーりんと会おう!」
「こーりん?」
「うんっお父さんのところで修行しているの!半分人間で半分妖怪なんだって!」
魔理沙のお父さんのところで修行して、半分妖怪……。
それらの単語を合わせて、想像してみる。
日焼けして、クリームを塗られてテッカテカな肌をしている青年が、ほぼ全裸な格好でポージングしながら『HAHAHA!君がMARISA‐CHANのFRIENDのSEI☆KUNだね、僕の名前はKO-RIN!好きな筋トレは懸垂30kg荷重、好きな食べ物は卵と笹見、好きな栄養素はコレステロール、嫌いな物はアルコールかな!』そういってムキムキィッと筋肉を盛り上げさせる青年。
「あいたくねぇ……」
そんな聖の一言で悟ったのか、魔理沙は苦笑いでやんわりと否定する。
「こーりんはガタイはいいらしいけど、普通だよ」
「……そうなの?」
「うん!」
よかったとは声には出さないが本気で思う。
あのテンションが一人でももてあますというか扱いきれない、コップの水が表面張力でギリッギリ保っているようなものだというのに、二人でくると噴水のように流れ出すだろう。
――しかし、油断はしない、魔理沙の普通はよくわからない。
だってあの父親といる日常が普通なのだから。
「やぁ、こんにちは、君が聖君だね?」
「ごめんなさいッ!」
「!?」
普通だった、本当にごめんなさい、思わず土下座を敢行する。
「えっ、ど、どうかしたのかい?」
焦る彼は普通の人間そのものである。
そういえば半分妖怪だったよな。
ちょっと考えてみよう。
母さん・半分妖怪・性格:女神
妹紅姉さん・不老不死・性格:天使
師匠・人間・性格:ドS
霊夢姉さん・人間・性格:傍若無人
美鈴さん・妖怪・性格:優しい
パチュリー師匠・魔法使い・性格:よくわからん
レミリアさん・吸血鬼・性格:カリスマ(?)
咲夜ちゃん・人間・優しい、基本美鈴さんと一緒だ。
魔理沙・人間・性格:明るい、父親が金槌で殴打されても苦笑いで済ます
魔理沙のお父さん・人間・性格:言わずもがな
こーりん・半分妖怪・普通 ←New!
俺・ごっちゃごちゃ・性格――
「俺は、普通だったんだ」
妖怪に関係する人間は、普通だったんだ。
「いやっほーい!」
思わず飛び跳ねてはしゃぐ聖。
その様子を森近霖之助はひきつった表情をして、魔理沙へと視線を向ける。
「だ、大丈夫なのかなあの子……って魔理沙ちゃん、どこから金槌を取り出したの?」
「なんか殴りたくなったらいつのまにか握ってた」
「魔理沙ちゃんっ!?」
後に霖之助は語る、あの時は魔理沙ちゃんの背後に母親の影をみたと。
少し時間がたてば聖も魔理沙も落ち着き、いつも通り会話を始める。
「それで、霖之助さんは幻想郷に入ってきたものを扱いたいと」
「うん、色々と入っているんだし、そういったものを商品として扱う店があってもいいかな、と思ってね」
そういって懐から携帯電話を取り出した、見るにかなりの旧式、折り畳めもしない、起動したら白黒だったりするのだろうか。
「僕の能力でこれは携帯電話という遠くの人と電話や、手紙を送受信できるものだということがわかった、どう使えばいいのかわからないけどね」
そういった後に店に引っ込み、ヒーターを取り出す。
「これは部屋を暖めるものらしい、どう使えばいいのかわからないけどこのスタートと書いてあるものを押すものかと思ったんだけどね、動かない」
動かないものだらけじゃないですかやだー。
……おそらくこれらの品物は『幻想入り』したものだろう。
幻想入りとは、外の世界で忘れ去られたようなものが幻想郷の結界を抜け入ってくることらしい。
しかし、携帯電話か、そういえば携帯電話はシェア争いが激しいし、今ではスマートフォンが主流となり、既に折り畳み式でもない携帯など蚊帳の外だ。
使っている人間なんているのだろうか。
機種も沢山出ているだろうし、その中の一つが忘れ去られていたとしてもおかしくはない。
「僕の能力『道具の名前と用途が判る程度の能力』の所為で名前とどう使うものはわかるんだ、……わかるんだけどね」
電気無き
携帯なんぞ
ただのゴミ
液晶画面と精密機械の集合体を動かす力が無ければただの飾りにもならないものだ。使う方法、電気というものを説明した方がいいだろうかと考えて首を横に振る、言い訳はどうすればいいのだろうか、そもそも電気というものを生み出せるのだろうか。
発電機とガソリンがあったとしても、充電器がない。
電気を直接ツッコんだとしてもボルトやアンペアを操作する技量などないし、そもそもそんなものどうやって操作するんだろうか。
「まぁこういった幻想郷に溢れつつあつ、外の世界の物を扱おうと思う、確実に何でも屋みたいなものになるだろうけどね」
そういって霖之助さんは苦笑する。
「……たぶん俺は常連になると思いますよ?」
「え、本当かい?」
「なんていうか、面白いじゃないですかこれ」
なんていうか、とても懐かしかったし、昔読んでいた漫画がいつのまにか幻想入りするかもしれない。
それは楽しみだ。
「こーりん、私も常連になるよ!」
「うん魔理沙ちゃんもありがとう、もうすぐ修行も終わるから、楽しみにしててね」
そう霖之助さんが言うと、俺と魔理沙は頷いた。
そのあと、霖之助さんの発見した幻想入り道具の発表会を開始した。
そういえばあったなぁといった商品や、いつの日のものかわからないような骨董品、そして世に出回りつつも時代の流れで消えた書物をみつけ、霖之助さんにお願いして貸してもらったりと有意義な時間を過ごし、気が付けば時間は日も落ちて暗い時間になっていった。
「魔理沙!霖之助さん!また明日!」
「うん、また明日!聖!」
「今日は楽しかったよ、聖君」
そういって手を振りあって別れる。
既に薄暗くなり、人通りも少ない時間帯となっていた。
薄暗い道というものは、どれだけ修行しても怖いものだなぁと思いながら歩いていた時だった。
銀閃が視界の横で動き、反射的に避けたのは。
それが刀だと理解した時、ドクンと大きく心臓が跳ねる。
何者なのだろうかと顔を見た時、その心臓はさらに一段階大きく跳ね上がる。
ボロボロで、記憶にある彼とは全く違っていた。
だというのに――
やはり、子供だというべきなのだろうか。
「父さん……?」
それが父親だとすぐに理解できた。
「え、なんで……?」
問いかけるが、話すら聞こうともせずに刀を振りかぶり、やたらめったらに斬りつけてくる、それを軽くかわす、素人の剣など師匠にぶんなぐられ、短期間ではあるが美鈴師匠に稽古をつけられている自身にとっては遅く、避けることも容易い。
思考がうまく回らず、本能的な回避になってしまっているが、それでもだ。
疲れ始めたのか、父は振りかぶった力に耐えきれず、前へとすっころび、置いてあった物へとぶつかる。
「悪魔がッ悪魔がァァッ!」
「なんで、だよ」
それでもなお憎しみに顔を染め上げて、父は剣をふるう。
止めなければ、話を聞かなければと思い足払いで怪我をしない程度に投げ飛ばす。
「なんで」
「お前が、お前さえ生まれてこなければァッ!」
叫ぶように父は言った、聖が引き取られていった後のことを、支離滅裂で、言葉も聞き取りずらいが、聖は言葉を必死で聞き取り、頭の中で整理する。
俺が引き取られていった後、起きた俺の生みの母親は父へと問いただした。
『私の子供はどこにいるの?』と、その言葉にまくしたてるように父は説明した。
『肌は浅黒く、髪は白髪の気色悪い人の皮を被った悪魔が生まれたんだ、俺は君といっしょにいたい、あんな気色の悪い子供を産んだとなると、君の実家から引き離されてしまうかもしれない、俺はお前といっしょにいたい、子供なんてまたつくればいい、君を愛している』
――そう言い放った父への返答は、平手打ちだった。
何故相談をしなかったのか、病気だったのかもしれない、そう生みの母はそう言い放ち、父へと冷たい視線を向ける。
父は弁解をしたが、聞き入れようとはしなかった。
――その結果だ、父が妻を殴りつけたのは。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も
騒ぎを聞きつけた人が父を取り押さえるまで殴り続け、父がやった行為が全て母の実家へと耳に入り、父と母は引き離されて、そのことで父は職を失い今に至る。
それが全てお前の責任だと、父は言った。
聖は何も返答はしなかった。
心の中に罪悪感はあった、産まれなど選択はできるわけがない、こうなるとわかっていれば生まれなどしなかった、胸を突き刺す痛みを感じていた。
俺が生まれなければ、子供を捨てなかっただろう。
俺が生まれなければ、男の妻であり産みの母を殴りつけることもなかっただろう。
目の前の男がわめく言葉の軍勢は、そのどれもが間違いなどではない。
―――しかしこの男は間違っている。
『聖の責任』であるどれもが、『この男の選択』によるものだ。
その選択した責任を、全て聖に原因があると自身に言い訳して、聖へと理不尽を掃出し、自らを慰めているに過ぎない。
「――それは、おかしい」
自らに責任はある、何度でも言える。
「もう死んでくれよォォオオオオ」
だけどお前に責任がないとは絶対に言わない。
絶対に言いたくない。
拳を握る、霊力を体へと充填させる。
切り裂かれてもいいだろう、だが俺はこの男を思い切り殴りつける。
振りかぶる剣を受け止める準備はできた――はずだった。
その準備が無駄なものになったのは。
「死「「ふざけるなァァッ!」」ぷげぇぁっ!?」
父の両頬に拳が突き刺さり、吹き飛んでいく。
それを成したものに驚き視線を向けると、それは見知った二人だった。
「慧音母さん、妹紅姉さん」
言葉をかけるが、肩を上下させて興奮した様子で吹き飛んだ父へとビシィッと指先を向ける。
「赤ん坊であった聖に責任を問うのはもってのほかだ!」
「そもそも、貴方は自身の責任から何故目をそらしているのかしら」
興奮した様子だというのに、二人から発せられた言葉はゆっくりと丁寧な言葉だった、尋常じゃないほどの圧力がかけられているのは感じ取れたが。
父は仰向けになってからピクピクと生きてはいるが起き上れない……というよりも意識がないのだろうか。
二人が近づいてくる様子と、複数の男が父へとかけよる様子が見える。
「やべぇ顎が割れてる」とか「すげぇ火傷になってる」とか言葉が放たれている。
……やりすぎだろう、さすがに。
二人が近づいてくると、なんだか気が抜けて、倦怠感が体中に広がり、瞼が重くなる。
「聖、大丈夫か?」
「慧音……寝てる」
「はぁ、大丈夫そうだな……」
そういって慧音は眠っている聖を抱き上げて、抱っこをして歩き始める。
妹紅はその様子に笑みを浮かべた後に、少し悲しそうな表情をする。
そして小さく、慧音に聞こえない程度に
「……目を、逸らしてもいいのよ、ね?」
「どうかしたのか?」
「いや、なんでもないさ」
そう放った言葉は夜の闇に溶けて行った。
慧音が振り向いて声をかける、妹紅は首を左右に振って、小走りで近づいて行った。
次の日、気が付けば寝ていたのだと理解した。
布団の中でとにかく整理する、そして一つの結論をつけて、慧音母さんがいる居間へと向かった。
「母さん」
「聖か、起きたのか……大丈夫そうだな」
「うん、大丈夫だよ」
「そうか、ならどうかしたのか?」
「……俺、産みの母さんと会いたい」
返答はなかった、慧音母さんは少しの間静止した後にすぐさま料理へと取り掛かる。
「今日の朝食は焼き魚……だ」
「……母さん」
「……何もかも背負わなくてもいいんだぞ」
「……」
「……聖は子供なんだ」
「ありがとう」
慧音の顔は、聖からは見えなかった。
少し間があった後に、慧音は了承した。
「……あぁ次の休みに会えるようにしておこう」
「――うん」
今更思ったんだけど、これ思いっきり聖の自伝みたいなものになってるよね。
ほのぼのしてるといったな、あれは嘘だ!
といってもシリアスなんぞあと一話しか続かない!
あとは原作始まる後のイベント以外はシリアスはない!
やったね、ここまでやったらもうすぐだよ!
序章長い、本当に長い!