紅魔館
子供時代を十話で終了させるつもりだったんだ、無理だけど。
修行の後、聖の生みの両親の話と人里と親友になるやつとの話と魔理沙と霊夢の話とアリスとの対話と吸血鬼異変が起こる最中に暴走が開始されスペルカードルールが出来上がるまでやった後にさらにアリスとの対話をして魔理沙が魔法使いになるまでやって原作の紅魔まで飛ばす!
……どうして、十話で終わると思ったのか甚だ疑問だ。
というより絶対に面倒くさくなって途中退出する。
師匠が冷や汗をかきながら笑顔で近づいてくる。
さすがにこの表情は初めてだったのでどう反応していいのか戸惑うが、とりあえずいいことではないだろう。
「いい加減魔力と気の修行にいくか」
そう言い放つ、あれ……いたって普通のことだな、と聖は少し疑問に思ったが、頷いた。
「どこにいくんですか?」
「紅魔館」
憮然として言い放った師匠の場所を脳内で検索する。
紅魔館、そういえば少し前に聞いた、吸血鬼の館で、門番が強いらしく、腕に自信を持つ者がたまに挑戦しに行くとか。
「……吸血鬼の館?」
「なんだ、知ってたのか……たしかに吸血鬼の館だ」
「俺、大丈夫なんでしょうか、出会った瞬間に灰になるまで血を吸われるなんてこと」
「まぁ出会ってすぐはないが、敵対するとなると三秒で死ぬ、破裂して死ぬ」
破裂して!?三秒で死ぬ!?
紅魔館に行くことは、聖の中でさながらライオンの檻に生肉を体に巻いていくがごとしとなった。
そんな危ない所に行きたくはない、だがいい加減腹をくくるべきだ、強くなりたいと願ったのは自分自身なのだから。
「はい……じゃあ行きましょう」
そういいつつ聖の足は産まれたばかりの小鹿のようだった。
「霊夢、一緒に行くか?」
「行く」
神社の奥の襖から霊夢姉さんが顔を出す。
それを聞いた師匠は頷き返し、善は急げと言わんばかりに空へと飛び出す。
あれ、そういえば――
「なんで冷や汗をかいてたんですか?」
「何の話?」
「いや、さっき師匠が冷や汗をかきながら話しかけてきたから、何か良くないことでもあったのかなぁ、なんて」
「どうせ修行やらせすぎて時間がないとかじゃない」
淡々と霊夢姉さんは答えを返してくる。
まっさかーそんなわけ無いだろと思いつつ、師匠を見ると音程のずれた鼻歌をしている。
……おい
「まさか師匠」
「おぉっとルーミアかぁ!」
わざとらしく大きな声を上げて師匠は声をかける、何者かと師匠の視線の先を辿ると、そこにあったのはいつかみた黒い靄だった。
「あれはルーミアといってな、力の弱い妖怪だが、聖の今では対抗することはできるが驕ってはいけない、調子に乗るとすぐに負ける」
「は、はぁ」
「先に進むと霧の湖という場所がある、そこには妖怪と妖精がいるが、目的地に進んでいる間に違和感が出た時は周りの気配を探りつつ、戦闘の意を伝えるために周りに霊弾でも展開すればいいだろう、だが基本的にはあたり一帯を気を付けつついけば妖精に悪戯されることはないだろう!」
「は、はい」
「夏場は妖怪が集まりやすいために、あまり湖には行こうと考える人間は少ない、まぁある程度妖怪と戦えるだろうからな、私が修行したからな!じっくりと!じっくりと!備えあれば憂い無し!」
「そ、そうですね」
「そもそも先ほどのルーミアは明るい場所で見かければ一目でわかる、黒い靄があるからな!黒い靄は自分でも先が見えないらしい!つまり音を立てずにさっさと逃げろ!というのが対処法だな!」
その後、師匠は色々な知識を教えてくる。
それ故にこちらが割り込める隙すらなく、霊夢姉さんが視界の先でため息をつくのを見つつ、その話を聞いていたところ、いつの間にか真っ赤な屋敷へと到着する。
「目が痛いわね」
淡々と言い放つ霊夢姉さんに同意する、こういうシュミな人には悪いが確かに目に優しくない。
門の前に降り立つと、そこにいたのは、チャイナ服のような衣装をまとった赤い髪の女性だった。女性は拱手をしてこちらを出迎える。
「博麗の巫女様ですね、何かご用事で?」
「……紅美鈴か、久しぶりだな」
「私にとってはまるで昨日の出来事のように思い出せますよ」
そういってニコリと笑う彼女はとても友好的だった。
ここが吸血鬼の館であることを忘れてしまうそうになるほどに。
「さて、彼女は紅美鈴だ、ここのメイド長をやっている」
「はじめまして、……まぁもうすぐ代替えかもしれないですよ」
こちらへと礼をしてくる、その様子に霊夢姉さんと俺は軽く礼を返す。
紅美鈴と呼ばれた彼女の言葉に興味深そうに師匠は言葉を返す。
「次代のメイド長が現れたのか」
「えぇ、まだ幼いですが、ね」
「ということは人間か、吸血鬼が人間を育てるとはな、ちなみにこちらも代替えだ」
「博麗の巫女の代替えですか、まだまだ現役そうですが」
「伸びないのさ、伸びないということは後は落ちるだけということでもある」
「……人とは儚いものですね」
「何、その儚さを人は楽しむのさ、そして次を楽しむ、やることも、見ることもできる」
「そうですね、咲夜ちゃんの成長をみることは楽しいですから、わかる気がします」
何だろう大人の会話だ。
入り込めない会話の交わしあいだ。
「……さて、世間話は終わりだ、ここに来た理由というのだが」
「まぁ来た時から大体はわかっていましたが、おそらくですが、その男の子が理由ですよね」
そういって美鈴さんが視線をこちらへと向けてくるので、頷きを返すとにこりと笑顔を向けてくれる。
綺麗な人だな、と改めて思った。
「あぁ、謁見の了解は……既に得ているか」
「貴方の気を探知した瞬間にお嬢様へと報告をしてからこちらへと向かいましたので」
「用意周到なヤツだな」
「お褒めの言葉、ありがたく頂戴いたします」
そういって門へと向くと、門が開く。
妖精が彼女へと礼をすると、美鈴さんはそれに軽く会釈をして、館の方へと歩き、それに続いていく。
館へと入ると、日の光の入らない、窓の少ない館だと思った。
少ない窓もカーテンでおおわれている、あぁ吸血鬼の館か、あまりにも友好的だったもので忘れかけていた。
歩き続けると、大きな扉の前で美鈴さんが止まり扉をこちらに体を向けながら右手で開ける。
「どうぞ」
そういって室内へと招き入れられ、入ると――そこは異世界のようだった。
豪華な椅子に少女が鎮座する、先ほどライオンの檻という例えを考えたが、それを訂正する。
ライオンなんてものじゃない。
まるで大気の震えるような世界で師匠は憮然として立っている。
こちらは上から圧力がかかっているようで、直立すら困難だというのに。
「レミリア」
「わかってるわ」
その瞬間圧力は霧散した、となりの霊夢姉さんは表情は崩さないが冷や汗が見て取れる。
「ようこそ、紅魔館へ」
そう言い放った少女からは歓迎のかの字も見て取れない、敵意をむき出されているわけでもない、おもしろいことでしょうね?という要求。
その要求へと俺をひっつかんで前に出す師匠、痛い痛い、何故頭を鷲掴みに!?
「ところでこいつをみてくれ、こいつをどう思う?」
少しレミリアさんは疑問を浮かべた後に俺を見据える。
何だろうか、全てを見透かされるような瞳だ。
レミリアさんは少し驚いたかのような表情をした後、ニヤァ……と面白いものをみつけた子供のように残酷で無邪気な笑みを浮かべる。
とても怖い、赤ん坊の手の中のおもちゃの気分だ。
「すごくおもしろいわね、私が運命を見透かすことがきないなんて、ね」
スゴクオオキイデげふんげふん、言葉の通りだとこの人の能力は運命に関係のある能力なのだろうか。
俺の能力によって、能力の干渉、つまり概念が無効化されているのか、運命という存在そのものが俺の中でないのかよくわからない。
「こいつを「別にいいわよ?」……」
凄い、この人凄い!
師匠が先手を取られた!すげぇ!マジすげ何故霊弾を放とうとしているんですか師匠!?
「いや、なんかイラッとしたから」
心を読む能力でもあるのだろうか彼女は、いや直感だろう。
だとしてもどんな直感をしているのだろうか。
「運命は読めないけど、どんな存在かはわかるわよ、妖力なんてものは身近にあるものだしね」
「そうか……聖に魔力と気を教えてやってくれ」
「……貴方、ちゃんと言わないと気が収まらないの?ちなみに美鈴は……OKらしいけど、パチェが頷くかは本人次第よ、自身であって確かめてきなさい」
紆余曲折あったが、ここで習うという確約は得たらしい。
美鈴さんは頷いてくれ、次はパチェ?とかいう人の許可を得なければいけないらしい。
美鈴さんに場所を教えられた後に地下室へと向かことにする。
外へと出ようとすると、レミリアさんから声をかけられる。
「聖、といったかしら」
「ちなみに聖、この地下室はこの扉以外をみても開けるなよ」
「はい?なんか巨大な化け物でも封印してるんですか?」
「封印はされているな、悲しくも怖いやつがな」
はぁ、と答えた後に扉の中へと入ると、そこは――無茶苦茶本を置かれた場所だった。
図書館というレベルじゃない、都立中央図書館よりもでかいのではないだろうか。
思わず歴史書を探してしまうが、デカすぎて先まで見ることができない。
「あ、博麗の巫女様ですね、パチュリー様はこちらです」
出迎えたのは赤い髪で悪魔のような羽をもつ、ワイシャツに黒のベストとロングスカートといった出で立ちだ。
招かれると、そこには巨大な図書館の中央に、ポツンと椅子と机が置いてあるだけの場所だった。そこに座る女性は紫の髪をもった、これまた紫を中心とした余裕ある服装をした女性。
「来たわね」
呼んでいた本をパタンと閉じて、こちらへと視線を向ける。
「さて、レミィから話は聞いたわ、さしずめ概念を無効化する能力といえばいいのかしら?」
「紫が言うには、『常識や概念が通用しない能力』らしい」
「そう、それと師匠に関してはOKよ、対価として能力を使わせていただくことになるけどいいかしら?」
「は、はい、でもどうやって使うんでしょう」
こちらに視線と問いかけを向けられ、頷く。
能力に関しては使っていただくのはOKだ、どう使えばいいのかさっぱりだが。
「そうね、基本感覚的ね、そこまで考えて使うものではないわ、貴方はもはや自分に使っているようなもの、あとは明確なイメージをもって能力を支配下に置くことが可能となればね」
そういってパチュリーさんは一息ついて話を再開する。
「貴方の能力はいわば世界の数式を破壊する能力よ、世界そのものに叛逆しているといっても過言ではない、でもね、その能力は無限の可能性を表す、だから能力により影響している貴方は常に無限の可能性がある、……つまり」
「学ぶことをやめなければ無限の可能性を持つ」
師匠が横やりを繰り出す、不満そうにパチュリーさんは師匠をみるが、笑みで返す。
先ほどのレミリアさんとの会話をいまだに根に持ち、ここで返すとは……意味あるのだろうか。
喋り続けたためか、ケホッとパチュリーが咳をする。
「小悪魔――」
「それには及びません!」
ババァーンッと現れる美鈴さんと――銀髪の少女。
震えながらもお盆を持ち、机へと到着し、ティーカップを置く。
「あら、ありがとう」
メイド服をきた彼女は、おそらく俺よりも少し年上であろう。
少し嬉しそうに美鈴さんの近くに戻ると、美鈴さんは少女の頭を軽くなでる。
そして少女はこちらへと礼をする。
「先ほどいった咲夜という少女か」
「はい、恐らくパチュリー様は何か話されると思い紅茶をお持ちいたしました、後は咲夜ちゃんと歳が近い人と友達になれればなーと思いまして」
「あら、美鈴にしては気が利くじゃない」
「これでもメイド長ですから、……まぁ咲夜ちゃんのほうが掃除は丁寧で速いんですけどね」
大きく胸を張った後に落ち込み始める、感情の起伏が激しい人だ。
「そんなことないよ、美鈴はとてもすごいよ!」
「ほほう、美鈴のどこがすごいんだ?」
「えっえっと、紅茶は……最近私のほうがおいしいし、つ、強いよ!とっても強いよ!」
「メイドに強さの有無は必要なのか?」
師匠はドSである、若干大人げない。
フォローするしかないと慌てる少女を見る。
「す、すっげー!強いメイドってすげぇかっこいい!」
「う、うんかっこいい!」
「美鈴さんかっけぇ!」
「美鈴はかっこいい!」
「あ、ありがとね……」
美鈴さんは苦笑いで礼を言う。
というより、この人のすごさは師匠は十分わかっている筈だろうに。
師事にきたのになにをやっているのだろうか俺は、と思っていると、視線を感じる。
銀髪の髪がさらりと揺れて、大きな蒼い瞳がこちらを射抜いた。
「……十六夜咲夜、です」
「あ、上白沢聖です、こっちが」
「博麗霊夢よ」
腕を汲みつつ、言葉を交わす姉さん。
あまり人とかかわる形ではないが、……まぁ、いいか。
「そういえば聖くん……でいいですよね?は私とパチュリー様の弟子になるんですよね?」
「あ、はい」
「聖くんは気と魔力を扱えますか?」
「……気を少々」
「ではパチュリー様は多く時間をとってください」
「ええ、時間制限とかはあるのかしら」
「半年だ」
時間が停止したように固まった。
「……修行はいつから?」
「……半年以上前から」
「霊力の熟練具合がかなり高いわね」
「……いや、うん」
「ま、かなり急ピッチになるわね、二科目だと」
……師匠ェ……