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〜マーリンの涙と白蓮の魔女〜  作者: シエロ


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Around

翌日。アウラの弟子となったトロイは早速、魔法使いの資格を得るために特訓することになった。

 時刻は十二時三十六分。アウラが部屋から持ってきた振り子が印象的な古時計が置かれ、人が三人は入れるであろう傘が日除けのために差されている。


「はぁ…はぁ…はぁ…。もう無理…走れない…。ヒッ!」


 ヘロヘロのトロイの足元に、地面に刺さった小さな石ころ。飛んできた方向には、山のように積んだ石ころの隣でビーチチェアに座り、優雅に寛ぐアウラの姿が。


「どうしたー?まだ三周残ってるぞー?」


 アウラはそう言うと親指に石ころを乗せ、コイントスのように飛ばした。右手の親指からは、微かに緑がかった魔力の粉が数粒散り、石ころに風の魔法を施しているのが見てとれる。

 放たれた石ころはトロイの頬に掠り傷を付け、森の奥へと消えていった。


「クソがあああああ!!!」


 早朝。トロイに言い渡された最初の特訓内容は、怯者(きょうしゃ)の森を走って十周することだった。

 スタート地点にはアウラが時計と共に待ち受けているし、アウラから見えない大部分はアウラが召喚した薄緑色の小鳥が着いて回る。首に小さな黄色い宝石を着けたオウムのような小鳥は、トロイが走るのを止めると鳴き始める。アウラから説明は無いものの、魔法で呼び出した小鳥が鳴くのには、なにか意味があるのだろう。


 ちくしょう…。三年分を半年でこなすのはキツいと分かってはいたが…。まさか最初の特訓が走り込みとは思わなかった!こんなに走ったの初めてだ…。これじゃ特訓より修行だな…。はぁ…はぁ…。あと…三周……。クソが。アウラの鳥さえ居なけりゃ少しぐらいサボれるってのに。


「うおっ!」


 トロイは石につまずき、そのまま森へ転げてしまった。


「痛ってぇ…。おい!鳥野郎!これはサボりじゃねぇからな!ピーピー鳴くんじゃ…あれ?」


 鳥が鳴かない…?さっきまで止まろうとするだけでピーピー鳴いてたのに。なんでだ…?


「まぁ…いいか。これで少し休めるぜ。へっへっへ。ん?」


 トロイがニヤついた途端、何か硬いもの同士が当たる音が聞こえる。


「なんだ?何かいるのか?」


 トロイはゆっくり立ち上がり、音の方へと歩いて行く。

 昼間の森は生物(クリーチャー)の動きが活発になる。それに伴い、魔物(モンスター)も狩りに出るため、森の至る所で戦闘が繰り広げられる。トロイが二度も死にかけた夜の森とは違い、日中の彼らが生存競争に忙しいのは有名だ。

 音のする場所へ辿り着いたトロイは身を潜め、茂みの影から観察する。


 あれは…?キツネか?真っ白で綺麗だけど…。なんか不自然だな。


 トロイが見つけたキツネ?は何かを威嚇している。


 あっちにいるのは鞭鼠(ムチネズミ)だな。それも三体。縄張り争いか?


 鞭鼠(ムチネズミ)の一体が長い尻尾を振るい、真っ白のキツネ?は後ろへ跳ぶ。キツネ?の剥き出しの歯が、(ねずみ)に対する敵意を感じさせた。


 あの白いの、キツネにしてはデカイな。魔物(モンスター)なのか?にしては少し、お腹が出ているような…。


 すると突然、キツネ?は顔を上にあげ、口を大きく開けた。


 何するんだ?あのキツネ…。


 風に乗った青白い粒が、キツネ?が開いた口に集まり、塊を作り始める。

 それを見た三匹の(ねずみ)は焦ったのか、皆一斉に襲いかかる。


「危ない!」


 トロイはつい、声を出してしまった。が、キツネ?にそんな心配は必要無かった。

 キツネ?は青白い塊を勢いよく噛み、歯の隙間から白い粉が吹き漏れた。(ねずみ)に向かって叫ぶように再び口を開けたときには、吹き荒れる凍えるように冷たい風が、足元を少しばかり凍りつかせた。

 飛びかかった三匹の鞭鼠(ムチネズミ)は空中で氷漬けにされ、コトン。と地面に落ち、風に当たった木々には氷が出来ていた。


「まじかよ…。」


 息を切らしているのか、目の前に落ちている氷漬けの(ねずみ)に興奮しているのか。荒く白い息を吐くキツネ?がトロイの気配に気付き、目を向ける。


 ヤバい!見つかった!!!


 トロイは急いで振り向き、全速力で来た道を走り抜けた。


「はぁ。はぁ。追ってきてはないみたいだな。あぶねぇ。」


「ぴぃ!ぴぃ!」


「あー!もう!なんだよ!さっきまで静かだったじゃねぇかクソが!」


 アウラの小鳥が鳴き始め、仕方なく外周を再開するトロイ。


 あのキツネ…綺麗だったな。それにあれ、魔法だよな。あんなのもいるのか。…ていうかどれぐらい森にいたんだ!?ヤバい!もうすぐアウラが見えてくる!!どうしよどうしよどうしよどうしよ……。って焦ることないか。何か言われたら転んだって言えばいいんだもんな。そうだよな。隠すことねぇよな。まぁ、聞かれるまでは黙っとくけど。


「はぁ。はぁ。はぁ。」


  アウラはストローを挿したワイングラスで、赤い液体を回しながらトロイを眺めている。


 見えてきた…。あのクソババア。何飲んでやがる。俺にもよこせってんだ。


「トローイ。」


 ギクッ!


「あと二周だ〜。頑張れ〜。ちゅうちゅう…。」


 あのクソババア…!


「くそがあああああああああ!!!」


 時刻は十三時五十二分。トロイの怯者(きょうしゃ)の森マラソンは続いた。

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