女装と男装(1)
「ねぇ、これ誰か着ない……?」
とある日。
聖女邸で予定があると言うシャーロット以外の皆で茶会をしていた時だった。
シャーロットが帰って来たと通達は来なかったが、いつの間にか帰って来ていたのだろう。最近知ったが、シャーロットは城下街に行き、聖女として服のデザイナーを目指す一人の少女として服屋を一人で開いているらしい。聖女ということもあり、店内はそれなりに豪華だし、店も大きい。そして更に服の質もセンスも良いということで、一人でここまでこなせるなんて、とシャーロットを尊敬する者も出て来ていた。当の本人は、嫌そうな顔をしていたが。
(この服………、男性用の服と、女性用のドレスね)
上品でシンプルなドレスと、令息が社交界で着ている服だった。
二つの服を『着ない?』と三人に見せて来たが、多分女性用の服を指しているのだろう。
「着せ替え人形になるのなら、喜んで。そう言うの結構好きなんです」
「いや、ルーリアちゃん? 多分、貴女が思ってるのと違う方よ」
笑顔で言えば、シェリルーライヤが苦笑して言った。ルーリアが思っているのと違う方、と言うことは、男性用のことだろうか。
「大丈夫よ〜。ルーリアちゃん、胸を隠せば美男子だわ〜」
穏やかにアレクサンドラが言う。彼女らが言っていることは、女性用のドレスではなく男性用の服だろう。
胸を隠せば、という言葉に少しだけ頬を染め、ルーリアは頷いた。
頷いたということはつまり、男装して良いということだ。
「本当に⁉︎ 良いの⁉︎」
「は、はい」
珍しく興奮気味なシャーロットに戸惑いつつ、もう一度頷いた。「え、ありがと」と未だ興奮が収まっていなさそうなシャーロットに、シェリルーライヤがそんなに痛くない拳骨を落とす。
「うわっ、何?」
「ルーリアが戸惑ってる」
「うるさい。………ごめん」
「ふふ。大丈夫」
こうして、ルーリアの男装が決まったのだった。




