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58話 無事を確かめたら

今回から、ルーリア視点に戻りますよ〜!

 大広間にて、ルーリアはロドレームと別れた後に王城の地下にある牢獄に向かった。ロドレームは『父上のところに行って来るよ』と言っていたので、謁見の間に居る皇帝に、今頃謁見していることだろう。ルーリアは彼に行く場所を教えなかったが、行くところがありますとだけは言っておいた。

 螺旋階段を下る。カツカツと、ルーリアが段を踏んでいくに連れて鉄がそう響く。


(お姉様とお母様、無事かしら………)


 螺旋階段を下れば、その目の前には水晶がある。暗闇のため、水晶の透明さは少し眩しい。ルーリアは(てのひら)を前に出し、聖魔法でほんのりと光る淡い光を出す。少しだけ暖かいルーリアが作り出した灯りは、彼女に安心感を与えてくれた。


「お姉様、お母様」

「っ! ルーリア! あんた………!」

「えっ、ちょっ。ルーリア? どうして、こんなとこに」


 螺旋階段を下りて右に行けば、牢獄がある。神秘的な水晶のある部屋の隣に牢獄があるのは、水晶は監視カメラの役割も果たしているからだろう。母であるギュアカーラはほぼ土と言って良い床を力の入らない手で出来るだけ大きな音が出るように叩き、姉であるメティーチェイアは先日和解をしたからか、絶対に来ないと思っていたからか、ルーリアが来ていることにポカンと信じられないと言うような顔をしていた。


「先日ぶり、ですね。お姉様」

「え、えぇ………ルーリア。元気にしてた?」

「はい。もっちろんっ」


 大輪の花が咲くような笑みを浮かべ、メティーチェイアの問い掛けに答えた。ギュアカーラはそれを不思議に思わず、否、不思議に思う余裕もなく、ルーリアに向かって叫ぶ。


「ルーリア! お前、どうしてそんな!」

「お母様。お久しぶりです」


 真摯に向き合おうと、ルーリアから微笑みが消え失せる。笑っているばかりのルーリアしかギュアカーラは見ていないので、一瞬ギュアカーラの身体が「っ」と硬直する。


「あんた、罪悪感ってものがないのかしら‼︎」

「罪悪感………?」


 その言葉をそのままギュアカーラに返したい。

 だから、ルーリアは決めた——。


(———今回だけは、私は悪女よ)


 過去のメティーチェイアのような、鞭で叩いてストレス発散を行う悪女ではなく、言葉で相手が間違っているところを直し、そして精神を抉る発言をする。決して暴力的なことはしない。ルーリアは深呼吸をして、悪女になる覚悟を決める。


「あらあら、お母様。罪悪感? そんなものなんてありませんわよ」

「は?」


 普段のルーリアなら絶対に使わない言葉遣いで、ギュアカーラに反論してゆく。聖女邸でメティーチェイアに反論した『お礼』という遠回しの反論ではない。もう地震のせいで荒れ果てているであろう自室の書斎にあった、悪女。それを演じ、心そのものも悪女にする。


「そもそも、数々の無礼を働いたのは貴女ではなくて? 聖女の身体を鞭で打ち、暴言を言った。あぁ、()()()()()()から聞いたのですけれど———」


 意地の悪い笑みを浮かべ、そこで言葉を区切り、言う。


「私の愛する皇太子様を、侮辱したらしいじゃない?」

「——ひっ……!」


 その悪女らしい笑みを引っ込めて、瞳に『許さない』と鋭い光が灯る。自分でも思った以上に威圧感のある、低い声が出た。ルーリアが出せる限界を貫いたほどの低い声。


「まぁ。その反応だと、図星みたい」

「あ、あんたに何が分かるの!」

「分かりますわ」


 地獄というほどの鞭打ちを何時間もの間に繰り広げられ、嘲笑された。ルーリアが歩み寄ろうとしてもギュアカーラは反省しなかっただろう。メティーチェイアは自ずと反省をし、夢の中でルーリアに謝ってくれた。

 だが、ギュアカーラはどうだろう。


「お母様。私に謝る気は?」

「はぁ? 謝るなんて、馬鹿げたことやんないわよ!」

「謝ることは馬鹿げたことじゃない」


 心の奥底で哀れに思っていた自分の母。謝る気もない彼女が、義理であっても母親ということが嫌と思う。虫唾が走る、まではいかない。だが、自分が犯した罪。その重さを分かって欲しい。


「残念。お母様、貴女とも和解が出来たら良かったわね」


 何か言いたそうな義母を無視して、メティーチェイアに「バイバイ、お姉様」と先程の悪女っぷりが嘘のように明るい声と表情で言う。その後に、ルーリアは満足したとばかりに牢獄を出た。


 〜〜*〜〜*〜〜


 牢獄を後にして水晶のある暗闇の部屋に、聖魔法の灯りを掌に集めながら行けば、そこには人がいた。


「ロドレーム様? どうして。えっ?」

「ルーリア」


 大切そうに水晶に触れていた彼はルーリアのもとに走って来て、甘く微笑みながらギュッと抱き締める。顔が火照ってしまっているのは暗闇のお陰で目立たなそうだ。

 やっと身体が離れ、ルーリアは恐る恐る手を挙げてロドレームに問い掛けた。


「あのぉ……もしかして………聞いてました?」

「うん、もちろん。とっても良い演技だったよ。流石、俺の自慢」

「っ………うぅ……、お忘れくださいよ?」


 両手で顔を覆い懇願すると、「無理だね」という答えが返って来た。


「嘘………」

「ふふ、嘘じゃない。……本当に、格好良かったよ」


 また抱き締められ、次は触れるだけのキスを落とされた。

 ルーリアはそのまま、落ち着く感覚を逃したくなくて、ゆったりと目を閉じた。


「あっ、そうだ」

「?」


 口付けが離れ、思い出したように言うロドレームにルーリアは首を傾げる。


「『私の愛する皇太子様』と言ってくれたこと、めっちゃ嬉しかったよ」

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ‼︎」

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