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57話 次期皇帝の判断【ロドレーム・ココノア・フィンシーカ】

 地震のため、扉を守っている兵はまだ居ない。だが謁見の間に入室すれば義務というばかりにロドレームの父、皇帝が玉座に座っていた。

 玉座も倒れた形跡があり、元々はあったシャンデリアは落下したのか撤去されている。壁や床も、ボロボロだ。それほどに大きな地震だったのだと、それが告げている。


「………父上。っ、相談、があります」

「うむ、そうか。地震のことか?」

「はい」


 己の迷っていることについて。前は皇帝である父や皇妃である母に相談するなど、とんでもないことだと思っていたが、他人に相談するという小さく、しかしとても大切なことをルーリアが教えてくれた。彼女が与えてくれた勇気を振り絞って、ロドレームは口を開く。


「とても小さいことなんです。それでも、良いですか」

「息子の相談は初めてだ。喜んで受けよう」


 微笑みながら皇帝は言った。今、言われた言葉に涙腺(るいせん)が刺激されたが、ロドレームはそれを堪えて僅かに震える声で言う。勇気を出して良かったと思った。


「迷っているのです。優先、すべきもの、ことを」

「ふむ……何と、何をだ?」

「ルーリア……特別に大切な人か………国の復興か」


 これはロドレームにとって、とても悩んでいたことだ。この地震が起きて、先程ルーリアはロドレームの自室で刺さったシャンデリアの破片を足裏から抜いた。あの時、どうして彼女を止められなかったのだろう。あまり気に病まないでと、数少ない信頼できる人たちから言われていた。もちろん、ルーリアからも。


「そう思う出来事があったのだな?」


 全て先程のルーリアの発言と行動だ。

 己の足に刺さった尖った破片を力尽くで抜き、ロドレームが大広間に行った時には国民の治療をしていた。気に病まないよう、ポジティブに考えているつもりだったが、それでも不安は心の隅からジワジワと広がっていくモノ。


「ルーリアは自分を傷付け、それでも国民の怪我を治療しようとする」

「そうか………」

「…………」

(自分の怪我はもう治したからって、自分の中で完結してるんだ)


 あの時、本当はロドレームに頼って欲しかった。『痛いです。お医者様を呼んでくれませんか?』と、頼って欲しかった。医者を呼ぶくらいはロドレームだって出来る。その医者が来るまでの間、意識が痛みに集中することのないように話して相手を楽しませることだって出来る。なのにどうして、彼女はあの時に自分で破片を抜いてしまったのだろうか。


(本当に、ルーリアの思ってる以上に俺は心配性なんだ)


 特に、好きな人のことになると。

 そう自嘲気味に笑っている時、皇帝が玉座から立ち上がり、ロドレームの肩にポンっと左手を乗せた。普通ならば何か特別なことがない限り皇帝が玉座を立つのは良くないことだ。だが、今のロドレームはそれを咎めることはしなかった。


「ルーリア嬢を守りたい。それと、国を早く復興して皆を安心させてあげたい」

「………………っ。そう、です。父上」


 もう本当にその通りのため、少しだけ返事に時間が掛かってしまった。


「皇帝としては国の復興を私と共に行ってもらいたい」

「…………」

「だが、父親としてはロドが大切な人を守っている姿も見てみたいのだ」


 ニヤッと意地の悪い笑みを見せる皇帝を見て、ロドレームは呆気に取られる。

 そして、皇帝は豪華な服装のせいで目立っていないポケットに手を突っ込む。突然の行動にロドレームはどうしたのだろうと玉座を立ち己の前に居る皇帝に向かって思った。


「これ、覚えてるか?」


 皇帝が見せたそれは、子供用に作られた玩具(オモチャ)の王冠だった。そして、覚えているかと聞かれてロドレームは即座に頷いた。


(これは、俺が子供の頃使っていた玩具だ)


 ロドレームが呆気に取られているうちに、皇帝は思い返すように言う。


「よく、お前はこの玩具で遊んでいたなぁ。『いつか俺も立派な国王になるんだ』って言いながら、この玩具を被っていた」

「やめてください父上。恥ずかしいですよ………」


 真っ赤にした顔を、ロドレームは片手で覆う。それを微笑ましく二秒間見守り、皇帝は口を開いた。


「私にとっては忘れたくない思い出だ。…………私は、お前の両方の姿を見てみたい。大切な者を守る姿と、国を復興するその姿を見せてくれ」

「両方………」


 言葉するのは簡単だが、行動に移すとなると思ってよりも難しい。だが、皇帝はそれを百も承知で言っているのだろう。ロドレームならば、皇太子であって己の息子であるロドレームならば、両方とも同時に行えると。

 気付けば、皇帝はロドレームの頭に玩具の王冠を被せていた。ロドレームはその王冠を取らない。逆に少しだけ微笑んだ。


「………まぁ、それも俺の成長のためですよね」

「あぁ」


 ルーリアを護り、国の復興を父と行う。

 それが次期皇帝の判断であり、覚悟だった。

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