55話 新・聖女ルーリアです
ロドレームの自室を退室して大広間に行くと、そこには先輩聖女や騎士、メイドたちが避難してきた帝国民に布団などを渡しているところだった。
「ルーリアちゃん、怪我はない〜⁉︎」
「………ねぇ、ロドレーム殿下とは大丈夫?」
「目覚めたの⁉︎ よ、かった〜……」
シェリルーライヤとアレクサンドラは素直に怪我の確認をしてくれて、シャーロットはルーリアがロドレームと共に来なかったのを不審に思ったのか心身を大丈夫か聞いてくれた。
確かに、これが原因でロドレームと喧嘩してしまったらと不安で仕方ない。
(でも私は、もう守られてばかりの弱い人じゃない)
そう。夢の中でだが、ルーリアは姉と怯まないで仲直り出来るようになった。ロドレームにも告白を出来るほどの勇気を持てるようになった。
普通に強くなっていったのだ、ルーリアは。
「アレクサンドラ」
「っ、な、何かしら〜?」
「こんな状況下で行うのもアレだけれど、私のお披露目をしてくださいませんか?」
「え…………?」
想定外のお願いだったのか、アレクサンドラは呆然とする。
ルーリアは聞いていた二人に「お二人は、帝国民の皆様に毛布や飲食を配ってください」と恐れ多いと思いながらも指示を出す。シャーロットとシェリルーライヤはそれに頷き従ってくれて、アレクサンドラに説明出来る体勢が整った。
「私は、聖属性で皆の魔法を治せます」
「えぇ。それは殿下もあの子達も知っているわ」
「なので皆様の怪我を治せます。ですが、ロドレーム様の心配を無視してしまいました………ロドレーム様も、同じ心情だっただろうに……」
本当に傷付く表情を見せるルーリアに、アレクサンドラは「ルーリアちゃん〜……」と心配そうに声を掛けてくれた。
(でも、何故かしら。それを謝りたくないと思う)
それは自分のしたことは少しでも正しいと思っているからだ。自分の心に嘘はつかない、そう決めているからこそ、ルーリアは恩返しを出来たと思っていた。
だが、恩返しはまだこれからなのだ。
「私は自分の心に嘘はつかないと決めているんです。それが出来てこそ、一人前の聖女だと思いませんか?」
いくら努力して様々な試練を積み重ねていっても、自分の心を信じないで、自分に嘘をついてしまったら実力はあっても帝国民からの「この人なら」という信頼を勝ち取れない。
「…………強くなったのね〜、ルーリアちゃん」
「はいっ」
穏やかに微笑んで、そう言うアレクサンドラは「良いわ」と頷いた。
「じゃあ、やりましょうか。覚悟はよろしくて〜?」
「はい! ありがとうございます!」
ロドレームはまだ自室にいるのだろうか。それとも、もう自室を出てこちらに向かっているのだろうか。今のルーリアはそんなことを考えるほどに心の余裕が生まれていた。
「皆様! 少しお早いですが、仮のお披露目を行います〜!」
アレクサンドラのよく通る声に、大広間にいる全員がザワザワとした。
こんな時になんで、という疑問を持つ者。少しでも不安から興味を逸らしたくて耳を傾ける者。たくさんだ。
「数ヶ月前に、新しい聖女が誕生しました。どうぞ、ルーリア」
「はい。ありがとう、アレクサンドラ」
アレクサンドラの後ろに控えていたルーリアは、彼女に促され前に出る。城下街の皆は目を輝かせ、貴族は誰だろうという顔をしている。
ルーリアは、足元を見ないで前を向き、堂々と喋った。
「恐れ多くも、聖女として国に仕えることとなりました。新・聖女、ルーリア・コキリ・セロライハラ。セロライハラ侯爵家の次女です」
「彼女は聖魔法という治癒魔法を使えます。これは世界でまだ見たことのなかった魔法ですので、皆様驚かれるかもしれません〜。ですが、大丈夫です。ルーリアの実力と努力は本物ですわ〜」
アレクサンドラのおっとりとした口調と共に、歓声が響いた。




