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33話 愛する人との、会話

 目を見開く。

 そこには、己の腕の中に収まってふにゃっとした笑みの、ルーリアがいた。それは先程から信じられないくらいに噛み締めていたことだ。

 だか、今のルーリアの言葉はどういうことだろう。


「……………」


 優秀な頭が理解してしまい、ロドレームはブワッという効果音がつきそうなくらいに顔を赤く染める。余裕のある男という表面上の姿が台無しだ。


『赤ちゃんが欲しいですね』


「欲しい()()」ではなく、「欲しい()()()」だ。その言葉には、ロドレームも欲しいと感じているみたいに聞こえる。


(いやまぁ、その通りなんだが)


 ロドレームの心の声は、怖いくらいに続く。


(嬉しい、嬉し過ぎるんだが。赤ちゃんが欲しいということは、結婚して初夜を迎えて、無事出産して、幸せな家庭を築きたいということだろうか。それは……とても良いな。玩具(オモチャ)を与えて、それをぶんぶん振っている俺とルーリアの赤ちゃ……いや、玩具をルーリアが持って、それで赤ちゃんを宥めている光景も良い……なんなら二人でお世話したい! あぁ、後は——)


「あ、あの〜……ロドレーム様?」


 自分の腕の中に収まっているルーリアを見て可愛い、可愛いと何度も唱えつつも、ロドレームは平静を装う。


「え? あ、ごめんね。想像してたんだ」

「赤ちゃんをですか?」

「ううん、違うよ」

(本当はそうだが、仕返しをしてみるか)


 頭の上に疑問符を浮かべているルーリアをクスクスと笑った後、ロドレームは悪戯っ子ぽく目を細めた。


「俺とルーリアの………初夜のことを」

「っ!?!?!?」

「ふふ」

(やば……首筋まで真っ赤だ)


 直ぐに顔を赤くするクセに、揶揄う時はやるルーリアを、愛しく思う。(もっと)も、揶揄われた時には今のように仕返しをするのだが。


「む〜〜」


 頬をぷく〜と膨らませるルーリアを見て、可愛らしい怒り方をするな、とロドレームは薄ら頬を染めて、甘い視線をルーリアに向ける。

 膨らませた頬がなおり、口を開いた。


「ええとその……今更ですが訪問してくださり、ありがとうございます。殿()()

「え」


 思わず、抱き締めていた腕を解く。

 目を細めて愛おしい視線を向けて来るルーリアだが、その瞳の奥には揶揄いという感情は籠っていた。

 やられた、ロドレームはそう思った。これは、仕返しの仕返しだろう。ロドレームが甘い言葉で仕返しをすると、反撃してルーリアは『殿下』と言いロドレームを焦らせる作戦なのだ。

 無論、そんなの焦っているロドレームは気付かないもので。


「ちょ、ルーリア⁉︎ え?『殿下』って……『ロドレーム』じゃないのかい? 殿下はやめてほしい……。お願い……」

「クスクス、仕返しですよ。私を揶揄わないでくださいね」

「君が最初にやったんだろう? 赤ちゃんが欲しいと」

「あら、そうでしたわね」

「…………」


 思わず、半目になってしまう。それでも羞恥でロドレームの頬が染まっているので、ルーリアが落ち込むことなどない。むしろ、嬉しいという感情が湧く。


「もしも私たちに赤ちゃんが出来たら、その時は宜しくお願いします。……私も、赤ちゃんも」

「あぁ、勿論だよ——俺の奥さん」

「っ……はい! 私の旦那様」


 ふにゃっと微笑むルーリアを、ロドレームはまた抱き締める。


(可愛い……俺とルーリアの赤ちゃんか……絶対、産まれたら大事にしよう。だから——絶対に)


 決意を固める。ロドレームが今浮かべている表情は、抱き締めているのでルーリアには見えないはずだ。


(絶対に、君の()()()()()に、貴女の心の傷をこれ以上深くしない)


 彼は、視線だけで人を殺めるような、そんな恐怖を与える目をしていた。

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