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32話 訪問者である皇太子

(私と殿下の婚約関係で………って、嬉しい)


 回廊を渡り大広間に向かう最中、ルーリアの頭の中はロドレームで埋め尽くされていた。自分とロドレームの婚約関係というのは絶対に、ルーリアを婚約者にしたいということだろう。

 それ以外、考えられない。

 今まで婚約者ではなかったので婚約破棄をしようにも、それは頭のおかしい皇太子ということになる。そもそも婚約者じゃないのだから。


「ふんふん、ふふ〜ん♪」

(嬉しい……そして、少し恥ずかしい)


 でも、嬉しいの方が勝っている。

『血に塗れたルーリア』と言われ続け、十三年。そして四日前にはロドレームに告白し、良い意味であろうことか彼と口付けをした。あれはもう事故みたいなものだと済ませているが、思い出すとやはり慣れなくて顔が火照る。

 頭を左右に振り、それを振り払った後、大広間に続く大きな扉の前に着いた。


「…………」

(お母様、居ますかーー?)


 そう、天上にいるであろう女神である母に尋ねながら大きな扉を開くと、そこには女神像があった。だが、いつもの光景では……なかった。


(ロドレーム、殿下……?)


 手を己の胸に添えて一礼しているロドレームが、そこにはいた。

 女神像に向かって礼をしていたので、直ぐにこちらを向くはずだ。


「ロドレーム、でんか」

「………」


 ロドレームが、こちら振り返る。

 大広間には、目を見開きながら見詰め合う、二人の姿があった。


 〜〜***〜〜


 落ち着くためにステラエラーと会話しようと思ったのに、こんなことがあって良いのだろうか。お母様は、本当に娘の恋を応援している。応援し過ぎて困ってしまうが。


(お母様〜………今回は、少し悪戯が過ぎます……)


 だって、ロドレームがここにもう来たという報せは聞いていない。それは、ロドレームが「まだ大丈夫」的なことを言ったからだろう。侍女たちも戸惑いながらそれに従ったに違いない。


「ルーリア、嬢……?」

「………ロドレーム殿下……」


 お互いの名前を呼びながら目を見開く様は、一言で言うと美しいだった。

 先に我に返ったのは、ルーリアだ。


「何故、ここに殿下が……?」

「ルーリア嬢……」


 ロドレームは、直ぐに頬を染めて決意したような表情になる。

 どうしたのだろうとも思ったが、それを尋ねるよりも先にロドレームが動いた。ルーリアの前まで行き、跪くのだ。そして、白色の小さな箱から指輪を取り出した。


「え……?」

「どうか、この指輪を嵌めてくれないだろうか?」

「……っ!」


 こくこくと何度も頷くと、明らかにロドレームの表情が明るくなった。

 可愛いと思ってしまうのは仕方のないこと。


(そういえば……ロドレーム殿下、顔に出過ぎな気がする……)


 もしかして、私の前だけだったり?

 そんな欲張りな考えが出てきて、ルーリアは首を横に振る。


「いいえ、そんな訳ないわよね……」

「? ルーリア嬢?」

「あ、……その………」

「どうしたの? 言ってみて?」


 顔を近付けて心配そうに見てくる。頬がゆっくりと薄桃色に染まるが、そのことは無視して躊躇いながらも白状する。


「その……ロドレーム殿下が思ってることが顔に出るのは、私の前だけなのかなと……おもい、まし、て……。あぁ! ごめんなさい! 忘れてください……!」

「……………」


 いつの間にかルーリアに顔を近付けていないロドレームは、驚き目を見開いた。が、それも束の間で直ぐにクスクスと口を抑えて笑っているではないか。


「え、あ、ちょっ。もうっ、ロドレーム殿下ぁ……」

「ごめんね。……はぁ、可愛い……」

「きゃっ……——っ!」


 ギュッという効果音が似合うくらいにルーリアを抱き締めて、ロドレームは満足そうに笑い頬を染めた。そしてやっと、先程のルーリアの問いに答える。


「………そうだね、ルーリア嬢の前だけだよ。俺が自分で居られるのは」

「………………。ふふっ、嬉しいです」


 ロドレームに抱き締められているにもかかわらず本当に嬉しそうに言うルーリアの声を聞いて、ロドレームはもっと抱き締める腕の力を強くした。

 それでも苦しくならないのが不思議だ。


「ルーリア、と……呼んでも良い?」

「っ!!!!!」


 その言葉は、ルーリアの心臓を大きく揺さぶった。

 ロドレームの胸板に押し付けられる形でも恥ずかしいのに、耳元で囁かれるように、そして消えそうな声で尋ねられたら、こんなの首筋まで赤くなるに決まってる。


「はい、良いですよ……ロドレーム様」

「っ……ありがとう。ははっ、首筋まで真っ赤」


 ルーリアの肩口に顔を埋めているロドレームには、丁度ルーリアの首筋が見えてしまうのだ。見ないで欲しいと、ルーリアは思ったが、決して嫌ではなかった。


「い、いわないでください……」

(これからは、虐げられるのではなくて、ずっと揶揄(からか)われそう……)


 だが、嫌な気分ではない。むしろもっと揶揄って欲しいという欲望ばかり。だって、それ頬が、時には首筋が染まってしまいそうなほどに恥ずかしい言葉で、揶揄われるだけだから。


 でも、何かしら仕返しはしたいと思ってしまうのがルーリアで。


「ロドレーム様」

「? 何かな?『ルーリア』」


 嬢付けでなくなったことに嬉しく思い、頬を緩めながら言葉を紡ぐ。


「赤ちゃんが欲しいですね」

だ、大丈夫です! この先、R15もR18もないです!

ご心配なく……

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