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26話 女神との会話

「え………」


 今、女神はなんて言ったのだろう。

 ルーリアの疑問に答えるように、女神は微笑みながら口を開く。


『えぇ、貴女は私のこの世で一番大切な娘よ』

「で、でも私は、セロライハラ侯爵家の次女で……」


 言った途端、女神の表情が若干曇った。


『それは、貴女を少しでも女神の子供から遠ざけるためよ。女神である私の血がたくさん流れていたら、寿命なし……つまり、ずっと生きることになる。それは、人生を楽しもうとしても楽しめないでしょう? それに恋も、寿命がなかったら出来ても出来ない。だから、セロライハラの子供にしたんだけど……ごめんなさい、私はあの人たちの社交場での姿しか見ていなくて、ギュアカーラの子供にしてしまった。ずっと謝りたかったの。ごめんなさい、私の人を見る目がないせいで……』

「………」


 ルーリアは愕然とする。当たり前だ。そんな話、聞いたことがないから。女神は子供を産むのか、そしてその子供は女神の子じゃなくするために違う人間の子に表面上するとはどういうことか。聞きたいことがたくさんあるが、まずは頭を下げている女神に大丈夫と言うのが先だ。


「い、いえ! そんな……大丈夫ですから、頭を上げてください!」

『ありがとう』


 女神が顔を上げる。


『これからは、お母様と呼んでくれないかしら。敬語もなしで』

「は、はい! じゃなくて、うん、お母様」

『えぇ』


 ルーリアは、ふと思い付いたことを聞いてみる。


「あの……お母様の名前は何?」

『私の名前はステラエラーよ』

「ステラエラー……ステラエラーね。ありがとう」

『いいえ〜』


 雰囲気がアレクサンドラと似てると思ったことは、仕方ないだろう。

 そして暫しの沈黙が流れた。


 〜〜***〜〜


 やっとステラエラーが口を開き、ルーリアも下げていた面を上げる。


『ところで、ルーリア』

「うん? 何、お母様?」

『貴女……何か、悩みがあるんじゃない?』

「………!」


 目を見開くルーリアを見て、ステラエラーは『図星ね』と苦笑する。

 悩みは、ロドレームが自分のことを好きかという悩みだけ。だが、その悩みがこの上ないほどに辛い。


(ステラエラーお母様にだったら……)


「私ね……」


 ゆっくりと言葉を紡ぐ。


「ロドレーム殿下に、好きと告げたの」

『えぇ』


 ここまでは、ステラエラーは驚かなかった。実際には好きと告げる前に口付けをされたのだが、それをこれから話す。


「それで、口付けをされた……の。その後に抱き締められて、もう何が何だか分からなくて……っ」

『………』


 ステラエラーが目を見開いたのにも気付かずに、言葉を紡いでく。


「『ごめん、忘れて』って、言われてしまって……もしかして私、フラれたの? ……と。勿論、き、キスをされた時、私と同じ気持ちなのかなぁとも思った。だって、キスも、ハグもされたのよ? 期待、しちゃうじゃない。でも……ただ、人に好きと言われたことがなかったから、あんな風に感情的になって、その……しちゃったのかなって……」


 ステラエラーは、少し考えてから、口を開く。


『ルーリアは……』

「?」

『何故、ロドレームが好きと言われたことがなかったからと思ったの?』

「え……? あ……」


 ステラエラーは真剣な表情になり、ルーリアに言う。

 それは、母親の顔だった。


『ロドレームから言われていたのなら、分かる。けれど、ただ自分がそう思い込んでいただけなら、それは自分自身の気持ちを真っ直ぐ見ていないからよ』

「みて、ない……?」

『えぇ、そう。もしも、ロドレームから告白を断られた時に自分が爆発しないよう……自分を保っていられるように、言い聞かせていたんじゃないの?』


「……っ!」と図星なルーリアの頭を撫でながら、ステラエラーは尋ねる。


『本当は、どうなの?』

「本当は……」


 本当は?


「ロドレーム殿下が、好き……だから、キスもハグもしてくれて嬉しかった。けれど、もし、『ごめん』と言われるのではないかと思ったら、とても、怖かったっ。だから、自分の気持ちを折り曲げて、……だから私は決めつけて、自分が傷付かないための気持ちに無視をして……っ」


 決して泣いてはいないルーリアに、ステラエラーは相槌を打つ。その後に、ルーリアは言葉を区切り、苦笑しながら言う。


「ありがとう、少しだけ、スッキリしたわ」

『………泣いても、良いのよ?』

「いいえ……いいえ! 私は、ロドレーム殿下にだけ、甘えたいです!」


 ステラエラーは少しばかり困惑の表情を浮かべた後に、うっとりした表情で、眩しそうに、我が娘を見詰めた。


『本当に、貴女は自慢の娘だわ』

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