20話 ルーリアの反抗
宜しくお願いします。
ネオに外の声が聞こえるようにしてもらった。メティーチェイアの声量が限界を超えていて、少し掠れている。ルーリアはそんな姉を見て、嬉しさではなく恐怖に感情を支配された。
外の声が聞こえて来る。
『はぁ⁉︎ あの子が聖女? ふざけるのも大概にしなさい! 出来損ないで役立たずで、ブスなあんな奴が聖女なんかになれるわけないじゃない!』
ネオの魔法を使ってなので、祠の中からはエコーで聴こえるのが怖さをより強くする。恐怖で震えて、足がガクガク、ブルブルと震えている。そこに、シャーロットの声が響く。ルーリアに背中を向ける形でメティーチェイアに立ち向かっているため、表情は分からないが、きっと許さないと顔に出ているのだろう。
『おやめください、ルーリアの姉様! ルーリアは“ちゃんと選ばれて”聖女という立場に立ったのです! もう一度言いますから、よく聞いててください! ……おやめくださいッ! メティーチェイア様!』
シャーロットがそこまで声を上げるのは、この三日間で見たことがなかった。だが所詮はたったの三日。ルーリアが来る前に今ぐらいの声量まで、叫び声に近い声を上げたのだろうかとも思ったが、他の二人も驚愕に染めてシャーロットを見ているため、聖女になってからこれが初めてなのだろう。ルーリアは、自分のために声を荒げて、メティーチェイアに抗議の声を上げていると分かり、目が潤んで嬉しくなった。
「ありがとうございます、シャーロット……」
ルーリアは、小声でお礼を告げる。
だが、自分より身分が上の聖女に抗議の言葉の投げ掛けられても、メティーチェイアは大人しくしなかった。むしろ、苛立ちがもっと募った、とでも言おうか。メティーチェイアは舌打ちをした後に、声を荒げた。自分の方が身分が下ということも忘れて。
『ふざけないで! そもそも聖女ってのは実力のある奴らがなる立場でしょう⁉︎ そんな立場をルーリアが得られるはずがない! どうせこの国に優秀な人材が居なかったから、人数合わせとしてルーリアを聖女にしたんでしょう⁉︎ そんなのお見通しよ!』
『そんなことありません! ルーリアちゃんは——』
シェリルーライヤが説得を試みようと口を開くが、ルーリアは自分のこれまでを振り返っていた。
(確かに、私はまだ何も実績がない。けれど、三日前に聖女の立場を与えられた身としては、充分に楽しませてもらっている。私はこの聖属性と水属性の二属性で、フィンシーカ帝国の役に立ってみせる。ロドレーム殿下に、『聖女にして良かった』と言ってもらえるように。そして、この帝国の苦しんでいる平民の皆さん、これまで良くしてくれた、城下にいるレンやリフミさんたちに、ありがとうと言ってもらえるように。絶対に、聖女の役目を全うする! 決めたんだから!)
——だから絶対に、これまで自分を虐げてきた姉なんかに、負けはしない。
ルーリアはそんな想いを込めて、祠の外へ出た。
〜〜***〜〜
外に出ると、先程のエコーの声がはっきりとした声に変わっていた。だがそれも、迫力があってルーリアの左胸を、悪い意味でざわつかせる。だが、聖女三人が祠の入り口を囲む形でルーリアを守ってくれているので、少しは安心出来、足は震えなかった。
すると、シェリルーライヤが口を開いた。
「やめなさい! 貴女、私たちより身分が下よね? 身分が上の者には、“それ相応の態度を”と、習わなかったの?」
「うるさい! 良いから早く、ルーリアに会わせなさいよ!」
祠の中に視線を向ける予定だったのだろうが、ルーリアによって、その祠の入り口は塞がられている。そのため、メティーチェイアの視線はルーリアに向けられた。
「………あら? 丁度良いじゃない」
「っ‼︎」
ニタァと口角を上げるメティーチェイアを見て、ルーリアはゾッと鳥肌が立った。だが、それも束の間で真っ直ぐに、反抗的な目でメティーチェイアを見詰めた。
「何よ。あんたには、怯えている目が一番お似合いよ!」
「っ!」
メティーチェイアは、ルーリアの胸倉を掴み暴言を吐いたと思ったら、ルーリアを祠の中へ投げ入れた。姉という言葉は、空の彼方へ飛んでしまった。今まで以上に。
「グッ、ガハッ……!」
『『ルーリアちゃん!』』
『ルーリア!』
『ルーリア様!!』
「ツゥ……」
(皆さんに、随分と迷惑を掛けてしまっている……)
だが、姉に少しでも反抗出来て、嬉しかった。いつも家族の言いなりだったのに、反抗が出来て、喜びに駆られた。
(はぁ……私ひっどい。でも、鞭を打つのはやらないわ。たとえ私に妹がいたとしても、聖女が終わり婚約者が出来て、その間に子供が産まれたとしても。鞭打ちはしない)
いつも温厚なアレクサンドラが、声を荒げた。
『やめなさい、メティーチェイア様!』
『チッ。ぅるさい!』
メティーチェイアは、アレクサンドラが声を荒げたのが気に食わなかったのか、アレクサンドラに向けて手を振り上げた。
「………っ! これじゃっ、これじゃっ」
(早く、行かないと。私が、犠牲になれば………!)
ルーリアは、祠を出てメティーチェイアとアレクサンドラの間に入った。
ありがとうございました。




