12話 ルーリアの自室
宜しくお願いします。
ドレスには、桃色で白薔薇の装飾が施されている可憐で上品なドレスもあれば、深い赤色の胸元がすごいドレスもある。そして純白のドレスもあって迷ってしまうが、これは舞踏会用なのでまずは外出用、私服用と決めた方が良いだろう。
外出用は貴婦人が着ているような服が最初にあるが、まだルーリアは胸が凄いものは似合わないタイプのため、大人過ぎるのでもなと思ったのも本当だ。
だが逆に子供っぽ過ぎるのも避けたいような気もする。そもそも、ルーリアは服選びのセンスがゼロと言っても良いのだ。家族に虐げられボロボロの服しか着ていなかったため仕方のないことだが、服選びは誰かにお任せした方が良い。
(お任せ出来る人……か)
視線をチラッと椅子に座って談笑をしている三人に向ける。
任せる人は三人だけだ。見た目で言うとアレクサンドラだが、人は見た目で決め付けてはダメと言うし、服選びに疎い可能性だってある。本当は専門の人に聞くのが一番だが、今この場にドレス専門の者はいない。
「これ、良いと思う」
「キャンッ‼︎」
見ていた舞踏会用のドレスを見ていると、頁の上の方にある桃色と白薔薇のドレスを指差された。ルーリアの後ろからなので、子犬のような声を出してしまったのは許して欲しいことだ。ルーリアが後ろを向くとそこにはシャーロットが居た。それに期待を抱いたことは仕方ない。
(もしかしてシャーロット様、服を選ぶセンスがあるんじゃ……)
その予感は的中で、自分に似合いそうなドレスだとルーリアも思ってしまう。
「凄いですね、シャーロット様。服を選ぶセンス、ありますよ」
「……そんなことない。ただ、趣味、なだけで……」
「趣味?」
ルーリアが尋ねると、アレクサンドラがほわほわした雰囲気を纏いながら言う。
「シャシャちゃんね、聖女を引退したらデザイナーになりたいんですって〜」
「なっ……! バカぁ!」
「ふふふっ」
半ば涙目になっているシャーロットを、アレクサンドラは微笑んで受け流す。
そんなシャーロットに助け船を出すように、シェリルーライヤが片手をすっと上げた。どうしたのだろうと思っていると、シェリルーライヤはクスリとルーリアを見て笑った。
「そろそろ、ルーリアちゃんの自室に案内しない? 二人とも」
「あ、そうね。そうしましょう」
「……うん、分かった」
「自室………? もしかして、屋根裏部屋ですか?」
そう言うと、ルーリアの方を三人が驚愕に表情を染めながらバッと向く。
シェリルーライヤはルーリアを見て、わざと呆れながら言った。
「違うわよ。ルーリアちゃんの部屋は聖女の部屋が集まってる三階。その階にはアタシもアレクサンドラもシャーロットもいるから、困ったことがあるならいつでも来なさい」
「はい、分かりました。シェリルーライヤ様」
「あ、後シェリルーライヤ様っていうのはやめてね? シェリルーライヤと呼んで」
「ええと、シェリルーライヤ?」
首を傾げながら言うと、シェリルーライヤは満足気に頷いた。
その様子を見ていた二人も、ルーリアに話し掛ける。
「ルーリアちゃん! わたくしのこともアレクサンドラと呼んで?」
「……ルーリア、私のこともシャーロットって、呼んで」
「あ、はい! お二人とも」
そして、勢いがある二人をまた、シェリルーライヤが止めたのだった。
〜〜***〜〜
ルーリアの自室は、話通りこの聖女邸の最上階の三階。
四人で入室すると、そこには可愛らしい部屋があった。本当に、これが自分の部屋なのだろうか。そう思ってしまうほどに。
「わぁ……!」
「喜んでくれたみたいで良かった。どう? ルーリアのイメージに合わせてみたの」
「私の、イメージですか……?」
「うん。ルーリアちゃんって、アレクサンドラみたいにほわほわ〜ってしたイメージでもないし、シャーロットみたいに陰キャラなイメージでもないしで悩んだんだけど、最終的に、可愛らしいイメージが強かったから、こんな部屋にしてみたの」
シェリルーライヤの言葉に、ルーリアは目を見開く。
「私が、可愛らしい……?」
「え? それが何か? ルーリアちゃんは可愛いけど」
「……」
(可愛い、なんて、家族には言われたことなかった……)
アレクサンドラが抱きついてきた時もアレクサンドラが言っていたと思うが、あの時はルーリアは抱き締められた衝動で覚えていない。
ルーリアは、三人によって広い部屋中を案内された。
「ここがドレッサー。まだ空っぽだけど、どんどんドレスを入れてくつもりよ」
「ドレス……ありがとうございます!」
「いいえー」
シェリルーライヤの説明にルーリアが嬉しそうにお礼を述べると、ルーリアと同じく嬉しそうに微笑んでシェリルーライヤは答えてくれた。
「ここは書斎よ〜。聖女邸にも書斎はあるのだけど、一人で読みたいって時もあるでしょう? だから、みんなの部屋には必ず、書斎があるのよ〜」
「そうなのですね……ここは、どんな本があるのですか?」
「それはね〜〜」
アレクサンドラの答えを待つように、ルーリアはこくりと喉を鳴らす。
「数学や語学、聖女の役目が大雑把に。後……恋愛小説とかも!」
「……」
ふわっと微笑むアレクサンドラの後者を聞き、ルーリアは頬が熱くなった。
「……ここは、寝室。これからはここで寝て」
「え、良いのですか?」
「うん」
シャーロットの言葉に、ルーリアは温かな生活が待っているのだと、思わず泣きたくなってしまった。
浴場は皆で入るみたいで、ないみたいだ。
(四人で湯船に浸かったりするのって、とても楽しそう……)
ルーリアは、大浴場と聞かされたところで何をしたいか、考える。
(背中を流し合いしたり、湯船に浸かって………あっ……お風呂で躓いちゃったり、滑ったりしたら、頭を打ってしまって……)
だがそんな考えを振り払うように、頭を左右に振る。
(そうだ、皆さんの恋愛話とか聞きたいかも! まだお慕いしている方が居ないのなら、どういう人が好みか聞いても良いなぁ)
嬉しさと楽しさ、プラスのことを考えていくと、自分も気分が上昇する。そのことにルーリアは、私は少し変われたんだと、嬉しさがアップする。
だがシャーロットに衝撃的な言葉を言われたため、その思考も何処かに行った。
「あ、侍女を紹介するね」
「は、はい! って、侍女ですか?」
「うん」
侍女というのは、主人の身の回りの世話をし、主人を支えていく者。ルーリアは身の回りのことは自分で出来るし、支えなんて要らないと思っている。
(それに……赤黒い人を主人に、なんて、嫌でしょうし……)
だから断ろうと口を開いたが、言わせないとばかりにシェリルーライヤがパンパンと二回、手を叩くと、侍女が一人出てきた。
「この子はあんたの侍女の長。まぁ、所謂侍女長ね。この侍女長はノゾミさんよ。十八って若さだけど、侍女長なの。他にも侍女はいるんだけど……やってくにつれ、よくやってみると良いわ」
「は、はい……! 頑張ります」
「ルーリア様、よろしくお願いいたします。改めまして、侍女長のノゾミです」
「よ、宜しくお願いします。ノゾミさん」
(良かった……暴力とかは、やらなそう)
そのことにほっと安堵する。そのため、ルーリアは自身の足がずっと震えてばかりだったことは、気付いていなかった。それに気付いたアレクサンドラが「ソファに座りましょうか。ルーリアちゃん、疲れたでしょう?」とルーリアをソファへ誘導する。
ソファはふかふかで、居住まいを正すことが難しかった。
居住まいを正したら、直ぐに口を開く。
「良いのですか? 私だけが座っても」
「良いのよ。ルーリアちゃん、まずは足を鍛えなくちゃいけないけど……今は」
「ありがとうございます」
「えぇ」
そこからは、聖女の仕事ついて話してもらった。
説明はシェリルーライヤだ。
「聖女の仕事は二つ。まずは、前言った通り、祠に己の魔力を注ぐ。これは大丈夫ね? 後は、女神像に祈りを捧げることよ。この聖女邸の大広間には女神の像があって、そこの下に行って胸元で手を絡ませる。そして魔力を女神像に注ぐの。そして終わり。これは月一だから大丈夫よ」
「は、はい!」
ルーリアは緊張しながらも、力強い声音で言う。
「よ、宜しくお願いします……! これから、頑張ります」
「「「えぇ」」」
ありがとうございました。




