第一話 亡霊の目覚め
こんにちは。蒼雷です。
今日から久々に新シリーズをスタートさせます。
2025年4月。朝靄が残る東京湾に、異様な影が浮かび上がった。
巨大な艦影。鋼鉄の塊が水面を割り、ゆっくりと前進する。
そのシルエットは、現代の護衛艦とは明らかに異なっていた。
艦橋は低く、無骨な砲塔が甲板に並ぶ。
その甲板には、異様なまでに巨大な41cm砲がそびえている。
――戦艦「長門」。
20世紀前半、日本海軍の象徴として君臨した巨大戦艦が、80年の時を超え、突如として東京湾に出現したのだ。
無線は沈黙したまま。護衛艦「いずも」の艦橋では、数名の士官が信じられない光景を目の当たりにしていた。レーダーには映らない。AIS(船舶自動識別装置)にも記録がない。
しかし、あの鋼鉄の怪物は確かに目の前に存在していた。
「……信じられん。本物の“長門”か?」
艦長の村上一佐が呆然と呟く。
「そんな馬鹿な……。長門はとっくに1946年にビキニ環礁で沈んだはずだ」
副長が反論するが、目の前の事実は否定できない。
続いて、航空自衛隊の偵察機が撮影した映像が送られてきた。それを確認した村上は、さらに驚愕した。
「ちょっと待て……。『長門』だけじゃない」
画像には、巡洋艦「高雄」、駆逐艦「雪風」、さらには空母「赤城」と思しき艦影まで写っていた。
まるで、1944年の連合艦隊がそっくりそのまま現代に出現したかのようだった。
同じ頃、陸上自衛隊も異変を察知していた。
千葉県・館山駐屯地。防衛省からの緊急指令を受け、隊員たちは慌ただしく装備を整えていた。
「館山市の北東、木更津方面に大規模な未確認部隊が出現。装備は旧日本陸軍のものと酷似……」
報告を受けた隊員たちは、一瞬、冗談かと思った。しかし、次の報告で事態の深刻さを理解する。
「確認された戦車は『九七式中戦車』。歩兵の装備は三八式歩兵銃および九九式小銃。おそらく……大日本帝国陸軍の部隊だ」
管制室が静まり返る。
「……それはつまり、敵なのか?味方なのか?」
隊員の一人が呟く。誰も答えられなかった。
政府もまた、対応に追われていた。永田町では、内閣総理大臣・黒塚昭雄の下、緊急会議が開かれていた。
「信じがたい報告だが、すでに複数の地点で確認されている。どうやら我が国は、歴史上の軍隊と同じ時代に存在してしまったようだ」
閣僚たちが息をのむ。大沢幸紀防衛大臣が発言する。
「このままでは、衝突は避けられません。彼らがこちらを敵と見なした場合、本土での武力衝突が発生する可能性があります」
現実味のない話が、着々と現実になっていく。
その瞬間、千葉県・館山で最初の銃声が響いた――。
(第2話へ続く)
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