表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/70

「ごめん、ごめん。雑誌の取材が長引いちゃって」


 厨房の扉を開け、撮影用の真っ白いコックコートに身を包んだ広輝が現れる。閉店後の厨房で一人作業をしていた七星に、鏡の前で何度も練習したのではないかと思わせるような、完璧な笑顔を向けた。


「それで、新作デザートはどんな感じ?」

「お疲れ様。今ちょうど試作が出来上がったところよ」


 七星は今しがた完成したばかりのデザート皿を、広輝に見えるように持ち上げた。

 スープ状のカスタードクリームの上にふわふわのメレンゲが島のように浮いていて、スライスアーモンドが散らされている。メレンゲのトップに飾られているのは、網目状のキャラメル細工。

とても上品で優しい彩りの一品だ。


「今回はイルフロッタント。フランスの伝統菓子よ。カスタードにこだわって、オリジナリティを出してみたの」

「ふーん。いいんじゃない? それで進めといて」


 出来栄えさえ確認できれば後はもうどうでもいいのか、広輝はデザートをチラッと見ただけで、適当に相槌を打った。


「悪いけど、この後予定があるんだ。もう行くね」


 視線は手首に巻かれた高級時計に落としたままで、七星の方を一度も見ない。


「試食しなくていいの? 広輝の意見も取り入れた方が良いと思うけど……」

「大丈夫、大丈夫。パティシエールのキミを信じてるから。あっ、そうだ。コンテスト用のメニューも考えておいてよ。わかってると思うけど、全部俺が考案したことにしてね」 


 言いたいことだけ一方的に告げると、広輝は「じゃ」と踵を返して厨房から出ていこうとした。七星は慌てて「待って」と呼び止める。


「あ、あの。うちの両親には、いつ会ってくれるの……?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ