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「きっと兄上から、晩餐会の助言をもらえる。そう思ったのに……よりによって月也が現れるなんて。白虎で追われたら、内緒話なんて出来るわけがない」


 不貞腐れる李鳳に、月也は呆れながら大きなため息をついた。


「街に出て、もしものことがあったらどうするのです。それこそ、晩餐会どころではありませんよ」


 月也にたしなめられても、李鳳は「だって……」と不満げに口を尖らせる。

 七星は街を一人で歩く李鳳の姿を思い浮かべ、ふるっと身震いした。


(こんな世間知らずな子が街をフラフラしてたら、例え皇子とバレなくても、騙されたり誘拐されたりしそう…。もし、そんなことになったら…)


 最悪の事態を想像した七星が、勢い良く立ち上がる。


「しっかりしてよ! 李鳳は皇太子の自覚がなさすぎる!」

「は? お前まで説教すんのかよ」


 月也だけでなく七星にまで責められた李鳳は、うんざりした顔で天井を見上げた。

 七星は、まるで危機感のない李鳳に苛立ち、さらに語気を強める。


「ここまで言っても、まだわからないの? もし李鳳の身に何かあったら、次の帝の座を巡って国が割れるかもしれない。そのせいで戦争が起きれば、苦しむのは国民なんだよ?」


 七星の言葉に、李鳳の顔からスーッと血の気が引いていくのがわかった。

 慌てた神崎が、「七星様!」と言葉を遮る。


「不敬ですぞ。あまりにも不吉な……!」

「いいえ。不吉だからと口にしないで、曖昧な言葉で濁してきた結果がこれでしょう? 甘やかすのと、敬うのは違います」


 怯むことなく真っすぐ李鳳を見据える七星に対し、李鳳は青ざめた顔でうつむき、わずかに肩を震わせていた。


「俺、そこまで……。ただ、兄上に会わなきゃと思って……」


 途切れ途切れに声をこぼし、ようやく自分のしでかした事の深刻さを理解し始めたようだった。

 七星は少しだけ表情を和らげ、諭すように言葉を続ける。


「冷静に考えてみて。皇太子の立場を誰よりも知っているお兄様が、本当に李鳳を一人だけで街に来させるかな。秘密の合図って、待ち合わせ場所まで決まってるの?」


 李鳳は顔を上げ、動揺したまま心細そうに首を横に振った。


「だったら、一人で闇雲にお兄様を探すんじゃなくて、近衛兵に捜索を命じるべきだわ。お兄様が偽物で、李鳳をおびき寄せる罠かもしれないんだから」


 言われた瞬間、李鳳はピクリと身体をこわばらせる。


「そんな……」

「わからない。でも、どちらにしても、晩餐会を成功させましょう。そうすれば……お兄様が本物でも偽物でも、何かしらの動きを見せるような気がする」

いつもお読みいただき、本当にありがとうございます。


これまで週1ペースで更新しておりましたが、本業が忙しくなってきたため、今後は月1~2回程度の更新に変更させていただければと思います。

不定期にはなりますが、気長にお付き合いいただけましたら嬉しいです。


なお、活動については自己紹介欄やXなどでお知らせしておりますので、よろしければそちらもご覧くださいませ。


次回の更新は、8月上旬を予定しております。

引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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