表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

66/72

 清澄の提案に、月也は同意を示すようにうなずいた。


「そうしましょう。二人には聞きたいことが、山ほどありますから」


 腕を組んだままじっと七星と李鳳を見下ろす月也は、まるで裁きを下す判事のようだった。別にやましいことがあるわけでもないのに、七星は思わず身を縮めてしまう。一方、李鳳はほんの少し心当たりがあるようで、気まずそうに目をそらしていた。


「では、こちらへどうぞ」


 神崎が案内するため先頭に立ち、静かに調理場から退室する。七星も後に続こうとした時、乙部の不安そうな声が飛んだ。


「お、お嬢。俺たち、どうすれば……」


 ブイヨン作りが中断となり、料理人たちは明らかにがっかりしていた。

 せっかくまとまりかけていた勢いを止めたくなくて、七星は素早く厨房を見回す。


(みんなやる気になってくれたのに……何かお願いできること、ないかな)


 月也たちの背が廊下の先に小さくなっていくのを気にしつつ、七星は慌ただしく乙部に伝えた。


「厨房にどんな調理器具があるか、在庫表を作ってください。あと、食器類も!」

「お任せください!」


 乙部が意気揚々と胸を叩く。その様子にほっとした七星は、小走りで月也たちを追って廊下を駆けた。

 七星がこちらに向かってくるのを確認した清澄は、感心したように月也に声をかける。


「噂とはずいぶん印象が違ったので驚きました。子どもとは思えないほど賢いお嬢さんだ。……ちょっと怖いくらいに」


 どこか探るような声色だったが、月也はあえて何でもないことのように淡々と応じる。


「いえ。七星はどこにでもいるただの子どもです」

「そうでしょうか」


 月也の答えに、すかさず清澄が言葉を返した。


「厄介者の乙部たちを、あの短時間で従わせた度量。付け焼き刃ではない、明らかに実戦を重ねた料理の腕。あれを『ただの子ども』と呼ぶには、少々無理があるのでは?」


 清澄は終始にこやかだが、その分本心が見えにくい。

 月也は隣を歩く清澄から目線を前に戻し、念を押すように告げた。


「あれはもう、西條家の人間ですから」

「ええ。存じていますよ。あなたの許嫁だと言うことも」


 でもねぇ。と続けた清澄は、優雅に微笑む。


「李鳳様の隣に立つ姿も、絵になると思うんですよねぇ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ