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「これで終わりだなんて思ってねぇよなァ? 俺たちを侮辱したオトシマエ、きっちりつけてもらうぞ」


 男は挑発するように人差し指を七星に向け、にやりと笑った。

 まだしつこく食い下がる男に、清澄(きよと)は呆れながら「おやめなさい」とたしなめる。


乙部(おとべ)は、なぜそこまでムキになるのです。相手は子どもでしょう?」

「いやいや、俺だってただのガキならここまで絡みませんよ。でもコイツ、アールヴヘイム料理を作れる天才料理人とかぬかしやがるんでね。聞き捨てならないでしょ?」


 そうだそうだと、残りの二人も乙部と呼ばれた男を援護した。清澄はやれやれと額に手を当てる。


「そんなものは、子どもの可愛い虚栄心ではありませんか。真に受けてどうするのです」

「でも! そいつは鍋の中を見て、すぐにコンソメだって言い当てたんだ。しかも臭みを取るハーブを入れてないとか、煮込み時間が足りねえとか、散々言いやがって」


 苦々しい表情で語る乙部の言葉を聞き、清澄が「へぇ」と七星に興味を持ち始める。


「では、全くの妄想と言うわけでもなさそうですね。お嬢さんはどこで料理の知識を?」


 疑っているというよりも、純粋に好奇心から尋ねているようだった。まさか前世の記憶だとは打ち明けられず、七星は困ったように立ち尽くす。


(どうしよう。上手く答えられないと、もしかしたら好感度が下がってしまうかも。好感度がマイナスになったら、断罪イベントが発生してしまう……)


「ええと……夢でお告げを受けたんです! 帝をお助けするようにと言われ、その時、知識を得ました」


 鷹司七星が夢に出てきたことを思い出し、七星は咄嗟に嘘を吐く。こんな話で納得してもらえるか不安だったが、他に上手い言い逃れが浮かばない。


「適当なこと言ってんじゃねーよ!」


 案の定、乙部に一蹴されてしまい、七星の額に汗が浮かぶ。清澄は声には出さないものの「やっぱり子どもの虚言か」と、ガッカリしたように七星から視線を外した。

 ここで失望される訳にはいかないと焦った七星が、一歩前に進み出る。


「私に料理を作らせてください! それで証明してみせます」


 七星の申し出を聞き、乙部が待ってましたとばかりにニヤリと笑った。


「ガキのお遊びに付き合ってやるんだから、条件ぐらい出させろよ。お前の作る料理が認められなかった時は、嘘を吐いた罰として俺の嫁になれ。どうだ、これでもやるか?」


 ニヤつく乙部に苛立ちながら、七星は立ち向かうように胸を張る。


「公平に審査して頂けるのであれば、その条件でかまいません」

「お、おい! 待てよ!」


 重過ぎるペナルティーに驚いた少年が、七星の腕を掴んで止めた。しかし七星は少年を振り切り、「その代わり」と厨房に響く堂々とした声で告げる。


「料理が認められた暁には、あなた方は私の言うことを何でも聞いてくださいね」

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