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次回から毎週水曜日の週1投稿になります…

勝手を言って申し訳ないです


次回予定:3月5日【第十二話 料理の天才】


のんびり更新ですが、お付き合いいただけましたら幸いです

よろしくお願いいたします

 それはこっちのセリフだと思いつつ、七星は心拍を落ち着かせるために深呼吸を繰り返した。


 キャスケット帽にヨレヨレの白シャツ、ツイード柄の半ズボン。顔立ちは可愛らしいが、言動は荒っぽくて生意気だ。服が全体的に土埃で汚れているので、何か作業をしていたのかもしれない。ひょっとすると庭師の見習いだろうか。


 七星は墨怜の忠告を思い出し、少々強気に出ることにした。


「私は客人よ。あなたこそ、窓から突然入ってくるなんてどういうつもり? それに今、『月也』って言ったよね?」

「客人? お前が? ホントかよ」


 七星の問いには答えず、少年は疑うように目を細めた。七星はムッとしながら、反論の代わりにテーブルの上を指さす。羊羹と煎茶は「今まさにもてなしを受けている客人」という証のようで、ぐぐぐ、と少年は悔しそうに歯噛みした。


「お前みたいな子どもが、迎賓館に何の用だよ」


 馬鹿にしたように鼻で笑い、少年は自分より少しだけ背の低い七星を威圧するように見下ろした。七星も負けじと胸を反らし、少年に言い返す。


「晩餐会の料理に頭を悩ませてるって聞いて、助けるために月也様とここに来たの。私、こう見えても天才料理人なんだから」


 相手が子どもなので、「天才料理人」などとつい大口をたたいてしまった。

 これで恐れおののいて、大人しくここから立ち去ってくれればいい。そう考えていたのに、予想に反して少年は目を輝かせる。


「月也が連れてきた天才料理人⁉ それは本当か!」


 七星の両肩をがっしり掴み、嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。


「それならそうと早く言えよ。よし、厨房まで案内してやる。こっちだ!」

「えっ⁉」


 少年は七星の手を引き、意気揚々と部屋を飛び出した。有無を言わせず連れ出された七星は、思いのほか強い力に引きずられて廊下を進む。


「だ、駄目だよ。私、あの部屋で月也様を待っていないと……」

「月也なんかほっとけよ。それよりこっちの問題を解決してくれ」


 グイグイと手を引っ張る少年は、ほとほと参ったように顔をしかめた。


「アールヴヘイムに留学していた料理人を呼び戻したんだけど、そいつの作る料理が少しも美味くないんだ」


 少年は何かを思い出したのか、心底嫌そうに深く息を吐き出す。


「なのにそいつは『これが本場の味だ。舌が料理に慣れていないから違和感があるだけだ』なんて、マズイって認めないんだよね。態度もめちゃめちゃデカくてやりたい放題だし。かといって、他にフルコースを作れる人もいないから、みんな言いなりで……」


 暗く沈んだ表情の少年だったが、「だから」と言ってパッと顔を上げた。


「お前が美味いアールヴヘイム料理を作って、留学帰りの生意気な料理人を黙らせてくれよ!」 

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