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「おかえり呂色。今までどこにいたの?」


 七星が呂色の顎をくすぐるように撫でると、嬉しそうに目を細める。

 急に飛び込んできた呂色を一瞬警戒した墨怜だったが、問題ないと判断したのか、すぐに「おやすみなさいませ」と丁寧にお辞儀して部屋を出ていった。


「今日は色んなことがあり過ぎたね」


 呂色を畳の上に降ろし、七星はふわぁと欠伸する。

 布団に吸い寄せられるように倒れると、すぐに白虎が七星の隣にやってきた。寄り添うフカフカの毛並みは柔らかくて温かくて、ホッとする。


「強い上にもふもふまで堪能できるなんて、こんなに優秀なボディガードは他にいないよ」


 いっそ布団は要らないんじゃないかと思いながら、七星は遠慮なく白虎にしがみつく。

 それを見た呂色はヤキモチでも焼いたのか、白虎を踏みつけながら七星の側にやってきた。七星と白虎の間に割り込むように、ぐいぐいと自分の体をねじ込んでくる。


「ごめんごめん。呂色も頼りにしてるよ」


 拗ねてしまった呂色の機嫌を取りながら、月也の言葉を思い出す。


「呪詛返しが強力だったって、どういうことだろうね? まぁ、気にするなって言ってたから、月也さまの思い過ごしなのかもしれないけど」


 しかしあれはまるで、呂色が呪詛を跳ね返すために何か手を加えたような口ぶりだった。


「まさか呂色、何かした?」


 そう尋ねても、呂色は「ナー」と鳴いて、くりくりの無垢な瞳で七星を見上げるだけだった。その愛らしい姿に七星はハートを撃ち抜かれ、たまらず頬を寄せる。


「そうだよね、呂色が何か出来るわけがないよね。こんなに可愛い猫ちゃんだもんね」


 ぎゅっと抱きしめると、呂色の喉がより一層グルグル鳴った。

 緊張が続いてクタクタに疲れきった脳と身体に、癒しの権化のような二匹の心地よい体温が沁みる。

 七星が夢の世界に堕ちるのに、そう時間はかからなかった。



『ちょっと。あなたどこまで図々しいの⁉ 起きなさいよ』


 深い眠りについたはずなのに、どこかから自分を呼ぶ声がする。


『ねぇ、早く起きてってば! 私を無視しないでッ!!』


 子ども特有の甲高い叫び声が、まるで洞窟の中のように反響した。

 何事かと驚いた七星は、弾かれたようにガバッと飛び起きる。


「えっ? 何⁉」


 目を開けるとそこは真っ白な空間で、目の前には腰に手を当て頬を膨らませる、鷹司七星が居た。

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