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 だとすると、問題は料理だけではないかもしれない。


「お兄様、もう一つ質問です。大和帝国側の晩餐会出席者は、もう決定しているのですか?」

「ああ。帝をはじめ、政府の要人や貴族、近衛師団からも数名が出席予定だが、それがどうかしたか」

「アールヴヘイム料理を食すには、ナイフとフォークという道具を使います。箸とは勝手が違うので、綺麗な所作を身に付けるには、かなり練習が必要かと。それに、食事の仕方にも『テーブルマナー』というルールがあるんです。出席者の皆さまは、それをご存じでしょうか」


 七星の指摘に、月也は苦悩の唸り声を上げた。


「なるほど。文献を読んでわかったつもりになっていたが、練習が必要なことまで思い至らなかった。父上を通じて早速帝に進言しよう」


 月也は難しい顔をしながら、すっかり冷めてしまった煎茶に口をつける。


「……他に、気づいたことはあるか?」

「そうですね。アールヴヘイム料理は、帝国料理とは違った食材や機材、食器を必要とします。なるべく早く手配した方が良いかと。それに、腕のいい料理人も集めておかなければなりません。留学経験のある方がいれば心強いですね」


 まるで独り言のように「なるほど」と呟いた月也は、両手で洗うように自分の顔を撫でた。疲れているようにも見えたが、同じレベルで相談し合える仲間を得て、安堵しているようにも見えた。


「アールヴヘイム王室御用達の銀製カトラリーは、既に入手済みなんだが……。食器類を載せた船便が間に合いそうもない。国内の窯元に制作を依頼することになったが、普段作り慣れていない材質で少々難航している。何か良い策は思いつかないか?」


 七星は頼られたことが嬉しくて、満面の笑みで「策ならあります!」と答える。


「でしたら食器は、大和帝国の陶磁器を使いましょう! ガラス製の器も良いかもしれません。大きな花柄が絵付けされたティーカップなんか素敵かも! だって、料理だけじゃなく食器まで全てアールヴヘイム仕様じゃ、なんだ迎合し過ぎていて、あちらの言いなりみたいじゃありません? こちらの国の良さも知っていただかないと」


 実際、色とりどりの九谷焼や重厚な色合いの益子焼など、日本特有の焼き物はフレンチ料理にもよく映えた。白磁の食器に慣れたアールヴヘイムの貴族たちに、特大のインパクトを与えられるかもしれない。


「大和帝国を見くびっているアールヴヘイムの貴族たちを、あっと言わせてやりましょう!」

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