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第八話 エルフの視察団

 一年猶予があるのはありがたいが、しかし同時に困ったことでもあった。

 シナリオが始まる前のストーリーなど未知過ぎて、攻略方法が全くわからない。


(でも、ひとまず傍若無人にさえ振舞わなければ、即断罪ってことはなさそうよね……)


 今はとにかく、少しでも点数を稼いで生存率を上げなくては。

 何かいい方法はないかと考えを巡らせ、先ほど月也が言っていた言葉を思い出した。


「あの。そう言えばお兄様は『異国から要人を迎えるために、西條家は帝から難題を課されている』とおっしゃっていましたが、具体的にはどのような課題なのですか。ひょっとしたら、お役に立てるかもしれません」


 見た目は子どもでも、中身は社会経験のあるいい大人だ。もしかすると解決策を提案できるかもしれない。


「……以前なら、『お前に話したところで』と突っぱねていただろうな。しかし今は、外交の難しい話なのに聞かせてやっても良いとさえ思えるから不思議だ。冬の長期休みの時はあんなに幼い言動だったのに、この短期間でよくぞ立派に成長したな」


 まだ若いのに妙に老成している月也の物言いに、七星は思わず苦笑いした。西條家の現当主と言われても、うっかり納得してしまいそうな貫禄だ。


「大和が諸外国から強引に開国を迫られ、海外と交流を始めたことは知っているな?」

「……はい」


 ストーリーに直接関係しないが、バックボーンとして確かにそんな公式設定があったなと、七星は思い出しながらうなずいた。

 現実の歴史と同じように、こちらでも鎖国の終了と共に文明開化のようなことが起きたらしい。

 そう言えば、この部屋にあるアンティーク家具もオイルランプも、全て輸入品……と公式ファンブックの片隅に書かれていたような気がする。


「文化交流と称して、アールヴヘイム国の貴族が(みかど)に謁見する。視察団を乗せた船はもう既に国を発ち、二か月後に大和帝国に到着する予定だ」


 頭が痛そうに額に手を当て、月也が大きなため息をついた。

 アールヴヘイムは現実世界で言うところの、ヨーロッパ辺りをイメージした国だ。

 ただし、国民は人間ではなくエルフ。

 男女ともに容姿端麗で、尖った耳が特徴的な種族だった。太古の昔は三百年もの長寿を誇っていたらしいが、環境の変化などにより、近頃は人間とそう変わらない寿命になっている。

 公式ファンブックには「非常にプライドが高く、優越思想を持つ者が多い」と書いてあった。


「ここからが問題なのだが、その際に開かれる宮中晩餐会の総指揮を、西條家が仰せつかってな。俺も父上の補佐役として、深く携わっている」


 七星は「晩餐会」に強く興味を示し、テーブルに身を乗り出す。


「それは大変そうですね。それで、晩餐会ではどんな料理でおもてなしを? 会席料理? それともアールヴヘイム料理のフルコースですか」


 七星がそう質問した瞬間、月也がガタンと椅子を後ろに倒すほどの勢いで立ち上がった。

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