第九話 こんな奴
キャラに一癖持たせるのが苦手なのでモブで練習するお
「怪我はないかい?誰かに何かされたりは?というかそこにいる男は誰?」
「兄上…落ち着いてください…」
「これが君の兄かい?正直想像と違うな…」
「『これ』だと!?礼儀作法を親から習わなかったのか!?妹にまとわりつく虫風情が!」
「…」
数秒の沈黙の後、ラビアは腰の刀に手をかけた。
そんなラビアをメイは必死に引き止める。
「待ってください!ラビアさん!兄は…その…こんなのですが!根は!根は善人なんです!」
「何が礼儀作法だ。1番礼を弁えてないじゃないか」
ラビアはいつも通りの口調で言い返す。
「僕とやり合う気か!いいだろう!最愛の妹をつけ狙う奴らを追い払う為ならばなんだってする!」
「狙ってない」
「だったら何故妹といる!?口だけならなんとでも言えるんだぞ!」
「だから君の妹をどうこうする気はないって」
「嘘の匂いがするね!そうやって僕を言いくるめるつもりなんだろ!」
「狙ってねぇっつってんだろ」
「2人とも落ち着いてください!」
なんとか2人を宥めた後、メイはリーフェウス達と出会ったことや、自分達がここに来た経緯を説明した。すると…
「まことに申し訳ない!」
額を地に付け、聞き取りやすい声で謝る兄の姿があった。
「てっきり下心満載の人間とばかり…」
(こんな奴が国の頭になろうってのか)
ラビアはそう言いかけたが頑張って胸の内にしまいこんだ。
「君、名前は?」
「ああ申し遅れました。僕は『ソロン』と申します」
「どうして檻に入ってたんだい」
「僕は彼に…アステールに冤罪をかけられたんです」
「具体的にどんな?」
「…前教皇を殺害した罪です」
「冤罪ってことは真犯人がいるんだろ?それは誰か分かるかい?…まあ大体想像がつくけど」
「恐らく、あなたの想像通り…真犯人はアステールです。証拠映像もあります」
ソロンは、小型の機械を取り出して、壁に映像を映し出した。そこには、前教皇であろう人物を刺殺する男の姿が映っていた。
「お父様…!」
(常識的に考えて、こいつがアステールとやらだろうね)
「あの、2人はこれからどうするんですか?」
「とりあえず、アステールのところに行くよ。それがこの子の頼みでもあるしね。君は?」
「僕は、父の死の真実を広めます」
「そう。また捕まらないようにね」
ラビア達はソロンを見送り、少しの休憩に入った。そしてその後…
「ラビアさん、そろそろ行きましょう。目的は果たしましたし、リーフェウスさん達と合流しなければ」
「ごめん、もう少し休ませてくれない?」
「はい、構いませんよ。ですが、ラビアさんってここに来るまでも結構休憩してましたよね?」
「ああ…うん。良い機会だし、君には言っておこうかな」
そう言った後、ラビアは少し間を空けてから口を開いた。
「僕はね、生まれつき体が弱いんだ」
「えっ…」
「心臓も弱いし、体そのものの耐久力も弱い」
「だから、さっきの見張りの人達には魔法で対処してたんですか…」
「そうそう。あんまり長時間全力で戦えたりもしないんだよね…本当不便な体だよ」
「あの…ラビアさん」
「なんだい?」
「辛かったら、言ってくださいね?会ったばかりで言うのも何ですが、私はあなたのことが何故か他人とは思えないんです。もちろん、他の人のこともですけど、私はあなたのこと、大切に思ってますから」
「…」
「あっ!ごめんなさい!上から物を言ってしまって…」
「いいよ別に。ありがとう。さ、僕はもう大丈夫だよ」
そして2人は、街へと戻っていった。
一方リーフェウス達は、灰蘭達と合流し、今まで得た情報を整理していた。
「ざっとこんな感じか」
リーフェウスの手にある小さなメモ用紙には、こんなことが書いてあった。
・少し前、夜中に神殿から悲鳴が聞こえた
・アステールが見知らぬ外部の者らしき人物と話しているのを見た
・数日前に、黒いインクの塊のような怪物を見た
「上2つはアステールのことで確定だろう。だが…」
「黒い化け物だ?ベル、これが魔族ってやつなのか?」
「いや、魔族の特徴とは違うな。魔族は目が真っ黒なんだ」
「まままま、まさか幽霊じゃ…」
「バァ!」
「わぁぁぁぁぁぁ!やめろ灰蘭!」
「何やってんのさ皆して…ん?知らない顔がいるね」
「知らない事はないだろ」
「皆さん、お久しぶりです」
「メイちゃんだ!ちゃんとお兄さん助けられたか?」
「はい、ラビアさんのおかげですけどね」
久しぶりの再会をした後、お互いに今まであったことを大まかに話した。
「この国で指名手配されることと引き換えにこのガラクタねぇ…」
「誰がガラクタだ!」
「アンタ達の方は、メイの兄を助けられたのか。順調なようで何よりだ」
「これからどうする?こいつらの話じゃあもうアステールの悪事の証拠は掴んでんだろ?」
「はい。兄が持っています」
「じゃあ今すぐにでも殴り込みに行こうぜ?アタシのメイちゃんに辛い思いさせやがって…」
「貴方のじゃないわ」
「うっせえ!物の例えだよ!」
こうして一行は、アステールのいる神殿に向かい始めた。
キャラクタープロフィール⑦
名前 ベル
種族 機械
所属 ヴェンジェンス 主人公陣営(仮)
好きなもの 戦闘 食事
嫌いなもの 水 装備の点検
異能 なし(様々な機能が搭載されている)
作者コメント
ここ数話の扱いのせいで忘れられていると思うが、一応敵組織の一員である上に、どこかで書いたかもしれないがヴェンジェンスは実力でNo.が決まるので、ディザイアの1つ下であるこいつは決して弱くはない。
ちなみに見た目は普通の人間である。イメージした言葉は「戦車」