第六十九話 破壊の神
豆知識
アルカディア君が今まで感知した願いの中で特に多かったものは
・あと5分だけ
・週休7日になれ
・リア充死ね
だそうです。
セイリアの眷属であるアジダハーカという竜を正気に戻す為、リーフェウス、ラビア、メイ、アルカディア、セイリアの5人は深淵にやってきた。
「なんか…もう慣れてきたな」
「本来そんな何回も来る場所じゃないんだけどね…」
『慣れって怖いな』とリーフェウスが言おうとした時、メイはとある異変に気がついた。
「深淵って…こんなに荒れてましたか?」
「元からこんな感じだろう」
「…恐らくアジダハーカだ。我ですら手をつけられないほどに暴れ回っていたからな」
リーフェウス達の眼前に広がっていたのは、記憶の中にあるものとは少し違う風景…ただでさえ荒れ果てている深淵の大地は、アジダハーカの仕業であろう落石や地形の凹凸によってより一層進みづらくなっていた。
「そういえば…神器と眷属って両立出来たりしないのか?」
突然、リーフェウスがそんな疑問を口にする。
「出来なくはないけど…誰もやってないよ。そもそも2つとも、本人の力を分けて創られる物だからさ。創り過ぎると本体に影響が出るんだ。まぁ、僕とかの上位の神なら少しくらい問題無いけど…」
「アンタにも眷属がいるのか?」
「…いるよ。でも…この星にはいない。話すと長くなるから何も言わないけど…アイツには悪い事をした…」
意味深な事を呟くラビアに、リーフェウスは首を傾げる。その時、一行の目の前に3体の淵族が現れた。全員が武器を構えようとした時…
「皆待ってくれ、我が戦おう。アジダハーカとは戦闘になる可能性が高い…我の戦い方を知っておいて貰わなければな」
セイリアが薙刀を握って前に歩み出た。
「一理あるな、無理はするなよ」
リーフェウスの声かけに、セイリアは無言で頷く。
「豁サ縺ュ…!」
相変わらず意味不明な叫び声を上げながら、淵族はその黒い爪をセイリアに振り下ろそうとする。対して、セイリアは薙刀を構えて振り抜く。それは、淵族の胴体を狙っているように見えた。
「セイリア!淵族は急所以外には攻撃が通りにくい!首を…」
『狙え』とリーフェウスが言おうとした時、何かが割れるような音と共に、淵族の胴体が豆腐のように両断された。その時の淵族の周囲の空間は、何やら亀裂が入っていたように見えた。
「済まない、何か言ったか?」
「いや…なんでもない」
「縺上◆縺ー繧…!!」
「繧?a縺ヲ…!繧?a縺ヲ…!!」
残りの淵族も、一斉にセイリアに襲いかかる。
「…許してくれ、淵底の魂達よ」
その瞬間、セイリアの周囲に亀裂が走ったかと思えば、その亀裂は淵族の全身まで伸びていき、淵族の身体を粉々に打ち砕いた。
「なぁラビア…アレどういう事だ?」
リーフェウスはラビアに解説を求める。
「自分で考えろよ…多分最初のやつは、淵族の身体じゃなくて淵族の周囲の空間を対象にしたんでしょ。お得意の『破壊』の力のね」
「なるほど…」
「そんで次のやつはもっと簡単だ。『破壊』の力を空間に伝播させて、淵族の全身まで届けた。それだけだよ」
「流石、よく知っているな。アルヴィース」
「何、僕の事知ってんの?」
「タナトスから聞いた」
「あの野郎…まぁ別に、隠す事でもないけどさ」
「リーフェウスさん…」
「なんだメイ」
「もしかしてセイリアさんって…カロスさんより強いんじゃ…」
「強いぞ」
「聞こえたんですか!?」
「たまに暇つぶしとして手合わせをするんだが…大体6:4の割合で我が勝つな」
「逆にカロスは4割勝ってるのか…」
リーフェウスが感嘆の声を漏らした時、少し遠くの方からとてつもない咆哮が聞こえてきた。
「!!!!!!!!!!!!!!!」
「うるっさ」
「アジダハーカだ…!行くぞ皆!」
全員が駆け足でその咆哮の元へ向かうと、リーフェウス達の家よりも大きい竜がそこにいた。
「アジダハーカ…!我だ!分からないか!?お前の身に何があったと言うのだ!」
そのセイリアの叫びは届かず、アジダハーカは口を大きく開けて黒色の火炎を放つ。
「えっ」
途中から空気になっていたアルカディアに向かって。
「アルカディアァァァァァァァ!!」
「ごめんちょっと面白い!」
メイは何も言わなかったが、肩が小刻みに震えている。
「おいどうする!早々に支援役が1人死んだぞ!」
「アルカディアも神だし死んではないと思うけど…」
その時、土煙の中から声が聞こえてきた。
「その通り…この程度で死ぬ程、私は貧弱ではないのですよ」
アルカディアの周りには、あの凄まじい硬度を誇る黄金のバリアが浮かんでいる。
「さて、私の萬屋としての初陣も兼ねて…開戦といきましょうか」
こうして、神4人&人間1人vs破壊竜の戦いが始まった。
豆知識
アルカディア君の神器はあのヘイローです。本人はそれに気づいた時、めちゃくちゃ微妙そうな顔をしていました。




