第六十七話 神器と眷属
今話から第2部が開幕します。
「なぁラビア、少し良いか」
何やら片手に本を持っているリーフェウスが、モ◯ハンをしているラビアの部屋に入って来る。
「今僕忙しいんだけど」
「ポーズとか出来ないのか?」
「君が横文字使ってるの違和感しかないな」
ラビアは言われた通りにゲームを中断し、リーフェウスの話に耳を傾ける。
「で、何の用さ」
「さっき本で見たんだが…『神器』って何だ?」
「ああそんな事……神器ってのは、僕とか君みたいな神が作れる特別な武器の事だよ。まぁ、普通の武器との違いなんて、大体の場合は『壊れない』って事くらいだけど」
「へぇ…」
「君が散々使ってる『それ』も神器だよ」
「これか」
リーフェウスは自分の剣を手に持って見つめる。
「君は知らないだろうけど、4000年前…前生の君も全く同じ見た目の武器使ってたんだよ」
「そうなのか」
「だから初めて君を見た時ビックリしたんだよね。『うわ4000年経ってもセンス変わってねぇ』ってさ」
「別にコレは俺が作った訳じゃないんだが……あ、そうだ。じゃあアンタの神器って何なんだ?」
「これ」
その声と同時に、ラビアは黒いグリッジの中に手を突っ込んで、そのまま刀を放り投げた。
「コレかよ」
リーフェウスが鞘から刀を抜いた瞬間、ラビアが声をかける。
「刃部に触んなよ。消えるぞ」
「何だその警告」
「言葉の通りだよ。僕のそれには『破滅』の力が込められてるからね。要は何でも切れるって事」
「…アンタらしいな」
リーフェウスが驚きを通り越して呆れていると、ラビアが人差し指を立ててこう言った。
「君さ、神器以外にも神は作れるものがあるって知ってるかい?」
「知らない」
「神は神器以外にも『眷属』ってのを作れるんだ」
「眷属?」
「そう。まぁ言葉の通りの下僕みたいなもんだね。大体はその神と同じような能力を持ってるらしいよ」
その台詞に、リーフェウスは少しの違和感を覚える。
「『らしい』?アンタらしくないな。アンタならそんな曖昧な返事をする必要ないんじゃないのか?」
「眷属って不人気なんだよね…だからあんまり情報無いんだ。眷属だって1つの生き物だから、神器と違って言う事聞かない事もあるしさ」
「なるほどな…」
「ちなみに、言ってしまえば僕ってアイオーンの眷属なんだよね。まぁ厳密には違うけど」
「へぇ」
その時、玄関のドアから妙な音がした。まるで、ドアを動かす方向を間違えているかのような音だった。
「…客か」
2人が1階に降りると、そこにはアルカディアとメイがいた。他の3人は今外出中らしい。ドアの外からは、微かに男女の話し声のような物が聞こえる。
「用があるなら入ってもらって構わないぞ」
再び、ドアが反対方向に動かされる。
「…それは引き戸だ」
リーフェウスは声をかけるが、届いていないのか三度ドアは押される。すると、ドアの向こうから聞き慣れた声が聞こえてくる。
「聞こえなかったのか?それは引き戸だと…」
「…カロス?」
ドアを隔てているせいで聞き取りにくいが、それは確実にカロスの声だった。
「へっ?引…引き戸なら最初からそう言わんか!」
「店主殿は最初にそう言っていたぞ。己の誤りを認めたくないが故に耳を傾けなかったのは君だ」
「う…うるさい!」
勢いよく開けられたドアの向こうにいたのは、何だかんだ付き合いの長い死神と、両手に手袋をしていて、メイと同じくらいの背丈を有する灰髪の少女だった。
「久しいなリーフェウス殿。それと、その他の者達も」
「ああ。そこの人は依頼人か?」
「人ではないぞ」
「怖い話か?」
「君だって人じゃないだろう」
そう言うとカロスは一歩後ろへ下がり、代わりに灰髪の少女が前に出た。
「初めまして、我は『セイリア』。破壊を司る神にして、そこのタナトスとかいう阿呆の友人だ」
セイリアと名乗った少女は深々と頭を下げる。
「大体2000年ほど前からの付き合いだな。私に神としての色々な事を教えてくれた友人だ。ちなみにセイリアの年齢は1万…」
「女性の歳をそう簡単に明かすな馬鹿者!」
「ぐぁっ」
セイリアがカロスの胴体に拳を入れる。そしてその拍子に、前髪で隠れていた赤い右目が露わになる。その瞬間…
「貴方…!その目…!」
先程まで机でぼんやりと本を読んでいたアルカディアが、突然立ち上がった。
「君は…アルカディア殿か。この赤眼に見覚えがあると?」
「当然です…その赤眼は、赤月の使徒である証拠なのですから」
言われてみれば、セイリアの右目はアルカディアの両目と同じ色をしている。だが、何故セイリアは片目だけが変化しているのだろうか。
「私はこの星にいる使徒とは全員面識があります…が、貴方は見た事が無い。それにその片目だけの赤眼…どういう事ですか?」
「…我は」
「ちょっと待ってくれ」
セイリアが何かを言おうとした瞬間、リーフェウスがそれを遮った。
「誰も突っ込まないのが不思議で仕方ないんだが…『赤月の使徒』って何だ?」
「…そういえば説明してませんでしたね」
アルカディアは、赤月の使徒について説明し始めた。
豆知識
本作には何人かヘイロー持ちのキャラが出て来るんですが、ヘイロー持ちのキャラはある程度強いんだなって思っておいてください。別にヘイロー無いからって弱い訳ではありませんが。




