第八話 空にて
決してタイトル考えるのが面倒になったわけではない
「人影?そんなの見えたか?」
「ああ。行ってみよう」
機械であるが故に耳が良く、その会話を聞いていたベルは当然ながら焦っていた。
「おいおいおい冗談じゃねーぞ…売り飛ばされるのは御免だぜ…!」
ベルが逃げる準備を整えていた…が、一歩遅かった。
「「あっ」」
「あっ」
「誰だっけかコイツ?」
「ジェルだろう。忘れるな」
「ベルだ!間違える方が失礼だからな!」
「そんなのどうでもいい。アンタは何故ここにいる?」
「人の名前をどうでもいいと…!?てか、何故って言われてもお前らに売られそうになったからここに逃げてきたんだよ!」
「ならコソコソしねえで堂々と歩けよ」
「それは…」
ベルが言葉を濁したその時、カレアスの治安維持組織がやってきた。
「見つけたぞ!不法入国者め!」
「こういうことかよ…」
「ん?横の2人は見覚えがないな…そいつらもグルか?」
その問いに対するベルの答えとは…
「え?こいつらは……はい!こいつらもグルです!」
「ガラクタが」
「スクラップにしてやろう」
「逃げなきゃまずいぜ?」
「「お前のせいだけどな!」」
言い争いながら追ってから逃げていると、突然ヴァルザが立ち止まった。
「何してる!」
「足止めだ!」
そう言うとヴァルザの左手が紫に光り、その手を地面につけると、左手の光と同じ色の壁が地面から生えてきた。
「そういやアンタの能力はそんなのだったな」
「初のお披露目がこれかよ…」
だが、数人は壁の前にいた為に、変わらずにリーフェウス達を追いかけてきた。
「なら今度は俺の番だ」
すると、リーフェウスの頭上には「制」の文字が浮かんだ。振るった剣からは波動が放たれ、それに当たった追手の足を止めた。
「久しぶりに見たなお前の異能」
「俺も久しぶりに使った」
「今のうちだぜ、御両人?」
「なんもしてねえくせに…」
そうして、3人はどうにか追手を撒いた。
「そういえば、あんたは元々何かの話をする為に俺達に接触してきたんだろう?なんの話があったんだ?」
「聞いてくれる気になったのか?」
「ああ」
「だったら単刀直入に言おう。俺の主を…正気に戻してほしい」
「主?死神とかいう奴か?」
「そうだ。俺は比較的昔から主のことを知ってるが、昔はあんな奴じゃなかった。ぱっと見は変わってねーが、部下に…俺達に出す指示が変わっていった」
「例えば?」
「昔は、『この区域の巡回をしてこい』だとか『この場所で起こってる争いを鎮めてこい』だとかの指示が出てたんだ。でも今は…なんの関係もない集落を襲わせたり、他の魔族を現世に放ったり、現世の人間に危害を加えるようになったんだ」
「集落…!やっぱりあいつは…」
「あいつ…?まあいいか。とりあえず、俺がお前らにしたかった話ってのはそういう頼みだ」
「別に構わないが…今は別件があるんだ。それが終わってからだな」
「別件?」
リーフェウスは、自分達がここにいる理由を説明した。
「なるほどな…俺もそれに協力させてもらいたいんだが…いいか?」
「当然だ。戦力が増えるのは嬉しいことだからな」
「俺も構わねえぜ。よろしくな」
こうして、一行に機械人間が加わった。
「てか、さっき日陰で能力使ってたから分かったんだけどよ、リーフェウスって…」
「俺がなんだ?」
「能力使うと、目と髪がちょっと光るんだな」
一方、灰蘭&硝光ペアは…
「なあ灰蘭、何買ったんだ?」
「油よ」
「えっ…飲むのか…?」
「そんなわけないでしょ」
聞き込みのことなど忘れて買い物をしていた。
そして、ラビア&メイペアは…
「あの…ラビアさん?」
「ん?」
「私達、この建物に忍び込んでるんですよね?」
「うん」
「その腰の刀…邪魔じゃないですか?」
「別に消せるけど、消す?」
「出来るんですか」
「魔力で作っただけだからね、これは特に気に入ってるから身につけてるだけだよ」
そう言うと、ラビアの腰に差してあった刀は、グリッジの様なエフェクトと共に消えた。
「で、お兄さんの牢屋はどこ?」
「あ、もう目の前です。兵士が2人立ってるところですね」
「あいつらを片付けなきゃダメか…」
「あ、あの…あまり、乱暴は…」
「分かってるよ、殺しはしないさ。ここに隠れてな」
そう言うと、ラビアの背後に法輪が現れた。今度は中央に「恐怖」の文字が浮かんでいる。ラビアが指を鳴らすと、牢屋の前に立っていた2人の兵士はいきなり泣き叫び、どこかへと走っていった。
「出ておいで、兵士はどっかいったよ」
「あ……あの…何したんですか?」
「あいつらにとって最も恐ろしいものを見せただけだよ」
「怖ぁ……あ、そういえばここ暗いから気づいたんですけど、ラビアさんって…」
「ん?」
「能力使うと、目と髪が光るんですね」
「…なんでだろうね」
「あ!兄です!よかった…まだ生きてるみたいです…!」
「それはよかった。ここの鍵とかある?」
「それは…ここから遠い部屋に保管されてます」
「だろうね…離れてな」
ラビアはそう言うと、先程消した刀をもう一度出し、牢屋の鉄格子を切り刻んだ。
「兄上!無事ですか!?」
「……メイ…?」
どうやらメイの兄は生きているようだった。
「ああ!愛しの我が妹よ!こんなところまで僕を助けに来てくれるなんて!」
「は?」
思わず、ラビアはそんな声が漏れてしまった。
キャラクタープロフィール⑥
名前 メイ
種族 人間
所属 主人公陣営
好きなもの 夜 甘いもの 人との会話
嫌いなもの 戦闘 辛いもの 虫
異能 なし(魔法は使える)
作者コメント
好き。キャラとしても好きだしまあまあ良い事も言わせられるので作者としても好き。初期段階では存在しないキャラだったが、追加してよかったと心から思う。タイミングを見計らうのが苦手。イメージした言葉は「献身」と「空」