掛け合い集②〜夜叉と死神とその他〜
今回はセツと奈落組中心です
あとあんまり関係ないんですが、セツって「夜叉」という言葉がしっくり来ると思うんですよね
まぁイメージした言葉がそれなので当然ですが
①「奈落組の飯事情」
「今週もこの時がやって来たか…」
1日分の仕事が珍しく早く終わった日、カロスは自室で気鬱そうに呟いた。その理由を説明するには、まずヴェンジェンスの飯事情について説明しなければならない。ヴェンジェンスの面々の食事は基本的に各自が用意しており、当番のようなものは存在していない。だが1つ例外がある。週に1,2回程、灰縁が全員に手料理を振る舞う。しかし、ご存じの通り灰縁は壊滅的に料理が下手なのだ。それが原因で、カロスは憂鬱さを感じているのである。
「はい、どうぞ」
皆の前に並べられたのは、ドロドロとした青紫色の物体であった。これでもかというほどに食欲を抹消していくその外見に、一同は思わず言葉を詰まらせる。ちなみに、今この場にいるのはベル、ディザイア、星導、カロスのみであり、バルドラスとゼンレルは危険を察知して見回りに行ったらしい。
(おい何だよコレ…食い物ってレベルじゃねーぞ)
(なんでコレを満面の笑みで出せるんだよ…)
(食べなきゃ…失礼だよね…)
(本人には悪意が無いのがまた凶悪な…)
4人が絶望している時、カロスは妙案を思いついた。匙を手に取り、その物体を口に運ぶ。
(うわいった)
(先陣切りやがった)
(死神様…アレ食べれるんだ…)
「…うん、悪くない」
「そう?よかった」
カロスは顔色1つ変えずに完食した。その様子を見て3人は『実は美味しいのでは』と思い、恐る恐るそれを食べてみる。すると…
(…なんだこれ)
(しょっぱい…いや、苦いのか…?酸っぱくもあるが…)
(…どういう…味なんだろう。少なくとも美味しくはないけど…)
やはり、味は問題があったようだ。ではカロスはどうやってアレを完食したのだろうか。
(やはり…私の異能は便利だ)
そう。自分の能力で食道に裂け目を作り、その物体を別の場所へと転送したのである。
どこに飛ばしたのかは…カロスしか知らない。
②「奇跡」
「…まずいな」
ある日の夜、セツは食糧庫を見て呟いた。
「食糧が尽きた」
セツは何故か食事を必要としない体質なのだが、それでも腹は減る。セツは空腹でやる気が起きず、家の中で寝そべっていた。
「あぁ…腹が減った」
徐々に眠気が襲って来て、もうこのまま寝てしまおうかと思ったセツだったが、ここで奇跡が起きる。
「…?なんだ…今食糧庫の方から音が」
セツが食糧庫を見に行くと、なんとそこには『青紫色のドロドロした物体』が落ちていた。
「おお…!どういう訳かは知らないが助かった…!」
極限の空腹の中では、こんな死んだクラゲみたいな見た目の物さえ食べ物に見えるのだろう。
「…美味いな。よく分からない味がするが…」
それは何よりだ。作り手も喜んでいるだろう。
「こんな奇跡が起ころうとは…神もまだ捨てたものではないな」
その日からセツは、毎日食糧庫を見に行くようになった。
③「萬屋とヴェンジェンスの労働体制比較」
ケース1 お盆
萬屋の場合
「お盆?…ああ、旧世界の文化か。なんでも、墓参りをしたりするらしいな。休み?構わない。故人を蔑ろにしてはならないからな」
ヴェンジェンス(カロス)の場合
「お盆…?墓参り…?その文化を否定するつもりは無いが、君の先祖達の魂から生まれた魔族に会わせてやるから働いてくれないか」
ケース2 クリスマス
萬屋の場合
「クリスマス?休みたいならいいぞ。旧世界では特別な日だったらしいしな」
ヴェンジェンスの場合
「クリスマス?私は仕事を頑張っている良い子だが、休暇を貰った事は無いな。働いてはくれないだろうか」
ケース3 年末年始
萬屋
「年末年始に働く訳無いだろう?俺の前職ですら年末年始は休みだった」
ヴェンジェンス
「年末年始でも命は変わらず失われる。働いてはくれないだろうか」
④「酩酊夜叉」
その日、セツは上機嫌だった。何故かと言うと、趣味の競馬で大勝ちしたからである。いつものギャンブル仲間にも自慢出来ないような大金を手に入れたのだ。この事をカロスに報告すると…
「…明日の私は大忙しだろうな」
という謎の呟きをされた。また、これをリーフェウスに報告すると…
「…明日世界が滅ぶな。さて、夢中病の件以来の仕事か…」
などと言っていた。
セツはその機嫌のままに、酒を数本と少し豪華な飯を買って来て豪遊した後、そのまま眠りについた。早朝、ぼんやりと意識が目覚めたが、自分が洗濯物を干す場所の前に立っているという事以外分からず、再び目を閉じた。
そして目が覚めた時、まずセツが思ったのは…
「寒いな……一体何が…」
セツが自分の様子を確認してみると、なんとセツは半裸だった。
「何…?」
いつもの黒を基調として、両肩に謎の黒い肩掛けがついた服は消え、生まれた時から巻いていたサラシだけの姿で律儀に布団の中にいた。
「ひとまず服だ…」
二日酔いによる頭痛の中、セツは普段通りの服装に着替えて状況を把握しようとする。
「これは…何故ここに」
食糧庫の中にはサラシ用の包帯が入っていたり、台所には切っている途中の肉があったりと、家内は混沌としていた。だが、それだけではない。『あるもの』が無いのだ。
「…私の槍は何処へ行った?」
いつも家内のどこかに放置してある槍が、今日に限って見当たらない。セツが外に出て探してみると…
「あ…」
家の裏にある物干し竿が外され、代わりにセツの槍がそこに横たわっていた。物干し竿となったセツの槍には、干しイカと柿とカロスがぶら下がっていた。
「…」
(????????????)
表面上はいつも通りの真顔だが、セツの内心には疑問しか無かった。
「やっっとお目覚めか…早く降ろしてくれ」
セツはもう2度と酒は飲まないと決めた。
…訂正しよう。『酔う程の』酒は飲まないと決めた。
ヴェンジェンス(というかカロス)が過重労働過ぎて笑う
あとセツのサラシは「生まれた時から変えてない」という訳ではないです。分かりにくくて申し訳ない




