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星命  作者: Isel


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第六十三話 幾千年の時を経て

豆知識

この世界の人々の中には、当然自分の能力や技に名前をつける人もいます。ですが、そういった人は少数派なので「能力に名前つける奴はロクな奴じゃない」という認識が広まっています。多分第2部とか続編とかで出てくるかも。

想定より早く墓参りが終わったラビアは、ふとした思いつきで深淵までやってきた。

「いつ来ても荒れてんね…」

ラビアは迷う事無く歩き続け、やがて廃墟街に辿り着いた。

「…」

倒壊した家屋やビルらしき物が散在する廃都を、ラビアはゆっくりと歩き回る。ここにはかつて沢山の人が住んでいたようだ。

しばらく歩いた頃、ラビアは横に長く伸びた廃墟を見つけた。門らしき物が入り口に設置されており、その端には『…校』と刻まれている。大部分はかすれていて読めなかったが、どうやらここは学校だったらしい。ラビアは、既に門としての役割を果たしていない校門だったものをくぐって中に入る。

「…ま、想像通りだね」

ラビアが想像通りと言ったその校内は、外見同様酷く荒れ果てていた。それは淵族によるものでもあり、4000年前に行われた神々の戦いによるものでもあった。教室内には散乱した椅子や、大破した黒板、歪んだ学習机…廊下には辛うじて紙であることが分かる何か、意外にも原型を留めている教室のドア、粉々になった窓ガラス…多種多様なものが散らばっていたが、そのどれもがラビアにとっては懐かしいものだった。彼も数千年前までは学生だったのだから。

「黒板って割れるんだ…」

学生時代は想像もできなかった光景にラビアは声を漏らす。

(ここにも…かつては人が居たんだ)

ラビアは原型を留めていない学習机にそっと手を添える。ラビアの脳内に、見知らぬ子供達の日の映像が流れ込んでくる。

「…」

(…彼らはどんな気持ちだったのだろう。ある日突然、なんの前触れも無しに、星諸共命を奪われるなんて…僕の権能で知れる物とは比べ物にならない程…無念だったろうに)

ラビアは引き続き荒れ果てた校内を散策する。時折、床からガラスの破片が砕ける音が聞こえる。

「お、階段」

2階に上がると、正面に音楽室のような場所が見えた。ドアがあった場所から見えるのは、床に散らばった額縁や、蓋の閉まったピアノ…1階の教室もそうだったが、半端に原型が残っている事でラビアの郷愁が加速する。

「…少し休もう」

ラビアは黒いグリッジの中から椅子を創り出し、そこに座り込む。当然ながら、何も考えていない訳ではない。ラビアは、人間だった頃に言われた事を1つずつ思い出していた。

『ーーーーは輪廻転生って信じてる?』

「…信じざるを得なくなったね。命の輪廻に干渉した事があるんだから」

『ーーーー…未来は変えられると思う?』

「思わない。結果は最初から決まってる。一見すると未来が変わったように見える出来事も…あまりこういう言葉は使いたくないけど、ただそういう運命だったってだけ…例外はいるけど」

ラビアは乾いた笑いを上げる。そして、再びかつて受けた質問を思い出す。

『ーーーーは…死にたいの?』

「少し違うね…僕は『生』に意味を見出せないだけ。どんな奴だっていつか死ぬ。それは避けられない…だと言うのに、何故君達は今を本気で生きる気になれる?せいぜい80年もすれば…何もかも無駄になるのに」

ラビアは、その問いにのみ人間だった頃とほとんど同じ回答をした。そして、彼はあの時返ってきた言葉を思い出す。

『じゃあ…ーーーーも生に意味を見出せれば、今を本気で生きる気になれるの?』

その問いに対する答えは…前生のラビアは出せなかった。しかしそれは、あくまでも『前生』のラビアである。

「…別に。偉そうに色々言ってるけど、全部僕が頑張らない為の口実だよ。ハハ…」

それが、今生のラビアの答えだった。

「…でも理解くらいはしてくれよ。『あんな真実』を知ってしまったら…どんな奴だってやる気無くなるだろ?」

そしてラビアは、最後にされた質問を思い出す。

『ーーーー……楽しかった?』

「…ノーコメント。これ以上君を思い出すと…手拭いが必要になってくるからね」

誰かは分からないが、その数々の質問を投げかけたのはラビアにとって大切な人だったらしい。

「…あ、そうだ。そういやもう1つ聞かれてたな」

ラビアはうっかり意識から抜け落ちていた『本当の』最後の質問を思い出す。

『ーーーー…私の事、覚えててくれる?』

その質問に、4000年前の彼は何と答えたのだろうか。

「…当然さ。その為にこの力を選んだんだ。幾千年の時を経ても…君達は僕の中で生き続けてる……って、なんか鳥肌立つな…」

その時、ラビアは深淵に来てからかなり時間が経っている事に気がついた。

「さて、そろそろ帰らなきゃね。遅くなり過ぎるとまたアイツら深淵まで来るだろうし…」

ラビアは校門をくぐって外に出ると、廃校舎を一瞥してから黒い穴を正面の空間に開けて、それに入って現世に帰った。帰った時は、もう日が沈んでいた。

「ふぅ…何気に丸1日絶食してたなぁ」

ラビアは萬屋の玄関の前でそう呟くと、扉を開きながらこう言った。

「ただいま」

ラビラビ君の人間時代の名前って何なんでしょうね

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