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星命  作者: Isel


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第六十二話 業報、忘却を赦さず

ラビア君の知識の権能ってすっっごいややこしくてですね

知れる情報は『能動的に知れる情報』と『勝手に頭の中に入ってくる情報』の2つに分類出来るんですが、能動の方の情報もその情報の発信源(例えば『誰かの感情』の場合、その『誰か』)に近づくと勝手に頭の中に入って来ます。これ作中で言いたかったんですが長くなりすぎるので苦肉の策としてここで言いました。許してください。

「じゃ、行って来るよ」

ある朝、ラビアはリーフェウスに告げる。

「…昨日の夜から言ってるが、何処に行くのかは教えてくれないんだな」

「当然でしょ?君に僕のプライベートに立ち入る権利なんて無い」

「そうだがな」

「明日か明後日には戻ると思うよ」

「ああ、行ってこい」

ラビアは玄関の扉を開けて外に出る。扉を後ろ手で閉めてから、小さく呟く。

「…久しぶりだな。墓参りは」

そしてラビアは宙に浮かび上がり、速度を上げて飛んでいった。目的地は郊外である。

数時間程飛び続けた頃、ようやく目的地が見えてきた。ラビアの眼前には、ところどころに僅かな民家の残骸が残る廃村が現れた。

「ここも懐かしいな…何千年ぶりだ?」

察しの良い人はもうお分かりだろうが、ラビアの目的地とは、かつて彼が虚無を中心とした雑多な感情のままに灼き滅ぼした村の跡地である。そこには、この世界で最初に出会った人間、エリザの墓がある。昔はちょくちょく墓参りに来ていたが、ここ最近は旅やらなんやらの影響で行けていなかったのだ。

(何度見ても…酷い有様だよ。まぁ…やったのは僕なんだけどね)

皆も知っての通り、ラビアの権能は他者の詳細な感情も知る事が出来る。その『他者』の中には、『死者の魂』も含まれている。

『どうして…』

『私達が何をしたというの…?』

そんなような声が、ラビアの頭の中に絶えず響き続けている。その声が響く度、ラビアの中の苦痛は加速する。とはいえ、『他者の詳細な感情』はラビアの権能で知る事が出来る物のうち『能動的に知る物』に分類される。それ故に、この廃村に近づきさえしなければその苦痛を味わう事にはならない。ならば何故、苦痛を味わう事が分かった上でここまでやって来たのだろうか。

「…僕が犯した罪を忘れない為さ。忘れたくても忘れられないけど…アイツらは僕と一緒に居たいと言ってくれた。なんなら、僕を愛してくれる者さえ居た。だからこそ、僕は犯した罪と向き合う必要があるし、それを覚えている必要がある。そうでもしなけりゃ…アイツらと一緒に居る資格なんて無いし、ましてや誰かに愛される資格もないからね」

ナチュラルにこちらと会話するのはやめていただきたいが、まぁ彼だし仕方ないだろう。

「さて…そろそろあの崖に行くか」

ラビアはゆっくりと歩き出す。その時、彼は意外な物を発見する。

「…へぇ」

初めてこの村を訪れた時に見た、あの世界観に合わない妙な存在感を放つ機械だ。4000年前と変わらない姿で、村の中を動き回っている。ラビアはその機械に近づいてみる。

「すごいねぇ…4000年前と全く同じだ。まだこの村を守ってるのかい?」

その問いに対する答えだろうか、機械は目と思われる部位を1回点滅させる。それが肯定である事は、恐らくラビア以外には分からないだろう。

「…そうなんだ」

そして、ラビアは少しの笑みと共にその機械に言う。

「だとしたら、君にとって僕は敵なんじゃないの?この村を滅ぼしたのは…僕なんだから」

その言葉を聞いた途端、機械の背面から沢山の砲門が出現する。内部で何かのエネルギーが高まる音が聞こえてくる。

「…」

ラビアは静かに戦闘態勢に入るが、やがてその機械は砲門をしまいこみ、ラビアに向かって何かの機械音を発した。そして、どこかへと歩き去っていった。

「ハハッ…アイツ…『お前を責めるつもりは無い』って言いやがった。機械のくせに…」

ラビアは気を取り直して、エリザの墓へと向かう。

「やぁ、久しぶり」

そこには、よく手入れのされた綺麗な墓石があった。

「今日はやる事多いから、あんまり居てやれないけど…供え物くらいは持って来たよ」

ラビアは亜空間からリンゴを取り出して、墓の前に置いた。

「ここに来るといつも思い出すよ…君と居た日々を」

ラビアは墓の横に腰を下ろし、独り言を呟き続ける。

「…僕ってさ、何の為に生きてると思う?任された役目も放棄して、その上世界を灼こうとして…無価値な命だとは思わないかい?」

ラビアの問いは虚空に響いて消えていく。

「でも最近は、僕の命にも価値はあるんじゃないかなって思い始めてるんだ。君や、君の後に出会った友人全てが僕にかけた『呪い』のおかげでね」

ラビアは立ち上がり、墓の掃除をする。

「それじゃ、また今度来るよ」

ラビアは飛び上がって指で数を数え始める。

「…あと238人か…帰るのは明後日になりそうだな」

それからラビアは、1日以上の時間をかけて全ての墓参りを実行した。そして最後の1人の墓参りも終わった時…

「…思ったより早く終わったな…そうだ」

ラビアは背後に黒い光輪を出現させ、周囲に誰もいない事を確認してから地面に真っ黒な穴を開ける。

「行こう、深淵に」

ラビアはその黒い穴に飛び込んだ。

次回に続きます

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