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星命  作者: Isel


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第五十七話 神意と真意

リーフェウス達が家の中に入ったのを確認してから、ラビアは来た道を引き返していった。名残惜しそうな素振りも、その他の雑多な感情も何一つ感じさせない様子で。ラビアは段々と人里から離れていき、気づけば静まり返った夜の森の中にいた。

「…これでいい」

ラビアは一瞬足を止めたが、すぐにそう呟いてまた足を動かし始める。

「彼らにもう僕は必要ない。この世界にも…」

ラビアは独り言を呟きながら歩き続ける。その時、背後から誰かが声をかけてきた。

「何処へ行くんだ?」

その声の主はリーフェウスだった。走って追いかけてきたのか、少し息が上がっている。

「…余計な世話だ。僕のこれからの事を、君に口出しされる筋合いはない」

「帰らないのか?」

「帰る?何処へ?あそこは君達の居場所だ。僕の居場所じゃない」

「何故だ?俺達は仲間じゃないか」

その台詞を聞いたラビアは、心底不快そうな舌打ちをする。

「チッ…僕に向かってそんな言葉使うんじゃねぇよ…」

リーフェウスは、さっきからラビアが目を合わせようとしない事が気になっていた。だが、今はそんな事を気にしている場合ではない。

「僕の計画の邪魔をした癖に…よく仲間だなんてほざけるね。本当…反吐が出るよ」

「何度だってほざいてやるさ。アンタが何を言おうと、俺にとってアンタはずっと大事な仲間だ」

その言葉が放たれた直後、ラビアの息遣いが一瞬乱れた。

「…僕が大事だって言うんなら、僕を引き留めるのは止めてくれ。…今更、君達の所に戻れもしない」

「もしかしてアンタ…前に俺達と戦った事を気にしてるのか?それなら大丈夫だ。俺も、他の奴らも、皆アンタの死を惜しんで…」

落ち着いた口調で話すリーフェウスに対して、ラビアはその言葉を遮るほどの勢いで叫ぶ。


「だからだよ!」


「…え?」

「僕がなんて呼ばれてるのか知ってるだろ!?全部分かってるんだよ!君達が…僕に殺されかけたっていうのに、まだ僕に情けをかけるほどのお人好し(バカ)だって事も!」

「…」

リーフェウスは、初めて見るラビアの激情に思わず息を呑んだ。

「君が…君達が…僕に優しさを見せるたびに…君達が愛しくなる。別れたくなくなるんだ…」

「ラビア…」

「もう嫌なんだよ…!親しい人と別れるのは!」

「…俺はアンタと同じ神だ。俺なら…」

「『僕の側にいてやれる』だろ!?不可能だ!結局皆僕より弱いんだから!皆僕より先に…死んでしまうんだから…」

その時、リーフェウスの脳内に閃光が走った。今までの疑問の答えが、全て鮮明に浮かび上がってきた。リーフェウスは前職でかなりの数の人を殺してきた。それ故か、敵に当てた一撃がその敵の命に届くかどうかを見極める事が出来た。だが、あのラビアとの戦いの時、自分がラビアに食らわせた斬撃は会心の一撃ではあったものの、いつも人を殺した時に感じる手応えとは程遠かった。にも関わらず、ラビアはその直後に死亡した。そしてその時、リーフェウスが抱いたものは…

「…まさか」

それに加えて、ラビアの過去の映像で見た『全員が救われる計画』という文言と、先程のラビアの一連の言葉…リーフェウスは、ある一つの結論に辿り着いた。

「アンタの…計画ってのは…」

一方、萬屋…もといリーフェウス達の家では…

「ふぅ…これで一通り案内はしましたかね…」

「ありがとうございます」

アルカディアという初めての後輩に対して、張り切って間取りの紹介をしているメイの姿があった。今、2人は2階にあるメイの部屋にいる。

「…メイさん。少し良いでしょうか」

真剣そうな面持ちで、アルカディアはメイに話しかける。

「…?はい」

「メイさんは…ラビアさんと仲が良いのですよね?」

「えっまぁ…そう…ですかね」

よく分からないがひとまずそういう事にしておいて、メイは続きを聞こうとする。

「実は私は…先刻の戦いにて、ラビアさんの願いを見たんです」

「ラビアさんの…願い?」

「はい。私が彼との対話を諦めて戦闘に移ったのは、彼の願いが理由なんです」

「ラビアさんは…一体どんな願いを?」

その時アルカディアの口から語られたのは、メイにとっては衝撃の事実だった。

「…え」

「間違いはないかと。ラビアさんと親交のある貴方ならば、彼を止められるかもしれません」

「…すみません、アルカディアさん。私…少し出かけてきます!」

メイは一階に降りて、玄関を飛び出していく。

「どうしたんだメイちゃんまで…」

「思春期ってやつか」

「絶対違うわよ…」

その時、アルカディアが詠唱をしながら階段を降りてきた。

「緩慢なる者に、迅速の祝福を…」

「アルカディア…何してんだ?」

「…私からの、せめてもの祈りです」

首を傾げる3人をよそに、アルカディアは心配そうに外を見つめていた。

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