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星命  作者: Isel


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第五十二話 傲慢の星帝vs憎悪の鉄棘

今言ってどうすんねんってなる豆知識

深淵の入り口は他の星にも開く事があります。

なんなら深淵関連の被害(酷め)が出ている星もあります

いずれ書こうと思ってます

リーフェウス達が現世に帰った頃、奈落を歩き回る1人の少年がいた。若干猫背で、目つきが悪めの少年…ヴェンジェンスのNo.4、ディザイアだ。前まで大剣に巻きついていた鋼鉄の茨は、有刺鉄線に進化している。特に意味はないらしい。

ディザイアは決して暇を持て余している訳ではない。上司であるカロスの指示で、奈落の見回りをしているのだ。

「…眠い…何だよあの指示は」

『あの指示』というのは、夢中病への対策としてカロスが部下に下した『寝るな』という指示の事だ。ちなみにディザイアはカロスの話をほぼ聞いておらず、指示の理由は分かっていない。

「ああ…イライラするぜ…何だって俺がこんな思いを…」

眠い目を擦りながら歩いていると、前方に白いローブを着た男が現れた。

「ご機嫌よう…我が元同僚よ」

かつてカレアスの実権を握ろうとし、なんやかんやあってカロスに殺された筈の人間。アステールだった…が、

「……誰だお前。名乗れよ」

ディザイアは全く覚えていなかった。

「誰だお前とは失敬な!本来であれば貴様のような下民は顔を見る事すら難しいような身分なのだぞ!私は!」

「だから名乗れって言ってんだろ」

「ヴェンジェンスNo.9『星帝』のアステールだ!」

その時、ディザイアは手をポンと叩いて言った。

「ああ思い出した。あの雑魚か」

ヴェンジェンスの番号は実力順である。状況に応じて多少の変動はあれど、4位であるディザイアからすれば9位のアステールなど確かに雑魚でしかなかった。

そして、それと同時にディザイアは思い出した。この男がどのような行いをしたのかを。

「お前…次顔見せたら殺すって言ったよな」

ディザイアは、かつて世界の全てに憎悪を向けていた時のような声でアステールを威圧する。

「てかお前死んだんじゃねぇのかよ」

「よくぞ聞いてくれた…私は確かにあの時、主…いや、タナトスの手によって命を落とした。だがあのお方…アルカディア様が私を生き返らせてくれたのだ!」

「誰だよソイツ」

「まぁ正直なところ、私も詳しくは知らない。ただ、恐らく私の支持者だった者がアルカディア様の元へ行き、願いを叶えて貰ったのだろう。そして私は再びこの世に生まれたのだ!私の邪魔をしたあの賊共と、私を殺したタナトスに復讐する為にな!」

アステールが声高に宣言した瞬間、鉄の棘が地面を走ってアステールに向かっていった。

「お前の近況なんざどうだっていいんだよ…俺はお前が嫌いなんだ」

「奇遇だな!私も貴様が前から嫌いだったのだよ!」

アステールは無数の光球をディザイアに向かって飛ばす。ディザイアの方は、その光球を鉄の茨を用いて弾いていく。

(コイツ…こんな強かったか?)

ディザイアの疑問は正しい。アステールは『アルカディア様』とやらの加護を受け、実力が底上げされている。アステールはそれがあるから強気だったのだ。いくらアステールが傲慢だからといって、彼も馬鹿ではない。ディザイアとの実力差くらい分かっていた。だが、その実力差を埋められた今、奥手になる必要はない。

「その程度か!?『復讐鬼』が聞いて呆れるな!」

皆さんはもうなんとなくお察しだろうが、ディザイアは挑発に弱い。その台詞を聞いた瞬間、アステールに向かってとてつもない量の棘と茨が飛んでいく。

「アステール様!援護します!」

だが、どこからか出てきた2人の男によってその攻撃は防がれた。口調から察するに、アステールの従者といったところだろうか。

一気に3対1となったディザイアだが、その顔には焦りは見えず、むしろ何かを思いついたかのような表情をしていた。2人の男がアステールと同じような光球を飛ばしてくるが、ディザイアはそれを難なく躱し、そのうちの1人に近づく。

「俺を殺そうとしたって事は…俺に殺されても文句はねぇよな?」

ディザイアは男の1人の四肢に茨を突き刺して動きを止めた。

「見せしめだ」

「ま…待て、助け…」

男の命乞いを無視して、ディザイアは有刺鉄線が巻きついた大剣で男の顔面を叩き潰し、そのまま鋸引きにした。

「う…うわぁぁぁぁ!」

もう1人の男は悲鳴を上げながら逃げていく。お忘れかもしれないが、ディザイアは元々スケイドル全域で1000年以上に渡って語り継がれるほどの殺人鬼である。確かに今は丸くなったが、内に秘めた残虐性は未だ健在なのだ。

「さて…次はお前の番…」

ディザイアが言い終わるより先に、無数の光球がディザイアに飛んでいく。突然の出来事に、ディザイアは防御が間に合わなかった。

「熱っ…!」

光球の嵐は、舞い上がる土煙で周囲が見えなくなるまで続いた。それだけ、先程の『見せしめ』がアステールに恐怖を与えたのだろう。

「ハァ…ハァ…ハハ…無様だな。あんな大口を叩いた割には大した事無かったな」

アステールが勝ち誇っていると、土煙の中から飛んできた茨がアステールの右足を貫いた。

「ぐ…!まだ生きていたのか…!」

「そう簡単に死ぬかよ…俺は2000年以上戦い続けてんだ…奥の手の1つくらい持ってる」

そう言ったディザイアの身体は、目を何重もの棘で覆い、背中から四対の茨が生えた異形となっていた。

(クソ…想定外だ…ここはひとまず退却を…)

ディザイアの変化を目の当たりにして逃げようとするアステールだったが、何故か茨が刺さった方の足に力が入らない。情けなく地面に尻餅をついたアステールを、蔑むような目で見下ろしながらディザイアは言い放つ。

「他人を苦しめてきた割には苦痛への耐性がねぇんだな」

そしてディザイアは、重い音を立てて大剣を構える。その姿はさながら処刑人のようである。

「ヒッ…」

「死ね」

ディザイアは大剣を躊躇なく振り下ろし、アステールを殺害した…はずだった。大剣がアステールに命中する直前、地面に光球が放たれ、再び土煙が辺りに立ち込めた。

「…逃げたか。まぁいい…アイツは小物だからな。当分奈落にも顔は出さねぇだろ」

そしてディザイアは、仲間や友人の待つ屋敷へと帰っていった。

前回のタイトルの意味をちょっとだけ解説

過去編読んでくれた人なら何となくわかると思いますが、ラビア君にとってこの世界は未だ惨苦をもたらす物でしかないんですよね。その「惨界」に「再臨」したラビア君は悪神を前にして何を思うのでしょうか。

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