第六話 空から
政治とか宗教の内部とかのことはようわからん
〜前回のあらすじ〜
突如として空から落ちてきた少女とヴァルザが激突した。
「おお、空から女の子が」
「なかなかの高速落下だったね…」
「この子生きてる…よな?」
「死んでたら笑えないわ…」
口々に感想を述べる中、1人の男が勢いよく立ち上がった。
「なんで誰も俺のことは心配しないんだよ!」
「気の毒だな。誰か声をかけてやればよかったものを」
「全員この思考なのは集団としてどうなのさ」
しばらく話していると、落ちてきた少女が目を覚ました。
「あれ…ここは…?」
その時、少女以外の全員が一瞬固まった。なぜならば、全員うっすらと「この子死んでるな」と思っていたからである。
「ここはカレアスの真下だよ。君は多分そのカレアスから落ちてきたんだ」
「ああ!そうでした!突然ですが私、助けていただきたく…いやまず名前から名乗った方がいいですか!?それともここに落ちた理由…」
「あの…少し落ち着いてくれない…?」
「はい、水」
灰蘭が差し出した水筒を、その少女はゆっくり飲んだ。そして一息つくとすぐに礼を言い、名を名乗った。
「ありがとうございます。私、メイって言います」
そこからはいつも通り全員の自己紹介と、旅の目的を話した。
「なるほど…神様を探しにカレアスに…私の兄なら何か知ってるかもしれません」
「兄弟がいるのか」
「はい…あ!先程も言いましたが皆さんどうか力を貸してくださいませんでしょうか?」
「別にいいよ。内容によるけど」
そう言ったラビアの後頭部をヴァルザとリーフェウスが引っ叩いたのは言うまでもない。
「あのバカは気にしなくていいから具体的な内容を教えてくれないか?」
「はい。先程言ったように、私には兄がいるんです。それで…その…私の家は教皇の家系なので、両親が亡くなった今、兄が即位するはずだったんですが…」
「待った、教皇?あの国って確か聖教会が政治も行ってるって前にラビアに教えてもらったんだが…」
「てことは君、実質的には王女様なのかい?」
「はい…」
他の面々も感嘆の声を漏らす中、少し恥ずかしそうにメイが言った。
「話を戻しましょう。両親が死に、兄が教皇となるはずだったんですが…兄は今訳あって檻の中です」
「訳も何も…なんかやっちゃったんでしょ?」
「違います!彼は潔白です!」
「じゃあなんでさ…教皇の子ってことは多少なり人望とかあったんじゃないの?」
「…嵌められたんです。教皇の側近である『アステール』という人物に…」
「冤罪ってことかい?全く…」
「そういうことなら手を貸さない理由は無い。皆もいいか?」
その問いに対して、全員が頷いた。
「そういえば、異能はあるのか?」
「前から思ってたけど挨拶感覚でそれ聞くのやめた方がいいと思うよ…」
「異能はないんですけど…私、他の人の異能を知れるんですよ」
「何それすげえ。俺の異能もわかんのか?」
「はい。魂に関連するものでしょうか…?」
「当たってんな…じゃあリーフェウス見てもらえよ。こいつのは地味にすげえぞ」
「ふむふむ………ええ!?本当にすごいですねリーフェウスさん!」
「そんなにか?」
「すごいですよ!『能力の創造』なんて!」
その一言を聞いた瞬間、全員が無言のまま驚いた。あのラビアですら「予想外だ…」とでも言いたげな表情をしている。
「え?俺の異能は能力の『複製』じゃなかったのか?」
「僕に聞かれても…初めて会った時のあれはあくまでも推測だし」
「でも一応条件もあるみたいですね。リーフェウスさんが心の底から『できる』ってイメージを沸かせないと能力は作れないそうです」
「それにしたってとんでもねえな。それこそ神みてえなもんじゃねえか。あっそういえばラビア、お前の異能ってなんなんだよ」
「言葉にして説明するのすごい大変なんだよね…大雑把に言うと、『熟語で表せるものを操れる』ってやつ」
「お前も大概やべえじゃねえか。そんな奴らの側で旅してたのかよ俺達は」
「ジュクゴ?なんだそれ」
「いいですか?リーフェウスさん。熟語というのは…」
メイがリーフェウスに熟語を教えた後、作戦会議が始まった。
「皆、カレアスに入る方法を考えよう」
「メイちゃんは偉い人の妹なんだろ?なら顔パスでいけたりしないかな」
「えっと、あなたは…」
「硝光って呼んでくれて構わないぜ」
「硝光さんですね。そもそも私が下に落ちてきた理由が…その…罪人の妹として追われていたところ、端まで来すぎて足を踏み外してしまったからなんです…」
「ということは、俺達も国に入れば一緒に追われるということか」
「すみません…」
「構わない。引き受けると言ったのは俺達だ」
何十分か頭を捻っていたところ、ラビアが手を挙げた。
「上昇気流に乗って上に行くっていうのはどう?」
「あんたもバカなこと言う時があるんだな。こんなところで上昇気流なんて起こる訳がないだろう」
「僕出せるよ」
「ド◯えもんかよアンタ」
「でも今日はもう遅いからさ、明日にしようよ。宿代は僕が出してやるからさ」
「…やっぱド◯えもんだろアンタ」
そうして仲間がまた1人増えたリーフェウス達は近くの宿に向かった。
キャラクタープロフィール④
名前 硝光
種族 人間
所属 主人公陣営
好きなもの 運動 甘いもの
嫌いなもの 幽霊 辛いもの 虫
異能 なし(雷の魔力は扱える)
作者コメント
名前は割と気に入ってます。「何人か女キャラがいた方がいいよな」って思ってから最初に考えたキャラ。
初期案だと名前が「昇光」だった。なんで変えたのかは謎。