第四十九話 役目を継ぎし者
3人の仲間が夢中病という病に罹った翌日、夢中病の流行が何らかの神の仕業である事が判明した為、リーフェウスはメイと共に星の守護者であったラビアに代わってその問題の解決策を考える事になった。ちなみに、寝てしまうと夢中病に罹ってしまうので2人とも一睡もしていない。
「全くもって見当がつかないな」
リーフェウスは清々しく言い切った。
「…こういう時、ラビアさんはどうしてたんでしょうね」
「さぁな。アイツの事だから、10分もかけずにさっさと終わらせてるんじゃないか?」
あの常識外れの化け物なんて参考にならない。だが、2人で考えるにはあまりにも難しい問題だ。しばらく頭を捻った頃、メイが思いついたかのように言った。
「とりあえず、誰か呼んで考える頭を増やすのはどうでしょう?セツさんとか」
「それ昨日カロスに言ってみたんだが…何でも今日のセツはパチンコとかいう物をやりに行っているらしい」
「えぇ…」
メイは呆れ果てたような声を漏らす。
「パチンコって何だ?」
「ギャンブルですよ…」
「クソ野郎が…」
またしばらくして、今度はリーフェウスが何かを閃いた。
「あ、カロスが昨日言ってた『夢幻教』って奴らに話を聞くのはどうだ?」
「その人達が夢中病と関係あるかは分かりませんし…どのような方々なのかの情報も無いのでやめた方が良いと思います…」
「駄目かぁ…」
そして、ああでもないこうでもないと話し合っていると、いつの間にかカロスが来る予定の時間が近づいていた。
「…不甲斐ないな。あそこまで偉そうに『任せろ』とか言っておいて…」
「そんな…リーフェウスさんは精一杯頑張ってますよ!」
「ありがとう…だが何も思い浮かばなかった以上、カロスの『最終手段』とやらに頼るしかないな…」
「どんな方法なんでしょうね?」
その時、『ガチャリ』という音を立ててドアが開いた。
「2人とも、何か案は出たか?」
その問いに、2人は沈黙で答える。
「…うん。君達の事だから、頑張りはしたんだろうな」
「すまない…アンタの言う最終手段とやらに頼るしか無さそうだ」
「どんな方法なんですか?」
「……私自身、あまりこの手を使いたくはなかったんだがな…」
その次にカロスから放たれたのは、メイとリーフェウスに人生史上最大の驚きを与えるものだった。
「…ラビア殿を、蘇生する」
「ええええええええええええええ!!?」
メイは思わず叫ぶ。リーフェウスも声に出してはいないものの、かなり驚いているのは見て取れた。
「驚くのも無理はないが…実際それしか方法はない」
「それは分かったが…その…大丈夫なのか?仮にも世界を滅ぼそうとした存在だぞ?」
「…確かにラビア殿は、以前に世界の敵として戦った相手だ。その上最上位の神…いや、最早彼は神すらも超越した別次元の存在だと言えるだろう」
「そんな奴を蘇生すると?」
「不安なのはよく分かる…だが…」
カロスの言葉を遮って、メイが声を上げる。
「あの…少し良いですか?」
「どうした?」
「その…確証は無いんですけど…私はラビアさんを蘇生しても大丈夫だと思うんです。それに…ラビアさんの過去を聞いた時に聞きそびれた、『計画』についても知りたいですし」
リーフェウスは、あの戦いの中で見た映像を…ラビアの過去を思い出していた。
「…そうだな。アイツは確かに世界を厭悪してはいたが、それは世界に対する慈愛故の物だからな」
「なんだか悲しいですね…世界を愛していたからこそ…世界から苦しみを無くす方法を誰よりも真剣に考えた結果、愛していた世界を憎む事になってしまったなんて…」
「彼の過去か…私にも話してくれないか?」
それからリーフェウスは、ゆっくりとラビアの過去を話した。
「…なるほどな。とすると彼は…いや、今はよそう。それより、君達が賛成してくれてよかった。彼の蘇生は…今の問題を解決する為だけのものではないからな」
最後の方の言葉に、2人は首を傾げる。
「どういうことですか?」
「簡単な話だ。彼の存在は、他の悪神などに対する抑止力となっていたのだ。彼の死が広まるのはそう長くかからない。この世界に数多いる悪神全てを、リーフェウス殿1人でどうにか出来るとは流石に考えにくいだろう?」
「へぇ…そうなんですね」
「まぁ、やる事は決まったんだ。早く行こう」
リーフェウスは『蘇生』という言葉に僅かな違和感を抱いていたが、気にしない事にして出発した。




