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星命  作者: Isel


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第四十七話 夜の終わり、夢の始まり

豆知識

セツは嫌いなものに「カロス」を挙げていますが、あれはトムとジェリー的な「嫌い」です。何だかんだ仲良いんですアイツら

リーフェウスが萬屋を開いてから2週間ほど経ったある夜、米を食べながらリーフェウスは言った。

「思ったより客来るな」

ちなみに、萬屋が立っているのはクロノケージとスケイドルの中間くらいの位置にある街の中である。『大都会』というほどではないが、それでもそこそこ人が住んでいるので客はそれなりに来る。

「今までほとんど戦い関連の事しかやってこなかったから、割と新鮮で面白いけどな」

「アタシもヴァルザに同意だぜ」

「この家も随分快適ね」

リーフェウスには『家族』といった概念が理解できない。正確には、そういった概念を知らない。理由は簡単、そもそも家族どころか血縁者すら存在しないからだ。それでも、人が『家族』と過ごす時間を大切にする理由が、今なんとなく分かった気がした。

「じゃあ、アタシは食後の運動をしてくるぜ」

「たまには私も行ってくるわ」

「おう、俺はもう寝るぜ」

硝光と灰蘭は外に出かけ、ヴァルザは部屋に入っていった。

「…よく飯の直後に走れるな」

リーフェウスが感心していると、メイが目の前にやってきた。

「あの…リーフェウスさん」

メイは、少し遠慮気味に言う。

「えっと…いつ言うべきか…迷ってたんですけど…」

「何だ?」

「…すみません!私…ラビアさんの正体知ってたんです!」

「…え?」

よく見ると、メイは大分汗をかいている。本当に勇気を出した決断だったのだろう。

「いつ知ったんだ?」

「…スケイドルで私が迷子になってしまった時です」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

スケイドルにいた時。ある日の夜、森の中をメイとラビアが歩いていた。

「ねぇ、メイ。僕はね…」

「はい?」

「……僕は、人間じゃないんだ」

「やっぱり」

「だよね…驚くのも無理は……待って、今『やっぱり』って言った?」

「は、はい…」

「え…え?何かボロ出した?僕…」

「いえ…でもなんとなく…浮世離れしてるというか…その割には私達と変わらない年齢っぽいですし…もしかしたらな、って」

その時のラビアは、見たことないくらい取り乱していたという。

「…じゃ、じゃあ僕の具体的な正体は…」

「それは…分かりません」

ラビアはいつもの調子に戻って話す。

「僕は君達が…いや、リーフェウスが探し求めている存在。アルヴィースだよ」

「…ええええええええええええ!!?」

「ハハハ…そりゃ驚くか」

「…どうして、正体を隠してるんですか?」

「それは……全部は言えないな。代わりと言っては何だけど…僕の身の上話を聞いてくれるかい?」

それからメイは、ラビアの過去を聞いた。…メイは共感力が高い。その話を聞いたメイは、思わず涙してしまったという。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「なるほどな」

「あの…すみません…怒って…ますよね?」

「いや全く」

「えっ?」

「…あの戦いの中で、俺もラビアの過去を見たんだ。それが何かに繋がる訳じゃないが…咎める気にはならない」

「…」

突然、メイの目から涙が零れ始めた。リーフェウスは驚きのあまり少し取り乱す。

「え…どうしたいきなり」

「すみません…ただ…私がラビアさんの苦しみを…もっと和らげてあげられる存在だったら…」

「メイ…」

「何度も元気をもらったのに…私は…何もしてあげられなかった…」

メイは机に顔を伏して静かに泣き続けていた。そんな時、玄関の扉が開いた。

「ただいま!」

「硝光、もう夜よ」

「あれ?メイちゃんこんなとこで寝たら風邪引くぞ?」

「さっきまでは起きてたから、すぐに目を覚ますだろう。アンタらも早く寝たらどうだ?」

「ああ、そうするぜ。おやすみ」

「また明日」

「ああ」

その対応は、リーフェウスなりの気遣いであった。灰蘭と硝光が部屋のドアを閉じた音が聞こえると、メイはゆっくり顔を上げた。依然として黙っているメイに、リーフェウスは言う。

「…さっきの話だが、1つ良いか?」

「はい…」

メイはいつもより暗めな声で答える。

「ラビアは見返りを求めるような奴じゃない。性格に多少難があるのは確かにそうだが…それでもアイツは見返りを求めて人に親切にするような奴じゃない。そう思わないか?」

「…はい」

それは、ラビアの過去を見た上でのリーフェウスなりの結論だった。

「きっとアイツなら『君如きにこの僕が恩を売るとでも思ったのかい?君からの見返りなんて、端から期待しちゃいないよ』って言うだろうな」

そのリーフェウスの声真似が想像以上に似ていたのか、メイは思わず笑みを溢す。

「ふふ…それに、あの人ならきっと『君如きが僕の気持ちを理解できるって?片腹痛いね』って言うんでしょうね」

『君如き』という言葉がラビアの口癖みたいに認識されていることはさておき、その妙な解像度の高さに、2人は静かに笑いあう。いつの間にか、窓の外に見える景色は光を帯び始めていた。

…夜明けと共に、新たな脅威がやってきた。

豆知識

ラビア君(故)の知識の権能は強いて例えるなら『一度調べたものを一生表示し続ける上に必要無い情報も自動で検索する検索エンジン』みたいなものです。ただ、脳の構造は我々と同じな上、脳に入ってる情報の量が膨大なので、たまに何かを忘れる事もあります。

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