第四十六話 辛勝の後、悠拓の神人は
豆知識
この世界は国境がありません
ついでにカレアス以外は国王的な存在もいません
ラビアとの決戦から1週間。拠点にある焚き火の前には、深刻そうな顔で俯くリーフェウスの姿があった。
「アイツ…やっぱ気にしてんのかな」
「…言いたかねえけど…手を下したのはアイツだしな」
「…ここは仲間として、寄り添ってやるか」
硝光はリーフェウスに近寄り、背中に手を当てて優しそうな口調で話しかける。
「何を暗い顔してんだ?アタシに話してみろよ」
「硝光か…」
リーフェウスは、比較的元気の無さそうな声で答える。
「実は…」
「おう」
「深淵に…財布落としたんだ…」
その瞬間、ヴァルザと灰蘭と硝光の拳がリーフェウスに飛んでいった。
「おい何をするんだ」
「そんな事かよ!アタシの心配返せ!」
「ああそうだな…コイツはそういう奴だったな…」
「無用の心配だったわね」
「まぁ、何も悩みがない訳じゃない」
リーフェウスは真面目な表情になって続ける。
「ラビアは死ぬ間際に言い残した。『この星を頼む』と。だが…その方法が思いつかない」
「あなた…『任せろ』とか言ってたわよね?」
「誰に似たんだろうな」
全員で頭を捻っていたが、スケールが大きすぎて案が出にくい。
「…急いで考える事でもない。俺は辺りを散歩してくる」
リーフェウスは森の中へと足を踏み入れた。気分転換の為に来た場所だったが、特に何かが変わる訳でもなかった。リーフェウスはため息と共に、恩人の顔を思い浮かべる。
「団長…アンタならどうする?」
そう呟いても、具体的な案は出てこない。
「…いや、悩むなんて俺らしくないな。いつも通り、直感でいこう」
そして、リーフェウスは仲間達の元へと戻った。
「お、何か思いついたのか?」
「ああ。だが、その準備の為に数日ほど必要なんだ。待っていてくれ」
「ええ、分かったわ」
リーフェウスは頭上に『瞬』の文字を浮かべてどこかへ走っていったが、すぐに帰って来た。
「忘れ物か?」
「ああそうだ!メイ、悪いが一緒に来てくれ」
「へ?私ですか?」
「多分アンタにしか出来ないんだ」
「分かりました…」
2人は街のある方角へと向かった。
「…何するつもりだろうな」
そして4日後…
「あ、帰って来た」
「やっと準備が整った…」
「何してたんだ?」
「それは見てからのお楽しみだな」
メイの顔がやたら疲れていそうな事が気がかりだったが、全員はリーフェウスの案内に従って歩いていく。
「よし、着いたぞ」
「これは…」
全員の目の前には、何の変哲もない一軒家があった。
「家?何で家なんか…」
「家になるのは2階だな」
「1階は何に使うのよ」
リーフェウスはニヤリと笑って答える。
「団長…俺の恩人に倣ってだ。『萬屋』を開こう」
「「「萬屋?」」」
3人が声を揃えて言う。
「ああ。俺の直感に従って…だ。初めから世界の全てを守るなんてはっきり言って俺には無理だ。だから、まずは手の届くところから守っていく…そうすれば、日銭も稼げて一石二鳥だろう?」
「なるほどな…異論はねえけど…なんでメイはこんなに疲れてんだ?」
「ハァ…この人…建物を買う為の手続きとか全く知らなかったんですよ!それ全部私がやったんですからね!」
「…あなた、メイに一生かけて感謝しなさいよ」
「そんなにか?感謝はしてるが…」
「てか、資金はどうしたんだよ?」
その時、一行の脳内に少し昔の記憶が浮かび上がった。
「…あの時メイの兄貴に貰った金か!」
「ああ。家を一軒買っても尚お釣りが来るほどの金を貰ったからな」
雑談はこれくらいにして、全員はひとまず中に入ってみる。
「感動が込み上げてくるな…」
「もう野宿しなくて良いと思うと…確かに気が楽になるわね」
それぞれがベッドで寝れる喜びを口にする中、リーフェウスは1人別の事を考えていた。
(ラビア…俺は俺のやり方で、この星を守っていく。だから…数千年分、ゆっくり眠れ)
なんか最終回みてぇなノリですが、全然まだ続くのでご安心ください