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星命  作者: Isel


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第?話 呪い(後編)

豆知識

三神柱の権能は基本的に2つの権能を組み合わせて使う前提で設計されてます。まあ勿論単体でもクソ強いんですが。

1000年以上もの間親しい者との別れを繰り返し、苦痛に身を灼かれながら生き続けたラビアの精神は、徐々に歪んでいった。当然、世の苦しみを無くすための手立てを考えて、実行に移したりもした。例えば、悪事を働いた者を片っ端から消していく、といった方法を取ったことがあった。だが、その者が悪人だということはラビアしか知らず、側から見れば『ある日突然人が真っ二つになった』という怪現象でしかなかった。その怪現象に人々は恐怖し、その恐怖は巡り巡ってラビアの苦痛となった。

また、自身の権能を用いて世の中の『苦痛』という概念そのものを消し去る、という方法を取った事もあった。すると、権能によってラビアに伝わる苦痛は確かに減った。だが、今度はラビア本人が苦痛を感じるようになった。痛みも何も感じず、ただ笑って生き続ける人間…いや、そもそもそんなもの人間とは呼べない。そんな人擬きを自分自身が作り出したのだ、という罪悪感がラビアを苦しめていた。

「…どうすれば、この世界から苦しみが無くなるんだ」

そんな事を考えていた時、ラビアの脳内に1つの情報が入ってきた。

「…仕事か」

頻度こそ高くないものの、1000年も悪神と戦い続けていれば流石にもう慣れるものだ。いつも通りにその神の元へ行き、しっかりと悪意を確認してから両断する。最早流れ作業だ。

「…」

ここ最近、ラビアは葛藤していた。自分やその他の人間を苦しめる世界を…何故自分は必死になって守っているのだろうか、と。

光の粒子に分解されていく神の亡骸を見ながら、ラビアは呟いた。

「…君は良いよな。死ぬ事が出来るんだからさ。羨ましいよ…もう苦しまなくて良いなんて」

その時、ラビアはある事を閃いた。

「…そうだ、何でこんな簡単な事に気がつかなかったんだ。何もかも無くなってしまえば…もう誰も苦しまずに済む。僕も…」

ラビアは決心した。この世界を滅ぼそうと。どんな痛みも、苦しみも、全てこの世界が無くなれば同時に消える。もう、それしかない。そう思っていた。

だが、ここで1つの壁が立ちはだかった。アダムカドモンである。彼もまた、世界を守る為に生まれた存在であるが故に、ラビアの行動を見過ごす訳にはいかなかった。

「世界を滅ぼすだと?それは本気か?アルヴィース」

「冗談だと思うかよ?僕は本気さ…僕にはそれが出来るんだから」

「…俺は…お前とは戦いたくない。お前の事は…大切な友人だと思っている。お前とは友人のままでいたい」

「…じゃあお前にどうにか出来んのかよ!僕にすらどうにも出来ないことを、君如きが?寝言は寝て言えよ!少なくとも君の十八番(綺麗事)じゃどうにも出来ないだろうけどね!」

ラビアの発言は驕りなどではない。紛れもない事実だ。それは、アダムカドモンもよく分かっていた。

「アルヴィース…どうしても…やると言うのか?」

「何度も言わせんなよ…!もう僕の心は決まったんだ!」

それから、ラビアとアダムカドモンの戦いが始まった…が、結果など言うまでもないだろう。

「僕を侮るなよ…権能もまだ使いこなせないような青二才相手に…僕が負ける訳ねぇだろ…!」

勝負はラビアの勝ちだった。だが、その様子から見るに多少は苦戦したようだ。理由としては、アダムカドモンは『進化』を司る神だからだ。つまり、『進化』を重ねる事でラビアも知り得ない物を生み出す事も可能なのだ。しかし、いつぞやのラビアが言っていたように、彼は付け焼き刃でどうにか出来る存在ではない。アダムカドモンの敗因は、生まれながらにして神であるが故に感情をよく理解できず、『意志』の方の権能が使えなかった事だった。

ラビアは、このままあの村のように世界を灼くつもりだった。だが、ラビアの足を止めたのは、微かに聞こえてきた掠れた声だった。

「もし…」

「…まだ生きてんの?しぶといなぁ…」

「もし…お前の役目が…俺の物だったら」

その言葉を聞くと、ラビアは魔力を集めていた右手を下ろした。

「もし…お前の苦しみが…俺の物だったら……俺は…お前を…救いたかった…すまない…」

そう言い残すと、アダムカドモンの身体は消えた。

ラビアは自身の行いを酷く後悔した。一時の感情に任せて、唯一の同族の友人をこの手で殺害してしまった事を。殺さなくたって…他の道があったかもしれないのに。

「どうして…何もかも…上手くいかないんだ…」

ラビアはしばらくの間考え込んでいた。そして、思いついたのだ。全員が救われる計画を。

「…分かったよ。君が言ったんだから、責任は取れよ」

まず計画の第一段階として、ラビアはこの世界に存在するルールを幾つか書き換える事にした。その最たる例が『後継体』である。

「後継体ってシステムが1番邪魔だ…僕らの力が他人に受け継がれるだなんて…ひとまずこれを消そう」

ラビアは後継体の仕組みを削除し、次に新たなルールを創り出すことにした。

「神を命の輪廻から除外しよう。神は『死ぬと数千年の時をかけて新たな人格と共に同じ神として生まれ変わる』これで良い。あんまり派手に変えすぎると、世界にどんな影響を及ぼすのか分からないからね」

こうしてラビアは『計画』の準備を終えた。馬鹿げた話だと思うかもしれないが、これがラビアなのだ。『アルヴィース』という神は、これほどまでに強大な存在なのである。それから3000年。ラビアは依然として苦痛に灼かれ、幾多の別れを繰り返しながら生き続けた。

そして、ある日のこと。ラビアの脳内にまた1つの情報が入ってきた。

「…やっとか。待ちくたびれたよ」

ラビアは目的地に向かって歩いていく。すると、前方の奥の方から、牛のような魔物と1人の青年が猛スピードで向かってくるのが見える。

そして全ては、旅立ちの日に繋がる。

実は前回あえて言わなかったんですが、ラビア君が寝れなくなったのは他にも理由があります。よければ考察してみてくださいね。

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