第四十一話 戦いの前に
今更なんですが、私がよく書く「イメージした言葉」は左から順にイメージした割合が大きいです
「…明日だな。約束の日」
ラビアが設定した約束の日まで、残り1日を切った。だが、拠点にいるのはリーフェウスとヴァルザの2人だけであり、他の仲間はここにはいない。理由は単純で、今までで1番大きな戦いになる事を見越して、万が一の事が起きた時の為に自身の故郷へと戻っているのだ。ちなみにこれはカロスの提案である。
「案外…緊張とかするもんだと思ってたけどよ…全くしねえな。お前はどうだ?」
「俺もだな。というか…アンタは行かなくてよかったのか?もう亡くなってるとはいえ…一応墓参りとかやるもんじゃないのか?」
「俺は家族に弱みを見せたくねえんだよ。次に会う時は寿命で死んだ時って決めてんだ」
「…そうか」
「他の奴らは今頃…何してんだろうな…」
その頃、スケイドルにて。灰蘭と硝光は自身の育て親である平安の家にいた。
「おお、2人とも。今回は帰ってくるのが早かったのう」
「ああ…ただいま、じいちゃん」
2人の表情は、普段と比べて幾らか暗かった。…いや灰蘭は割といつも通りだったが、それでもどこかがいつもと違った。
「何か…あったのか?」
「え?」
「まぁ何かはあったんじゃろうな…儂の長年の勘が言っとる。安心せい、余計な詮索はせんよ」
「おじいちゃん…」
「ただ、これだけは覚えておれ。儂はいつまでも…お前達の帰りを待っとるぞ。この家でな」
「…うん、ありがとう」
「ありがとな、じいちゃん」
一方、久しぶりにカレアスに帰ったメイは…
「おかえり、メイ」
「あ、兄上…」
「急に帰ってくるだなんて、どうかしたのかい?」
「なんか…いつもと様子が違いませんか?いつもだったら…その…私の姿を見るなりこっちに走ってくるのに」
「私が説明しましょう」
そう言ったのは、メイの兄の側近だった。
「教皇様はここ最近、大量の仕事に追われており一睡もしていないのです」
「ど…どれくらいですか?」
「5日です」
「5日!?」
「ええ…ですので、今はそっとしてあげてください」
「はい…兄上、どうかお元気で」
一方奈落では、カロスの自室にてカロスと灰縁が話していた。
「…という訳だ」
「いやいきなりそんな事言われても…私にどうしろって言うのよ」
「私がいない間の仕事を任せたいという話だ」
「ハァ…まぁいいわよ。追加の報酬を忘れないでよね」
「…ディザイアに頼んでくれないか」
「あなたとうとう彼を財布扱いし始めたわね…」
「いつか返そうとは思ってるんだ…」
奈落組はこんな時でもいつも通りである。
そして、セツは…
「…」
セツは最近自力で小さな家を建てた。本人としては別に野宿でもよかったのだが、何となくまた屋根の下で暮らしてみたくなったのである。ちなみに家の裏には、かつて自身で埋葬した恩人…マリの墓がある。
「些か久しぶりか」
そう言うとセツは懐から瓶を取り出した。
「…そういえば、お前は酒が飲める年齢ではなかったな」
セツはその酒を一口飲む。
「私はもうすぐ、大きな戦いに臨む。この世界の命運すらも懸ける程の…大きな戦いにな」
セツは槍を地面に刺し、墓の前に座り込む。そして、セツは恐らくマリが口にするであろう質問を予想して答える。
「理由…?簡単だ。私は、あの少年を守りたい。それだけだ」
すると、セツは少しだけ目を細める。
「…分かっている。お前1人すら守れなかった者に、世界を守る為の戦いに臨む資格があるのか…私には無いだろう」
そして、細めた目をまた開く。
「だがそれでも…私はあの少年に、深淵の地で誓ったのだ。『お前は私が守る』と。お前にしてやれなかった事を、あの少年にはしてやりたい。無論…それがお前に対する贖罪になるとは思ってないがな」
その時、セツの周りに風が吹いた。不思議な事にその風のざわめきの中で、セツは確かに声を聞いた。
『がんばれ』と。
「…ああ、草葉の陰から見ていてくれ。私の…最初で唯一の家族よ」
それからセツは槍を抜き、墓の手入れをしてから家を後にした。
そして、深淵では。
「ハ…ハハ…やっとだ…やっと…終わらせられる…」
額に手を当て、乾いた笑いを1人上げ続けるラビアの姿があった。
キャラクタープロフィール
名前 ラビア(神名 アルヴィース)
種族 神
所属 三神柱
好きなもの なし
嫌いなもの 世界
権能 熟語で表せる物の力を操る(言葉の権能)
世界の全てを知覚し、それらに干渉する力(知識の権能)
作者コメント
知っています、全部。
イメージした言葉は「虚無」「惨苦」「諦観」「停滞」




