第四十話 三神柱
豆知識
セツの性別はあくまでも「不明」ですが、私は女だと思って書いてます。もう一度言いますが、あくまでも性別は「不明」です。
「何と…彼が…」
ラビアとの一悶着の後、リーフェウスは拠点で先程起こった出来事について話していた。
「まだ理解が追いつかねえよ…しかもリーフェウスが神だったなんて…」
「いや、それに関しては前々から察しがついていた」
カロスがさらりと言ったその言葉に、一同は困惑する。
「察しがついていたって…手がかりなんてあったかしら?」
「あの日、君達が私にした質問だ」
「『髪が光る』って話か」
「そうだ。というか今日言おうと思っていたんだが…あれは紛れもない神の特徴なんだ。それも、かなり強力な権能を持つ神のな」
「ああ…だからアンタの髪光らないのか」
「『死』って結構強い権能だと思うんですが…」
「そんな事はどうだっていい。それよりも問題はあの男だ。状況から察するに、カロスや少年の記憶障害はあの男の仕業だぞ。他人の記憶や認識すらも書き換えられる程の存在を、どう相手するつもりだ?」
そのセツの言葉を最後に、場には沈黙が漂った。全員、まだ現実を直視出来ていないのだ。リーフェウスの正体、ラビアの裏切り。改めて見ればたった2つの出来事だが、セツとカロス以外はまだ人間の子供である。現実を直視しろという方が酷だろう。
「…とりあえず、私の家に行こう。あそこには三神柱に関わる文献があったはずだ」
カロスの提案で、一行は奈落にあるカロスの家へと向かった。屋敷に入り、一行は見慣れた部屋へと足を踏み入れる。
「ここは…」
「ああ、懐かしいな…あの日、私達が刃を交えた場所だ」
その時、セツとメイ以外の全員が声を揃えて言った。
「「「「ここアンタの部屋かよ」」」」
「なんか…悪いことしましたね。私達…カロスさんの部屋で戦ってたなんて…」
「どうりで部屋の隅に敷布団があると思ったわ…」
「自室にしては広くねえか?」
「てか汚ねぇな」
「……昔からだが…掃除はしておけ、カロス」
自分の部屋についてまあまあボロクソ言われていることなど気にも留めず、カロスは部屋の本棚を漁っている。
「…これも違う…『世界の美食』?食べに行く時間なんて無い…『宇宙について』?その宇宙が今滅びようとしているんだ…『世界オイル事典』?……えっ何だこれ」
中々苦戦しているようだ。
「……あった。これだ」
カロスが机に分厚い本を広げる。その本の中には、ラビアに…アルヴィースに関する有益な情報が記されている…はずだった。
「…なんだ…これ…」
3体の神のうち、リーフェウスとあともう1体の神に関する記述はしっかりと記されていた。だが、アルヴィースに関する記述のみ、黒いグリッジのような物で不自然に隠されていたのだ。
「…正直、彼を舐めていたな…戦いの前にこういった事は言いたくないが…今回の相手は我々の想像を遥かに超える存在だ…」
「まぁ、俺に関する情報はあるだろう?そう悲観的になるな」
リーフェウスの言葉によって一行は気を持ち直し、カロスは『アダムカドモン』と書かれた項目について簡潔に読み上げた。
「アダムカドモン…『進化』と『意志』を司る神。『能力を創り出す』という進化の権能と、『自身が強く決意した事象を実現させる』という意志の権能を持つ」
「あの便利な異能って権能だったのか…」
「まぁ、言われてみれば納得だがな」
「何であなたそんなに冷静なのよ…」
と、ここでメイがある疑問を抱く。
「あれ?でも…リーフェウスさんの能力って、自分がはっきりとイメージできないと能力の創造は出来ないんじゃ…それについての記述はありますか?」
「恐らくそれは…リーフェウス殿の2つの権能の内容を混同させたのだろう。そのあまりにも強力な能力に、リーフェウス殿が気づかないようにな」
「やりますね…ラビアさん…」
そんな会話の裏で、セツはある矛盾点について考えていた。
(何故だ…自分についての情報を隠すのは理解できるが…それなら何故少年についての情報は隠さない?そもそも、何故私達のアルヴィースに関する記憶を消さないんだ?あの男程の人間が、その程度を予想出来ない筈もない…もしや…)
「どうした?セツ」
「…いや、何でもない」
(伝えるのはやめておこう。戦いの前に不要な雑念を抱かせるだけだ)
「というか、『後継体』に関する記述は無いんだな」
リーフェウスがそう言った時、カロスが不思議そうに尋ねる。
「後継体…?何を言っている?」
「え?三神柱が死んだ時に権能が受け継がれるってやつだが…」
「…?三神柱の権能は、死亡した時に最も関わりの深かった三神柱に受け継がれる、と書いてあるぞ?」
「そうか…」
(これもラビアが俺の記憶をいじった影響か?だが…なんだってこんな無意味そうな改変を…)
「…現状出来る事は、これくらいだろう。あとは各自、約束の日を待て」
「分かった…が、1つ聞いてもいいか?」
「聞こう」
「何でアンタらは…当たり前みたいに手伝ってくれるんだ?少し前まで、敵同士だったというのに」
その問いを受けたセツとカロスは、奇しくも似たような表情をした。それは、まるで未熟な後輩を見るかのような微笑みだった。
「私を正道に引き戻してくれたのは君だ。リーフェウス殿。理由などそれで十分だろう?」
「お前が私に教えたんだ。『守りたいものを守れ』とな。私は、お前のような人間を守りたい。それだけだ」
その答えを聞いて、リーフェウスは静かな笑みを返す。
「…そうか、ありがとう」
こうして一行は現世に戻り、約束の日を待つことにした。
一方、深淵では…
「…結局最後まで、メイは『あの事』を言わなかったか。スケイドルで話したあの話…正直、リーフェウスか灰蘭あたりに話すと思ってたんだけどな。人ってのは分からないもんだね」
1人呟いていたラビアは、突然こちらを向いてこう言った。
「ねぇ、君達はどう思う?」
キャラクタープロフィール(もう番号分かんねえや)
名前 リーフェウス(神名 アダムカドモン)
種族 神
所属 三神柱 主人公陣営
好きなもの 本 魚 金
嫌いなもの 花粉
権能 ①能力の創造(進化の権能)
②自身が強く決意した事象を実現させる(意志の権能)
作者コメント
正体発覚記念でプロフィール再掲。元ネタはどっかの言葉(多分キリストとかその辺)で「原初の人間」「神人間」という意味の「アダムカドモン」。イメージした言葉は「希望」「決意」「前進」「人間」




